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3メートル立方のプラスチック樹脂製ベンチを製作した超大型3Dプリンターの実現

3Dプリンターの開発・製造・販売を手がけるエス.ラボ株式会社(以下、エス.ラボ)は2021年7月9日、超大型3Dプリンター、開発名「茶室」が完成したことを発表した。最大造形サイズが3000×3000×3000mmと超大型造形が可能で、MEX(材料押出積層)方式の一種であるペレット式の3Dプリンターである。また、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ(以下、SFC研究所)、積彩と共同で、茶室と材料にリサイクルプラスチックを用いた大型プラスチック製ベンチの造形にも成功した。
(茶室にてベンチを製造された写真 / 出典:エス.ラボ)

今回は超大型造形を可能にした超大型3Dプリンター「茶室」とその事例について紹介する。

世界最大級の造形を実現した超大型3Dプリンター「茶室」とは

エス.ラボはプラスチックペレットを原料とする、大型かつ短時間で造形が可能なペレット式3Dプリンターを2013年から開発し、2016年にはPCT国際出願し日本国内特許を取得。現在はエス.ラボ社独自開発の「Granules Extrusion Modeling テクノロジー」によって生み出された国産3Dプリンター「GEMシリーズ」を展開している。

吐出のスピード不足や材料硬度への制約といったMEX方式の課題を解消するのが このGranules Extrusion Modeling テクノロジーだ。3Dプリンターに搭載可能な超小型押出成型機を開発することで、樹脂ペレットからの直接造形が可能となり、その結果として材料の硬度への幅広い対応と自由度を高くすることに成功した。

そして今回、エス.ラボはプラスチック樹脂を用いた材料押出方式の3Dプリンターにおいて、最大造形サイズが2立方メートルを超える装置開発・造形の世界最大級の事例(エス.ラボ調べ)を発表した。

ベンチが造形される様子(出典:積彩)

共同製作された大型プラスチック製ベンチの造形

今回の共同製作において、使用済みプラスチックを再利用したベンチを造形。高さ2.8m・幅1.2m・奥行き1.1mになる大型造形をおよそ24時間で完成させた。SFC研究所は材料検証と造形試作、積彩はベンチの3Dモデル設計と配色設計をそれぞれ担当。造形後は慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス内に仮設置し、試験運用の結果、大人4人程度が問題なく座れる強度を確認できている。

エス.ラボ、SFC研究所、積彩で共同製作した大型プラスチック製ベンチ ※出典:エス.ラボ [クリックで拡大]
慶應義塾大学にて試験運用の様子(出典:エス.ラボ)

ベンチは螺旋形状をしており、座面が斜めに区切られている独特なデザインは、利用者同士が適度な距離感で座ることができる設計となっている。また、小さな子供が遊具のようにして遊ぶことも可能な多様性がある。特徴的なまだら模様のデザインは、造形時に意図的に配色をコントロールする積彩独自の技術がほどこされている。今後は、大型造形物の試作や形状確認の他、この大型ベンチのような最終製品の造形に茶室を活用していく予定とのこと。

ここで、各社の紹介と開発についてコメントを紹介する。

エス.ラボ株式会社

国産3Dプリンター・工作機・ロボットの開発・製造を行うエス.ラボは2005年に京都に設立。

独自技術が搭載された「GEM シリーズ」は、切替式のデュアルヘッドモデルで2種類の材料を使用することが可能な「GEM 550D」や、12機のペレット式ヘッドと3連移動式テーブルを搭載し、量産に適した大型・特殊3Dプリンター「GEM 3D PLANT」を販売。その他、フィラメント式 3Dプリンター「S3DP444」や「S3DP666」、コップ一杯から材料の押出が可能な「小型・卓上押出機」など多種多様で画期的な技術力を提供している。

今回のベンチ造形は循環型社会の目指す形として、外観でも材料面でもインパクトあるものができました。このような3Dプリンターでの製造物が広く普及するためには、出来上がった物の価値そのものが市場で評価されなければならず、特大サイズと洗練されたデザイン、そしてリサイクル材料でできた意味は大きいです。リサイクルプラスチックの有効利用は社会的なテーマなので、今回のような形でアウトプットを続けていきたいです。

3Dプリンターというツールが身近になってきた最近でも、エス.ラボは3Dプリンターが夢のようなものづくりを見せてくれることを期待して日々開発をしており、家具・車・航空・船舶・住宅など、さまざまな分野で有効活用できる3Dプリンターをユーザー様とともに考え、形にしていきたいです。

エス.ラボ 代表 柚山 精一氏のコメント

慶應義塾大学 SFC研究所 ソーシャル・ファブリケーション・ラボ

3Dプリンターをはじめとするデジタル・ファブリケーションとインターネットを組み合わせて、さまざまな「問題発見・問題解決」をはかるための”ソーシャル・ファブリケーション”にまつわる諸技術と社会制度を研究することを目的とした研究機関。代表の田中浩也氏はプロジェクトマネジャー兼ディレクターとして東京オリンピック2020表彰台製作プロジェクトに全面協力し、3Dプリンターで必要部品を製作などの実績がある。その田中氏は今回の開発について、以下のようにコメントしている。

ウィズコロナからアフターコロナに社会が移行していくなか、オフィス、キャンパス、公園、コワーキングスペースなどで、家族や友人同士の、新しい過ごし方・働き方を生み出すための、大型什器・家具が、新たに必要とされてくる場面があると思います。リサイクルしたプラスチック材料でも無駄なく使え、ゴミが少ない熱溶解積層方式の3Dプリンターは、場所を彩る魅力的な立体物の制作に最適です。

今回プロトタイプとして制作したベンチを実際にご覧になりたい方は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスまでお問い合わせください。

SFC研究所 田中浩也教授のコメント

積彩

2018年、慶應義塾大学田中浩也研究室の研究グループとして積彩の前身となる「Color Fab」が発足し、2021年に3Dプリント技術を専門とするデザインスタジオとして積彩を設立。積彩は3Dプリンターを用いた新しい色の作り方を追求しており、造形と着色の工程が統一され負荷なく色の価値を残すことで、手で塗り分けられない繊細な色表現が可能になる。商品化を前提とした「富山デザインコンペ2020」でグランプリを受賞するなど注目を集めている。

製造工程動画(出典:積彩)

積彩の代表を務める大日方伸氏は今回の開発作品について、以下のようにコメントしている。

シンボリックな螺旋形状のベンチは座面をななめに区切り、利用者同士が適度な距離感で座れることを目的としていましたが、実際に設置してみると小さな女の子がまるで遊具のように下をくぐったり寝転んだりと、螺旋を自由に使って遊んでいたことが印象的でした。

今回私たちがデザインしたのはベンチだったのか。遊具だったのか。

超大型の3Dプリンティングでは規格外の造形物を作り出すことが可能ですが、それはこれまでのベンチ/遊具のような境界を取り払い、もっと自由な振る舞いをもつデザインへの想像力となっていくでしょう。 デザイナーとして、このように想像力の源泉となる装置に出会えることは喜びです。これからもこの超大型3Dプリンターを活用し、ワクワクするようなものを作っていければと思います。

積彩 大日方伸氏からのコメント
遊具として使われている様子
遊具で遊ぶ様子(出典:エス.ラボ)

エス.ラボ調べによると、高さ方向に3mの造形範囲を持つプリンター、かつ2.8mの造形は世界初であり、今回の装置開発およびベンチの造形は世界最大級の事例となる。3Dプリンターの特徴を活かし、リサイクル素材の使用、一見ベンチには思えない独創的なデザインで製造された今回の事例は、今後3Dプリンター造形が市場で認知されていくために大きな意味をもつだろう。

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シェアラボ編集部 | + posts

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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