General Latticeがアメリカ陸軍と3Dプリント技術による戦闘用ヘルメット改良契約を締結
米イリノイ州シカゴに拠点を置く3Dデザインソフトウェア企業 General Lattice社が、戦闘用ヘルメットの衝撃吸収を改善する契約をアメリカ陸軍と結んだ。ヘルメットの改良には同社が持つ3Dプリント技術と高度な格子形状の作成技術が用いられる。現在、イリノイ州シカゴにあるGeneral Lattice社の施設で研究開発プロジェクトが進行中だ。
米軍戦闘用ヘルメットの改良
General Lattice社とアメリカ陸軍との契約は、アメリカ陸軍の兵士が使用する衝撃吸収戦闘用ヘルメットを改善し、DEVCOM兵士センター(DEVCOM-SC)の主要な性能要件を正確に満たすことを目的としている。
現在ヘルメットの素材として採用されている発泡素材以上のものを開発するため、General Lattice社は、3Dプリントと高度な格子技術を使用した検証に着手。現場でのリアルなデータに基づいて衝撃を吸収する格子材料を設計・生成するための予測モデリング・ツールセットを開発中とのこと。実際の環境でテストしながら性能を確認することで、野外にいる兵士の保護能力や生存性を高めていくとしている。
同社は、戦闘用ヘルメットのサスペンションシステムで使用するために、衝撃吸収性を改善できるさまざまな材料とハードウェアの組み合わせを試してきた。そして作成された格子サンプルは、General Lattice社の予測モデリング・ツールセットの精度を検証するためにテストされることになっている。
3Dプリントされた格子が衝撃吸収に活用された例
3Dプリントされた格子構造は、特に衝撃吸収の利点のために多くの場面で活用されてきた。
2014年、UCLAの研究者は、衝撃を吸収する3D印刷されたマイクロ格子素材を作成することで、脳震盪、認知症、および繰り返しの頭部外傷から生じるその他の状態からアメリカンフットボールプレーヤーを保護しようとした。この技術はスポーツ界の他の場所でも利用されており、米大手3DプリンターメーカーのCarbon社とスポーツ用品メーカーのCCM Hockey 3D社は、デジタル印刷された格子構造を用いた世界初のNHL認定ホッケーヘルメットライナーを作成している。
防衛部門もこの技術に関心を示している。マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア工科大学、チューリッヒ工科大学とアメリカ陸軍研究所で構成されるソルジャーナノテクノロジー研究所では、防弾チョッキや防刃ベストに使用されるケブラーや鋼よりも、効果の高い素材を作るためにナノスケールでの3Dプリント技術を研究してきた。小さなカーボン格子で作られた素材は、将来的に軍隊が着用する防弾チョッキや装備に使用される可能性がある。
3Dプリンターで作られるヘルメット
3DプリンターメーカーのCarbon社がどのような3Dプリンターを用いてアメリカンフットボール用のヘルメットを作製しているのかについては、ShareLab NEWSでも以前取り上げている。Carbon社製3Dプリンター「M2プリンター」の特徴の詳細や、購入後のサポートを含んだサブスクリプションサービス、その他の導入事例などについて解説しているのでぜひ参照してほしい。
Carbon社の最新事例「JINSはNeuron4Dをどのように産み出したのか?」―JSR主催ウェビナーレポート
General Lattice社の企業情報
2018年設立。アメリカイリノイ州シカゴに本社を構える3Dデザインソフトウェア企業。計算設計、高度な格子材料、3Dプリントの組み合わせを利用して、従来のカスタマイズ手法に通常伴う追加のコストや無駄なしに、特定の生体認証特性で微調整できるパーソナライズされた製品を設計および製造している。
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