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【2023年版】大型3Dプリンターの比較・選び方〜造形方式ごとの特徴や、導入時に気をつけたいこと

大型3Dプリンターの基礎知識〜造形方式ごとの特徴や、導入時に気をつけたいこと

業務用3Dプリンターで作れるものの種類は幅広く、ニーズに合わせた選択が必要です。選定の際には、使用できる素材の種類や造形方式のほか、造形可能なサイズも考慮すべきポイント。プリンター自体のサイズと造形できるもののサイズは基本的に比例するため、大きなものや多くの数を一度にプリントするのであれば、必然的に大型3Dプリンターが選択肢に入ってきます。

選定基準|最大造形サイズに着目

何をもって大型と称するかは判断の分かれるところですが、今回の記事においては、まず家庭用と銘打たれたものは除きます。また、本体のサイズが大きかったとしても、さほど大きなものが作れない機種も存在するため、「最大造形サイズ」に着目し、その一辺が30cm前後もしくはそれ以上になるものを取り上げました。これは、靴やヘルメットのような身に纏うアイテムから、機械加工で利用する治具や実験用器具、さらには椅子などの家具が一度に出力できるものを想定しています。

また、世界中に多くの大型3Dプリンターが存在しますが、本記事内では2023年7月時点で日本国内企業において取扱実績があるものに限定しています。「TCT Japan」や「次世代3Dプリンタ展」といった展示会での紹介、あるいはShareLab内にてカタログが掲載されているものを中心に、具体的な用途と合わせて紹介します。機材ごとの特徴や造形物、運用方法などを確認のうえ、用途にあうものであればぜひ導入を検討してみてください。

材料押出法の大型機はペレットが主流に|GEM550D(エス.ラボ)

エス.ラボの3Dプリンター「GEM 550D」(出典:エス.ラボ)
エス.ラボの3Dプリンター「GEM 550D」(出典:エス.ラボ)

まず紹介するのは、国産メーカーのエス.ラボから発売されている「GEM 550D」。

最大造形サイズは W550×D400×H400mmで、各辺40cmを超えています。

系列機のGEMシリーズでは、最大造形サイズがW2,100×D1,000×H1,000mmとなるGEM 2100DGまで5種類が並び、用途に合わせたサイズが選択できます。

ペレット式3Dプリンター「GEM550D」による造形(次世代3Dプリンタ展2023より)

ペレット式3Dプリンター「GEM550D」による造形(次世代3Dプリンタ展2023より)

3Dプリンターの造形方式で最もポピュラーな材料押出方式(MEX)のなかでも、特に家庭用の小型機などでは紐状になったプラスチック(=フィラメント)を利用するFDM方式が主流になっていました。家庭用サイズであればそれほど問題ありませんが、大型機においてフィラメントを利用することには手間やリスクが伴います。たとえば、

  • 造形物のサイズに合わせて、フィラメントも長くする必要があること
  • 造形途中でフィラメントが絡まったり、折れたりする可能性が高まること
  • 造形中にフィラメントが途切れた場合、別のフィラメントに切り替えたとしても、継ぎ目やクラックが生じてしまうこと

などです。フィラメントは扱いやすいものですが、出力物の体積が大きく造形時間も長くなる、大型の3Dプリンターに適しているとは言い切れません。

そこで、多くのMEX方式の大型3Dプリンターでは、フィラメントの代わりにペレットが素材として扱われています。ペレットとは、米粒サイズの樹脂の塊のこと。造形前に必要な量だけ計測して充填したり、足りなくなったら追加したりすることが可能なため、造形途中に材料がなくなるリスクが大きく減少します。

また、ペレットは従来の射出成型などにも用いられてきた素材であるため、FDM方式で使うために専用のフィラメントを製作する必要もありません。すでに製品化されている多くのペレットを利用できるため、材料の活用範囲が大きく広がることも、ペレットを用いる大型3Dプリンターの特徴です。

右から左へと順を追って利用する「アップサイクルシステム」(次世代3Dプリンタ展2023より)
右から左へと順を追って利用する「アップサイクルシステム」(次世代3Dプリンタ展2023より)

MEX方式の大型3Dプリンター

MEX方式の3Dプリンターが大型化することによって、造形するもののサイズだけでなく、そこで使える素材の幅も広がっていることは注目すべきポイントです。単なる大きさ以上の付加価値が生み出せることを前提に、活用方法を考えてみましょう。

切削用スピンドルも備えたペレット式複合機|EXT 1070 Titan Pellet(3D Systems)

3D Systemsの「EXT 1070 Titan Pellet」プリンターも、その名の通りペレット素材を基本とした大型3Dプリンター。最大造形サイズは 1070×1070×1219mm と、各辺が1メートルを超えたかなりの大きさです。大人一人が悠々と座れるラウンジチェアも、他の造形物と組み合わせることなく一括で出力できてしまいます。

スワニー社の3Dプリンター「EXT 1070 Titan Pellet プリンタ」(出典:PR TIMES)
3D Systemsの3Dプリンター「EXT 1070 Titan Pellet プリンタ」(出典: 3D Systems )
45時間の 3Dプリントで製作したラウンジチェア(次世代3Dプリンタ展2023より)
45時間の 3Dプリントで製作したラウンジチェア(次世代3Dプリンタ展2023より)

「EXT 1070 Titan Pellet」の大きな特徴は、複数あるツールヘッドにスピンドルも設置できること。例えば3Dプリントで造形したプロダクトに対し、そのままスピンドルでの切削加工を加えることができます。この仕組みの背景として、MEX方式の3Dプリンターは他の方式よりもシンプルなため大型化を行いやすい一方、造形精度の面ではやや劣り、積層痕と呼ばれるレイヤーや表面のテクスチャが荒くなるという課題がありました。

造形品質の荒さは試作品や治具ではさほど大きな問題になりませんが、最終製品や型として利用する場合には、造形後に後処理を加えて仕上げを行う必要がありました。しかし、「EXT 1070 Titan Pellet」ではその工程を一つの機材で行えます。次世代3Dプリンタ展2023で展示されていた型のサンプル品(下の写真)では、半分は3Dプリントしたまま、もう半分はスピンドルでの切削加工を行ったものです。表面が滑らかになっていることが一目瞭然で、このまま木型としても利用できるクオリティになっています。

出力後に片側だけ切削で仕上げたサンプル。表面の滑らかさが大きく異なることがわかる(次世代3Dプリンタ展2023より)
出力後に片側だけ切削で仕上げたサンプル。表面の滑らかさが大きく異なることがわかる(次世代3Dプリンタ展2023より)

型の制作を少量から行えることは、プロダクトの製造フローを大きく変えるでしょう。それが大きなサイズであるなら尚更です。広い素材の選択肢に加え、後加工までもワンステップで行える大型3Dプリンターは、その自由度の高さをいかに使いこなすかという発想も試されるかもしれません。

なお、EXT 1070 Titan Pelletはスワニーと提携し、国内初となる導入が決まっています。2023年10月には長野県伊那市にデモセンターが設置され、利用方法の開拓や受託制作などに取り組んでいく予定です。

色彩表現に優れた大型3Dプリンター|JS850 Pro(Stratasys)

Stratasysの3Dプリンター「JS850 Pro」(出典:Stratasys)
Stratasysの3Dプリンター「JS850 Pro」(出典:Stratasys)

フィラメントやペレットを用いたMEX方式に比べ、造形精度やカラーリングで優れた方式が多数存在します。

Stratasysの「J850 Pro」はUV硬化性の樹脂を噴出しながらUVライトで硬化させていく造形方式(PolyJet)で、ノズル先端が細かく、また多様な素材を同時に扱えることから造形物のバリエーションが広くなっています。

J8シリーズ対応材料(出典:Stratasys)
J8シリーズ対応材料(出典:Stratasys)

「J850 Pro」の最大造形サイズはW490×D390×H200 mm。MEX以外の方式は高さ方向の拡張がしづらい傾向にあるため、単純な造形サイズでは差があります。しかし透明材料や最大7種の素材を同時に扱えることは大きな魅力で、モックアップや射出成型用の樹脂型を作る用途などで活躍するでしょう。

設置環境の制約が少ない大型金属3Dプリンター|Shopシステム(Desktop Metal)

Desktop Metalの大型金属3Dプリンター「Shopシステム」(次世代3Dプリンタ展2023より)
Desktop Metalの大型金属3Dプリンター「Shopシステム」(次世代3Dプリンタ展2023より)

金属製のアイテムを造形できる大型3Dプリンターも増えています。Desktop Metal の「Shopシステム」は、W350×D220×H200 mmまでの造形が可能。ニーズに応じて高さ方向を選べる(H50〜H200mm)という仕様からも、導入時に用途や想定する造形物を決めておくことの重要性がうかがえます。

Desktop Metalの大型金属3Dプリンター「Shopシステム」 (出典:丸紅情報システムズ)
Desktop Metalの大型金属3Dプリンター「Shopシステム」 (出典:丸紅情報システムズ)

バインダージェット方式(結合剤噴射法)で造形する本体と、造形後に粉末を除去するパウダーステーションや加熱するファーネス、また粉末素材を管理するドライオーブンやブレンダーと組み合わせて利用します。粉末素材に結合剤を吹き付ける方式なので、直接金属を溶かして固めていく方式と比較して、プリンター本体が高温になることはありません。

こうした取り回しのしやすさも相まって、2023年4月には丸紅情報システムズと名古屋特殊鋼株式会社が協業を開始し、「Desktop Metal ShopシステムPro」を国内で初めて導入したことも報じられています。

低コストの大型金属3Dプリンター|HBD-200(SK additive innovation)

「HBD 200」の実機(次世代3Dプリンタ展2023より)
「HBD 200」の実機(次世代3Dプリンタ展2023より)
「HBD 1200」のイメージ写真
「HBD 1200」のイメージ写真

「HBD-200」の最大造形サイズは W270×D170×H120mmですが、上位機種ではW460×D460×H1200mmまで大型化に対応します。本体のサイズもかなりものになるため、導入時には作業環境の検討が必要です。

「HBD-200」で造形中の様子(次世代3Dプリンタ展2023より)
「HBD-200」で造形中の様子(次世代3Dプリンタ展2023より)
「HBD-350」での造形サンプル(次世代3Dプリンタ展2023より)
「HBD-350」での造形サンプル(次世代3Dプリンタ展2023より)

一括で大きなものを造形するほか、同じ形状を大量に生産するためにも大型3Dプリンターは活躍します。生産量や歩留まりなども考慮し、最適な大きさの機体を見つけましょう。

光造形機も周辺装置の考慮が必要|Lux3 Li+(LuxCreo)、Form3L(formlabs)

「Lux3 Li+」のイメージ写真(出典:Lux Creo)
「Lux3 Li+」のイメージ写真(出典:Lux Creo)
LuxCreoの3Dプリンターによる造形例(次世代3Dプリンタ展2023より)
LuxCreoの3Dプリンターによる造形例(次世代3Dプリンタ展2023より)

液槽光重合法(光造形方式)の3Dプリンターは、家庭用の小型のものと同様に、大型機の選択肢も増えてきています。LuxCreoの「Lux3 Li+」の最大造形サイズはW400×D259×H380 mm。柔軟性のあるサンダルや座り心地の良いサドルなど、人体にフィットするようなプロダクトをそのまま出力可能な大きさです。多様な特性を持つ液体樹脂を複雑な内部構造と組み合わせられる、光造形方式の3Dプリンターならではの事例と言えるでしょう。

なお、光造形方式の3Dプリンターも、造形後には洗浄や硬化といった後処理のプロセスが必要です。専用の洗浄機や硬化機がある場合、それらの導入コストや配置場所の検討が欠かせないことに注意しましょう。

たとえば、Formlabsの光造形機Formシリーズの大型機に位置付けられる「Form3L」は、W200×D335×H300mmの造形エリアを持っています。造形が完了してから未硬化のレジンを洗い流し、UVライトを隈無く当てることで造形品質を安定させる必要があるため、Form3L 専用の洗浄機や硬化機を同時に扱うことで、その性能が十二分に発揮されることは理解しておきましょう。

Form3Lの利用イメージ(出典:BRULE)
Form3Lの利用イメージ(出典:Formlabs)
Form3L専用の洗浄機と硬化機(出典:formlabs)
Form3L専用の洗浄機と硬化機(出典:Formlabs)

まとめ

大型3Dプリンターの造形方式ごとの特徴や、造形の実例を紹介してきました。最大造形サイズを切り口にして絞り込むのは明快なアプローチですが、その先で扱える素材や生み出せる価値、運用のコストなどについても考慮する必要があります。自分にぴったりの用途を見極め、運用フローも考えた上で大型3Dプリンターを導入すれば、きっと新たな価値を生み出せるでしょう。

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