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MITの研究チームが衛星用プラズマセンサの作製に3Dプリンターを活用

気象衛星

MIT研究チームは、セラミックス材料を加工できる3Dプリンターを活用して気候観測衛星用プラズマセンサを作製し、結果を『Additive Manufacturing』誌に掲載した。

セラミックス材料を3Dプリンターで造形しプラズマセンサに活用

プラズマセンサのイメージ(出典:MIT)

プラズマセンサ、別名、逆電位アナライザーは、空間中のイオン(電荷を持つ原子または分子)量を測定するセンサだ。

ウイルスを遮断するマスクのように、メッシュ状のフィルターを複数持ち、このフィルターに電界を発生させることで、一定以下のエネルギーのイオンを弾く。また、電界の大きさを変えることで、エネルギー分解が可能だ。

プラズマセンサは、1959年、初めて宇宙ミッションに用いられた。現在では、軌道上の大気成分を調べることで、天気予報、気候観測などに活用されている。

高い精度が求められるプラズマセンサにおいて、製造プロセス中の異物混入は致命的だ。プラズマセンサは、長らく、空間内微粒子が少ない環境(クリーンルーム)で製造されてきた。

しかし、クリーンルーム内で、従来の加工プロセスを経る場合、プラズマセンサに用いられる材料と構造に関する選択肢はほとんどない。

今回、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが示した成果は、衛星用プラズマセンサ製造プロセスにおける自由度を大幅に広げた。彼らは、3Dプリンターを活用することで、新たな材料を活用できることを示し、低コストかつ迅速に、プラズマセンサを作製してみせた。

研究チームの報告について詳しくは、以下リンクに掲載されている。

“Compact retarding potential analyzers enabled by glass-ceramic vat polymerization for CubeSat and laboratory plasma diagnostics”, Javier Izquierdo-Reyes, Zoey Bigelow, Nicholas K. Lubinsky, Luis Fernando Velásquez-García, Additive Manufacturing 58 (2022) 103034.

付加製造がもたらす材料選択の幅がブレイクスルーをもたらす

衛星用プラズマセンサーで重要となるのは、測定素子を収めるケース(ハウジング)だ。軌道上の急激な温度変化に耐えることができ、十分な強度と、電気的絶縁性を有する必要がある。

研究チームは「Vitrolite」と呼ばれるセラミックス材料に着目した。

どれほど耐熱性の良いプラスチック材料であっても400度を超えれば溶融する。対して、Vitroliteは800度でも形状を維持することが可能だ。

こうした高耐熱材料は概して熱による加工が困難だが、研究チームは光重合を活用することによって、その問題をクリアしている。熱加工であれば、粗く、密度が小さくなってしまうVitroliteだが、光重合によって高密度なハウジングが形成できた。

多様な製造プロセスが利用できる3Dプリンターならではの成果と言えるだろう。

試行コストの削減とイノベーション

研究チームの責任者であるLuis Fernando Velásquez-Garcíaは、プラズマセンサの製作において、3Dプリンターが大変有効な製造プロセスであると述べた。

「アディティブマニュファクチャリングは、将来の宇宙用ハードウェアに大きな変化をもたらします。3Dプリントにより、性能が低下することは仕方がないと考えている人がいます。しかし、私たちは、それが部分的に間違いであることを示しました。」

今回の衛星用プラズマセンサに限って言えば、従来工法の素子と同等の性能ながら、コストと製作期間を大幅に低減することに成功している。

また、Velásquez-Garcíaは、3Dプリンターがイノベーションを起こすための有用なツールであると述べている。

「イノベーションを起こしたいなら、失敗したり、リスクを負ったりすることが必要です。アディティブマニュファクチャリングは、宇宙用ハードウェアの製造方法として、従来と全く異なり、失敗しても問題ありません。なぜなら、迅速かつ安価に新しいバージョンを作ることができ、設計を繰り返し行うことができるからです。研究者にとっては、理想的な実験環境と言えるでしょう。」

チームは、本研究で、4つのプロトタイプを作った。

3Dプリンターが適用できる分野においては、実物を作ってテストをするコストは劇的に低下し、イノベーションが加速していくことが予想される。また、金属部分にも3Dプリンターを使い、センサー全体を積層造形法で作れば、宇宙空間での製造も見込める。さらに、軽量化と堅牢性を両立させるため、人工知能の活用も考えられている。

Sharelabでは過去にも宇宙系の記事を取り扱ってきた。これらの記事もぜひ参照されたい。https://news.sharelab.jp/cases/aerospace/3dsystems-220810/
https://news.sharelab.jp/3dp-news/tech/mitsubishi_220527/

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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