3MF Consortium、ボリュメトリックおよびインプリシット拡張をリリース
3MF Consortiumは、ボリュメトリックおよびインプリシット拡張を発表した。これは従来のメッシュベースのデータ形式に限られていた3Dプリント業界に、より高精度で効率的なデータ処理の可能性を提供する。医療、エンジニアリング、シミュレーションなどの高度な分野で、より複雑で精密なデータ表現が可能になる。(上部画像は3MF Consortiumのプレスリリースより。出典:3MF Consortium)
目次
3MF Consortiumとは
3MF Consortiumは、3Dプリント業界向けのオープン規格「3MF(3D Manufacturing Format)」を推進する国際的な団体である。従来のSTL形式などのデータフォーマットが持つ制約を克服し、より効率的で情報量の多いファイル形式を提供することを目指していて、Microsoft、Autodesk、HP、Siemensなど、3Dプリンティングやソフトウェア開発をリードする主要企業が参加している。3Dプリントデータの互換性を向上させるだけでなく、メッシュの品質や材料情報、色やテクスチャなどの属性を含む拡張機能もサポートしており、業界全体の標準化を図っている。
ボリュメトリックおよびインプリシット拡張の概要
ボリュメトリックおよびインプリシット拡張は、従来のメッシュベースの3Dモデルに代わる新しいデータ表現手法を提供する。ボリュメトリックは、物体の内部構造や密度などを詳細に表現でき、医療用のCTスキャンやシミュレーション分野で重要な役割を果たす。従来の表面を表すだけのメッシュデータでは表現しきれない複雑な形状や内部の特性を正確に記述できる。
インプリシット拡張は数式や関数を用いて形状を定義するもので、より効率的なデータ処理を実現し、コンピュータリソースの節約にも寄与する。これによって、より大規模で複雑なデータセットの扱いが容易になる。
新拡張がもたらす業界への影響
ボリュメトリックおよびインプリシットを使うと、複雑構造や、多種の材質、色情報を物体内部に設計することができ(例:生物の骨の内部海綿構造)、かつnTopなど設計ソフトウエアも既に存在するが、これまでは、STLなどポリゴンまたはスライスデータセットに変換出力し、3Dプリンターに送らなければならず、ファイル容量が膨大になり、計算処理できない、もしくは時間がかかる課題があった。よって3MFのボリュメトリックおよびインプリシット拡張の導入は、3Dプリンティング業界に大きな変革をもたらす。まず、前述の変換出力が不要になり、データ処理の効率が大幅に向上し、大規模かつ複雑な設計が短時間で処理できるようになるため、プロトタイピングや製品開発のスピードが加速する。また、インプリシットデータの利用により、より柔軟な設計が可能となり、製造プロセスの最適化が期待される。さらに、ボリュメトリックデータを用いることで、従来の表面モデルでは不可能だった内部構造の詳細な設計や評価が可能になり、医療やエンジニアリング分野での応用が拡大するだろう。
医療、エンジニアリング分野での応用例
医療分野では、ボリュメトリックデータを活用してCTスキャンやMRIのデータをそのまま3Dプリントに反映させることが可能となり、手術計画や人工臓器の設計、さらには患者ごとの精密な医療デバイスの開発が飛躍的に進むことが期待されている。また、インプリシットデータによる設計手法は、材料の最適化や内部構造の強度設計など、エンジニアリング分野においても活躍する。航空宇宙や自動車産業では、軽量で高強度なパーツの製造が可能になり、設計の自由度が増すことで、従来の製造方法では実現できなかった革新的な構造が実現するだろう。
今後の展望と課題
3MF Consortiumが提供するボリュメトリックおよびインプリシット拡張は、3Dプリンティング業界に多大なメリットをもたらす一方で、いくつかの課題も存在する。まず、これらの新技術を効果的に活用するためには、ソフトウェアおよびハードウェアの対応が必要となる。また、ボリュメトリックデータやインプリシットデータの扱いには高度な技術が要求されるため、技術者の教育やトレーニングも重要な課題である。今後、これらの技術が業界標準として広く採用されるためには、技術の普及と共に、各業界がこの新しい拡張に対応するためのインフラ整備が不可欠である。これが進展すれば、製造業全体での効率化や新たな製造プロセスの確立が期待できるだろう。
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