3Dプリンティングを用いた独自の色彩表現「構造色」を生み出した積彩が初の個展開催
2022年6月25日(土)~6月30日(木)、YUGEN Galleryにて、積彩が個展「PLAYFUL COLORS」を開催する。(写真は蕾-tall-、鼓草、鬼灯 出典:YUGEN Gallery HP)
3Dプリンティングを用いた独自の色彩表現「構造色」とは
積彩は、3Dプリンティングを用いた色彩表現を追求するデザインスタジオだ。
3Dプリンティングは、一般に「形」をデザインするツールとして用いられる。しかし、近年では「色彩」においても、3Dプリントを利用した新たな表現手法が登場した。
そのうちの1つは「構造色」を利用したものだ。
光の波長と同程度のサイズの隙間(300~700nm)を規則的に配置すると、特定の波長の光を強く反射、または透過する板を作ることができる。構造色を用いれば顔料などの着色剤を用いず色彩表現が可能で、屋外などの腐食に晒される環境に設置しても退色しにくい。構造色による色彩表現には大変微細な加工が必要となり、技術的なハードルも高いことが課題だ。
また、別の方法として、物体の表面にかまぼこ状のレンズを多数並べると、レンズが光を曲げ、見る角度によって違った色を映し出すことができる。これが積彩も利用している「レンチキュラー効果」だ。
静止物体における色彩が移ろう様子は、まるでCGやアニメーションを見ているかのよう。デジタルデータを正確かつ精密に配置する技術として、3Dプリンティングは最適なツールだ。積彩は、この効果をアート作品として昇華することに取り組んでいる。
積彩の目指すモノづくり
積彩は、慶応義塾大学の「3Dプリントによる特殊色彩表現の研究」に端を発する。2018年、研究グループの学生が卒業を機に前身となる「Color Fab」を立ち上げた。2021年からは「積彩」として活動している。
目指すのは、未だ誰も見たことのないモノの創出、そしてモノの在り方を模索することだ。
彼らのデザイン作品には「幽玄」という表現がふさわしい。移ろいゆく色彩は、不変のイデアを追求する西洋的価値観よりも、「諸行無常」や「流転」に表れる仏教的世界観を想起させる。
積彩が見せる世界は、資源や経済の限界に直面し、持続可能な世界を模索する現代社会で生きる私たちの心を揺さぶるものだ。
当サイトでも、過去、積彩が携わった大型アート作品について扱っている。併せてご参照いただきたい。
3メートル立方のプラスチック樹脂製ベンチを製作した超大型3Dプリンターの実現
個展「PLAYFUL COLORS」
2022年6月25日(土)~6月30日(木) YUGEN Gallery(東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル3F)にて、積彩初の個展「PLAYFUL COLORS」が開催される。
これまでの探求の成果として生み出された、複雑に変化する色彩表現。デジタルデータとマテリアルが織りなし、形状と色彩が融合した幽玄な視覚現象をその目で見てほしい。
関連情報
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