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国内で唯一。MIM・金属3Dプリンター用のアモルファス合金粉末材料を発表ーへレウス株式会社

ドイツに本社を置く材料メーカー、へレウス株式会社は、2022年5月18日にアモルファス合金の新製品発表会を行った。当日は、招待された15名ほどの記者が参加した。シェアラボ編集部でも記者が取材に伺ったので内容を報告したい。

 【会社紹介を行うへレウス社、山内社長】

発表会では、3DプリンターやMIM(金属射出成型)に用いることができるアモルファス構造を持ったジルコニウム系合金の新素材「ZR01~03」に関する発表が行われた。アモルファス合金を 3DプリンターとMIMの両方に対応可能な金属粉末材料として提供しているのは現状、へレウスが国内唯一のプレイヤーだ。製品としての具体的な発売日などは未定だが、今後は特定顧客との用途開発などを通じて提供を行なっていくと思われる。

高機能材料を扱うへレウス株式会社

へレウス株式会社はドイツに本社を置く材料・工業用特殊光源メーカーで、日本においては30年以上積極的に活動している。ヘレウス本社では金属粉末材料や導電性高分子素材などの生産を行う。2020 年度にフォーチュングローバル 500 に選出されているヘレウスは総売上高 315 億ユーロ (約 3 兆 8383 億円*)を計上、ドイツの他に40か国100以上の活動拠点を持つ世界規模の会社だ。

アモルファス合金とは

アモルファス合金に関して、耳慣れない方も多いと思う。発表会では、伊東シニアマネージャーからアモルファス合金についての説明があった。

【説明を行うへレウス社、伊東シニアマネージャー】

アモルファス合金は、複数種類の金属を溶かし合わせた後、急速に冷却することで分子構造をバラバラに組み換えアモルファス構造化させることで製造できる合金のことを指す。アモルファス構造を持った合金は通常の結晶構造を保った合金とくらべて均一な変形性、弾性、高硬度などの機械的特性を備え、生体適合性や低収縮性などの性質を示すという。今回へレウスが発表したZR01~03の三種類の銘柄はそれぞれZr(ジルコニウム)を含む合金だという。

【アモルファス合金の歴史等について説明を行う兵庫県立大学、山﨑名誉教授】

続いて、兵庫県立大学の山﨑名誉教授がアモルファス合金の歴史に関して解説が行われた。アモルファス合金は1960年にDuwez博士により開発され、1970年代までは、貴金属と非金属を含むものと考えられていた。1990年代になると金属元素のみで構成されるバルク形状金属ガラスの生成に成功するなどの成果を収め、2000年代には科研費を用いた特定領域研究として国家プロジェクトでの研究対象として扱われるようになった、とのことだった。分子構造を均質化したアモルファス構造を合金に持たせることで、機能性を向上させる取り組みが着実に進化してきたことがうかがえる。

アモルファス合金の具体的用途や市場性は?

優れた機械的安定性や生体適合性を持つアモルファス合金材料だが、へレウス社では具体的な用途として、日本・アジア圏のロボティクスやセンサーの市場をターゲットに置いている。またすでに医療分野で3Dプリンター活用がすすむヨーロッパ圏では、インプラントや人工骨などのメディカルマーケットが伸びていくだろうとの見通しを示した。会場ではセンサー用部品、ヘッドフォンなどのウェアラブルデバイスへの活用などに関して参考展示が行われていた。

アモルファス合金の密度は6.65g/cm3で、3Dプリント時の粒径は15μm-45μmの範囲の粒径が使用されるとのこと。 同社の伊東シニアマネージャーによると「アモルファス合金材料としてはZR01~03の3種類の種類があるが、すべて利用できるのは3Dプリンターのみ。ZR02、ZR03のみMIMでも用いることができる。」ということで、金属3Dプリンターによるアモルファス合金への期待が大きいことがわかる。

ドイツ本国で材料粉末は製造される。現在はアモルファス合金を年間34トンを製造し、その多くはヨーロッパ圏での需要に対応したものだという。またMIMでの造形や金属3Dプリンターでの造形は、国内で受託し、ドイツ本国で製造する体制となっている。へレウス社では、アモルファス合金の粉末材料販売、MIMや3Dプリンターによる造形サービスを国内で展開していく考えだ。

3Dプリンターは、TruPrint2000および TruPrint1000、そしてTruPrint3000を追加し、稼働しています。射出成型機は自社開発の装置を使用しております。また必要に応じて、設備の増設および拡張も行います。そのためのスペースはすでに確保しております。」(プレス担当有馬氏)とのことだ。 現状は製造装置の造形領域の20cm角サイズの造形を行うが、将来的には自動車部品などにも用いることができる1m角サイズの造形にも対応していきたい考え。

ロシアのウクライナ侵攻の影響を懸念する会場からの質問もあったが、Zrは中国・オーストラリアから調達しているので調達面での懸念はないとの回答があった。

アモルファス合金の高機能センサーや医療用材料への利用に期待

アモルファス合金の市場規模は未知数だが、医療分野やロボティクスのような高機能素材による活用が見こまれる分野は今後も成長が見込まれる。山内社長は「これまで導電性高分子分野を日本が世界に先駆けて活用してきたように、アモルファス合金でも日本が世界を引っ張っていきたい」と意気込みを語っている。3Dプリンターならではの複雑形状の造形や、小ロット生産による生産性向上で新しい価値を生み出せるか。今後の日本勢の活躍に大きな期待がかかる。

増田 健司
ShareLab編集部

メーカーの研究開発職として新素材開発に従事後、特許庁で特許出願の審査業務を10年以上経験。弁理士として独立後は、企業の知財戦略をサポートする傍ら、3Dプリンターをはじめとした先端技術に関する情報発信を行っている。趣味は深夜のショッピングチャンネル鑑賞。

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