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【2023年12月版】小規模なモノづくりで活躍する手が届くおすすめ3Dプリンター

ソニーのR&D部門でデザイン業務を行う福馬 洋平 氏(写真)は、自ら業務で高級機種から廉価な機種まで用途に合わせて幅広い3Dプリンターを使ったモノづくりに取り組んできた。その経験から「プロダクトデザインの現場には、予算を気にせず手軽に試作ができる環境が必要」というコンセプトでソニーの社内ファブ施設BRIDGE TERMINALの工房長として廉価帯の3Dプリンターを20台以上導入し、年間数千名の利用者に活用されるまでになったという。

自ら3Dプリンターを活用するほか、新製品開発現場での組織的な3Dプリンターの活用を推進する福馬氏に2023年12月時点での新しいモノづくりに活用できるおすすめおすすめ3Dプリンターを選定していただいた。小規模オフィスやリモートワークする際に開発者の家庭に導入することで、効果を発揮する3Dプリンターの最前線に関する福馬氏の寄稿を是非ご覧いただきたい。(シェアラボ編集部)

家庭や小規模オフィス導入用で重視するスペック

実際にソニー社内で活用されている樹脂3Dプリンターの数々。社員は利用無料だ。

まずは設置場所と用途により機種を選定する事になると思います。熱溶解式の3Dプリンターではざっくり220mm□のモデルを標準により小型なモデルや、大型なモデルがあります。LCD式光造形方式はより小さな、130x80mm程度の大きさを標準とし、より大型なモデルがより高額なものとしてラインナップされています。費用も2023年12月現在では2-12万円程度の機種からお勧めする事が多いです。筆者はレジンの匂いがかなり苦手なため光造形タイプの検討は控えめとなっており、予めご了承いただけると嬉しいです。

ここ1年で著者が導入を検討したモデル例

筆者がここ1年で、過去に購入したモデルとも比較し導入検討した機種とそのスペック比較の表を列挙します。併せて筆者が検討した折にメリットと感じた点を青字に、デメリットと感じた点を赤字として記載しております。メリットやデメリットは対象とする内容によっても大きく異なり、例えばより大型の造形を熱溶解式で実施したい方もいると思いますし、使用樹脂はPLAやPETGまでで十分だったり、TPUを印刷しない方もいて、それぞれ良否が変わってくると思います。また下記以外にも多数のメーカーがあり、それぞれにメリットとデメリットがある旨も併せてお伝えしておきます。

参考URL: https://bambulab.com/ja-jp , https://flashforge.jp , https://www.creality-3d.jp , https://www.ankerjapan.com , https://qidi3d.com , https://www.voxelab3dp.com , https://www.anycubic.com , https://www.elegoo.com , https://www.sovol3d.com/ , https://kingroon.com , https://www.prusa3d.com , https://www.voxelab3dp.com , https://vorondesign.com , https://www.sugoi3d.jp , https://fraxinus.jp 

個人的なオススメ1「Bambulab P1S」

2021年度より様々熱溶解式の3Dプリンターを色々購入し使ってみた中で、2023年12月時点だとBambulab P1SとA1 miniをオススメします。

Bambu Lab P1S Combo | 3D Prima - 3D-Printers and filaments
Bambulab P1S(約12万円) , Bambulab P1S Combo (約16万円) ,

2023年12時点で日本で購入できるBambulabの最もコストパフォーマンスに優れたモデルで、標準的な印刷サイズを超える256mm□の印刷サイズを有し、世界中で定評のある高速・高精度印刷を楽しむことが可能です。独自のソフトウェアも使い勝手が良く、対象素材も様々対応可能で、予算が許せばAMS(自動素材供給システム)を取り付けてマルチカラー印刷を手軽に楽しむことも可能です。

難点としては低価格化の弊害か本体液晶がモノクロの限られた表示性能にとどまっており、より快適に使いたい場合、さらに予算が許せばX1 Carbonを考えるのも良いでしょう。

A1 miniは2023年12月に日本でも発売されるようになったコンパクトでより安価な新モデルで、180mm□の印刷サイズを有し良好な使い勝手のため初めて3Dプリンターを扱う方々にもお勧めです。

Bambulab A1 mini(約5.3万円)

Bambulab A1 mini Combo (約8.2万円) ,

個人的なオススメ2「Flashforge Adventure 5M Pro」、「‎Creality K1」、「QIDI X-Smart3」の3機種

より低価格に、完成品な3Dプリンターを楽しみたい場合はFlashforge Adventure 5M Pro、‎Creality K1、QIDI X-Smart3の3機種がそれぞれお勧めできます。

Flashforge Adventure 5M Pro(約8.5万円)
Creality K1(約8.8万円)
QIDI X-Smart3(約4.9万円)

それぞれ十分な加熱性能のホットエンドとエンクロージャーを装備しているのでABSなど反りやすい素材も比較的扱いやすく、またBambulab P1S, X1Carbonと類似のCoreXY構造を有しているためいずれも高速で、一定の完成度で利用可能です。Flashforge Adventure 5M Proと‎Creality K1は業界標準となる220mm□の印刷サイズ、QIDI X-Smart3は小型サイズとして使い勝手の良い175x180mmの印刷サイズを有し、それぞれ独自のソフトウェアを提供しています。

個人的なオススメ3「Creality Ender-3 V3 SE」

Creality Ender-3 V3 SE(約3万円)

さらにより低価格に3Dプリンターを楽しんでみたい方にはCreality Ender-3 V3 SEをお勧めしています。約3万円と十分に廉価にもかかわらずダイレクトエクストルーダーやオートレベリング機能を最初から保有し、印刷サイズも業界標準の220mm□となっています。Ender3は低価格な3Dプリンターで最も著名なモデルとなっており、初代からのユーザー層も厚く、歴材の様々な改造情報や遊び方が蓄積されているのも魅力の1つとなっています。競合他社が類似のものを多数出していることも特徴で、興味を持って頂いた方は他社モデルとも比較頂けると嬉しいです。

同じ2-12万円の予算内にも様々な機種が存在し、当たり前ですがほとんどのモデルで正常に印刷が可能です。結局トラブル時に対応が出来るかどうかも大事な要素で、近くで使いこなしている方がいたらその方にも相談するのもとてもお勧めです。

改造での性能アップも手段の一つ

また完成品と真逆の発想になりますが、3Dプリンターそのものの構造理解や機能改善、性能アップなどに楽しみが見いだせそうな方にはキットでの購入もお勧めで、世界的にはPrusa Research社のOriginal Prusa i3 MK4やVORON Design社のVORON Trident, VORON v0.2などが高い人気を誇ります。設計データを元に一から部材を集めて組み立てたり、世代が古くなった機種に大幅な改造を施す方も増えています。オープンソース由来の機種は沢山あるほか、主要部品の多くが再利用できるPC/AT互換機と類似の楽しさもあり、ぜひ色々導入に悩んで頂けると嬉しいです。

今後もより良い3Dプリンターが次々と発表・発売されると考えられます。たとえば今冬はBambulab社が256mm□の印刷サイズや互換性をキープしたまま、大幅に安価なモデルの市場投入を発表しました。益々目が離せず、継続して新製品情報を検討頂けると嬉しいです。(福馬 洋平)

※編集部メモ

産業用3Dプリンターから見ると一段劣る、という意味でホビーユースと分類されてきた廉価帯の3Dプリンターだが、性能向上が激しく用途を間違わなければ、安価に形状確認や代替部品を製造できる。まさに日進月歩で進化してきており、今回の福馬氏のセレクションで紹介された機種は、形状確認レベルであれば、業務用途での利用も充分可能だ。

今回福馬氏に機種を選定を依頼した際に返ってきたコメントで最も印象的なのが「1か月後は別の機種が一番のオススメになるかもしれません」という一言だ。この一言は個人向けのパソコンが年々性能改善されいつ買えばいいのかわからないと皆を悩ませた時代に似ている。つまり「買い時に迷ったら今一番いいものを買って使う方が得」という世界観だ。その上で、手持ちの機材でできないことは産業用機器を持っているサービスビューロに造形依頼しながら、あたりだしを行い、製造数が増えてきたら自社導入するという段階的なステップが現実的かもしれない。

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