WASPとホンダが3Dプリントされる持続可能なオートバイモデルのパートナー契約を締結
イタリアの3DプリンターメーカーのWASP社が自動車メーカー・本田技研工業(以下、ホンダ)の海外事業部ホンダR&Dヨーロッパ社とのコラボレーション結果を発表した。オートバイの業界設計プロセスに大きな変革をもたらすとみられている。
粘土を素材とする3Dプリンターを活用
2021年4月、ホンダR&Dヨーロッパ社はWASP社と協力して再利用可能な粘土を素材とするオートバイの技術プロセスを開発した。このプロジェクトにはWASP社の3Dプリンター「Delta WASP 40100」が採用されている。
プロジェクトのコンセプトは、ホンダのオートバイをデザインするインダストリアルデザイナーに「前例のない製造の自由」を生み出す革新的なツールを提供すること。
ホンダをはじめとするオートバイメーカーは、コンセプトモデルやプロトタイプを作製する際に、粘土を用いて車体デザインをかたどっていく。これは今でも自動車や製品設計業界において一般的に行われている手法だ。立体模型を粘土で作成するのは、設計者のビジョンを具体的に現実に変換するために重要とされている。
Delta WASP 40100を用いることでこれまで手作業で作製されてきた粘土モデルを、3Dプリンター内に取り込んだデータから直接粘土で作成できるようになる。
オートバイのプロトタイプ部品を3Dプリントした後、必要であれば簡単に手作業で仕上げて再加工も可能だ。
ホンダとWASPのコラボレーションの成果
2017年からWASP社の研究者は、3Dプリンターの素材に工業用粘土を使用するにあたって、さまざまな方法の押し出し実験を行い、モデリングの世界に革新的なアプローチを生んできた。今回のホンダとのコラボレーションにより継続的にノウハウが交換されたおかげで、粘土の押し出しはさらに大幅に改善され、3Dモデルの作成にかかる時間が最適化された。このことは大きなメリットとなる。
WASP社の共同創設者兼プロダクトマネージャーであるNicola Schiavarelli氏は、今回のコラボレーションを「添加剤業界の新しいコンセプト」と表現した。
工業用粘土3Dプリンターのために開発されたLiquid Deposition Modeling(LDM)テクノロジーは「Delta WASP 2040」や大型の「Delta WASP 4060」、さらに大型の「Delta WASP 40100」に採用されている。Delta WASP 40100におけるLDMは、高密度の流体加熱材料を堆積するように拡張され、タンク、接続パイプ、および押出機で構成されるシステム全体を一定の温度に保てるように強化されている。
持続可能な3Dプリンターを製造するWASP社
WASP社はこれまで、廃棄物ゼロの構造を生み出す生分解性でリサイクル可能な製品である粘土など、地元で調達された材料に依存する持続可能な3Dプリンターの製造にこだわってきた。
生分解性とは、木材や紙と同様に微生物の働きにより自然環境中で分子レベルまで分解されることで、最終的には二酸化炭素と水になる性質を指す。
WASP社とホンダのコラボレーションにおいてもその姿勢は同様だ。プロセス全体で使用された工業用粘土について、環境と経済の持続可能性という2つの視点において、コストや作業を最小限に抑えながら、再利用および再印刷できることが確認されている。
今回開発されたテクノロジーはオートバイのモデル設計者の作業の質を向上させるのに役立つツールとなる。Nicola Schiavarelli氏が説明するように「人と機械のコラボレーション」と「循環的で協調的な3Dプリントの新しい哲学」が労働力に影響を与えることなく、コスト削減や製造時間の短縮などのメリットをもたらすと予想される。
WASP社はオートバイの設計モデリングにとどまらず、彫刻やデザインの世界など他分野においても自社の技術需要があると予測している。
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