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リスク低減、カスタマイズを可能としたバイオ3Dプリンターの乳房再建。実用化はいつ?

乳房再建、という言葉をご存じだろうか。

乳がんの切除などにより変形、あるいは失われた乳房をできる限り取り戻すための手術を乳房再建術という。乳房再建を行うことにより乳房の喪失感が軽減し、下着着用時の補正パットが不要になるなどの日常生活の不都合が減少する。しかし、メリットだけではなくリスクは存在する。そんな中、現在注目される「インプラント治療」の進化をバイオ3Dプリンターが促進している。

今回紹介するHealshape(ヒールシェイプ)は、乳がんなどで乳房を切除した女性のための乳房インプラント技術の実現のために680万ドルの資金を調達したことを発表。患者自身から採取した細胞を用いたバイオ3Dプリンティングによって、拒絶反応のリスクが少なく、オンデマンドなインプラントの実現を目指している。

開発背景|乳がんによる乳房の切除とインプラント

世界保健機関(WHO)によれば、世界中で乳がんと診断される女性は毎年約200万人おり、女性に最も多く見られるがんだ。このうちの約40%の人が、患部の乳房組織の一部または全部を切除する乳房切除手術を受けている。

この手術では約90%の人が手術を受けてから 5年間生存している。よって、乳房が欠損した状態で日常生活を営む女性は数多く存在し、乳房切除手術で失われた組織を補うために乳房再建治療を望む女性は多い

こうした需要を叶えるのが、乳房のインプラント治療だ。ただし、他の人間や動物の軟組織を利用したインプラント治療においては、拒絶反応のリスクが常に存在する。インプラントした組織と患者の体に拒絶反応が生じた場合、患部の治癒には長い時間が必要だ。

患者本人の体組織を利用しカスタマイズ化を可能としたバイオ3Dプリンティング治療

バイオ3Dプリンティングにより形成されたインプラント用組織。乳房の形をした造形ができている
バイオ3Dプリンティングにより形成されたインプラント用組織(出典:Healshape)

Healshapeは、2020年1月にフランスのリヨンで設立された再生医療バイオテクノロジーのスタートアップ企業だ。

乳房を再生するインプラント治療に優位性を持つ同社は、数多くのテックイベントで表彰され、フランスの公的資金や補助金からも既に100万ドル以上の資金を集めている。シリーズAラウンド(つまりビジネスモデルの開発・計画段階)において、これまで調達した資金は680万ドルだ。

Healshapeは、3Dバイオプリンティングで形成した組織をインプラント手術に活用する。バイオ3Dプリンティングで用いられるインクは、ハイドロゲルと、患者自身の体組織から培養した細胞の配合物だ。患者自身の細胞を使っているため、生体との適合性が高く拒絶反応が生じにくい。

インプラントされた組織は、6~9か月かけて患者の体組織と一体化し、手術の跡を残さず、乳房を再生することが可能となる。

バイオ3Dプリンティングを用いることの利点は、拒絶反応の少なさだけではない。従来では難しかった微調整(患者一人一人の体の形に合わせて、組織の設計・製造を行う)が可能となった。手術後に不自然な形状の乳房に悩まされる可能性も大きく低減したのだ。

バイオ3Dプリンターによる乳房再建、実用化は?

残念ながら現在、乳房のインプラント技術は現在臨床試験の前段階にあり、臨床試験は今後2年以内に開始される予定だ。実用化にはまだ道のりが長い。

しかし、実用化すれば乳がんで乳房を切除した女性だけではなく、形状や大きさにコンプレックスを抱く全ての女性が、自分に自信を持つことを手助けする。実現に向けて着実に歩を進めている研究の今後の進捗に期待したい。

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