月面探査車用の車輪のプロトタイプを3Dプリンターで作製
アメリカ合衆国エネルギー省管轄のORNL(オークリッジ国立研究所)が、NASAと協力して月面探査車の車輪を3Dプリントした。車輪は、2024年に月の南極に氷やその他の潜在的資源をマッピングするために送り込む予定の移動ロボット「VIPER」の既存の軽量ホイールをモデルにNASAが設計した。NASAはVIPERのホイールと比較するため、3Dプリンター製の車輪の性能テストを行う予定だ。(上部画像はNASAの設計に基づいて作製された月探査車の車輪。出典:オークリッジ国立研究)
特殊な3Dプリンターで車輪を造形
月面探査車用の車輪プロトタイプは、特殊な3Dプリンターで造形された。この3Dプリンターは人が入れるほどの大きさで、2つの協調したレーザーと回転する造形プレートを使用して、金属粉末を選択的に溶かして設計された形状にする。
一般的な金属3Dプリンターは固定プレートの上に粉末の層をかき集め、その後、レーザーが選択的に層を溶かし、プレートがわずかに下がるというプロセスを繰り返して造形する。そのように段階的に動作する一方で、今回使用された特殊な金属3Dプリンターは、造形工程を同時かつ連続的に行いながら大きな物体を印刷できるという点に特徴がある。
NASAの試験で、3Dプリントされたプロトタイプが従来の車輪と同程度に頑丈であることが証明されれば、将来の月面探査車には、ORNLがわずか40時間で作製した3Dプリント製の車輪を使用できるようになる。
さらには、3Dプリンターの特性を活かしてホイールの剛性や機能を高めるためのデザインや機構を盛り込むことも可能だ。3Dプリンターなら、従来の製法では不可能だった精密なデザインを実現しながら、製作にかかる時間と人手を少なくできる。
現時点での課題は、専用プリンターが特定の材料でしか造形できない点だ。ニッケルベースの合金で3Dプリントされた車輪は、同じような厚さでプリントされたアルミニウム製のVIPERの車輪よりも50%重い。
3Dプリンターで作られた製品が月面や宇宙空間で使用されることは、将来的に現地で3Dプリンターによる修理部品製造が行われることにもつながる。
航空宇宙業界の関連記事
今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。