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「宮城AM研究会」参加報告

2024年7月19日(木)に、「令和6年度第1回宮城AM研究会」が開催され、シェアラボから丸岡が参加した。本会は、みやぎデジタルエンジニアリングセンターが主催し、日本積層造形株式会社(宮城県多賀城市)にて開催された。講演と金属3Dプリンター工場見学の2部構成で、県内外より約30名が参加された。樹脂から金属まで、また実用部品製造から治工具まで、幅広い情報交換と人的交流ができた有意義なイベントであった。(上部画像は研究会の様子。出典:宮城県産業技術総合センター)

みやぎデジタルエンジニアリングセンターと「宮城AM研究会」とは

みやぎデジタルエンジニアリングセンター(以下、MDE)」は宮城県産業技術総合センターが企画・運営し、高度デジタルエンジニアの育成事業強化を行っている。MDEは、「最新鋭の3Dプリンターや3次元CAD環境を整備し、3Dプリンターや3次元CADを高度に活用した製品開発を行うことのできる高い競争力を持つ人材育成拠点として運用」をし、「人材育成事業、研究会事業、課題解決事業、AM実用化促進事業の4つの事業を実施し、ハードおよびソフトの両面から、県内の産業高度化の支援」を行う。宮城AM研究会はMDEが「AM技術(3Dプリンター)の活用事例や企業訪問による事例検討を通して、研究会参加企業内での活用事例を模索」する研究会で2016年から年3回程度の定例会を継続開催してきた。

令和6年度第1回宮城AM研究会の概要

まず本研究会内容の詳細や写真については、主催者の「R6年度第1回宮城AM研究会開催報告」ウェブサイト(https://www.mit.pref.miyagi.jp/2024miyagiam01_report/)を参照されたい。この中で、特にお伝えしたい点、所感は以下の通り。

  • 宮城AM研究会スーパーバイザー 東北大学 千葉晶彦 特任教授(東北大学未来科学技術共同研究センター)の開会挨拶では「これまで金属の話題が多かったが、樹脂の話題も。性能が上がり、工法も多様化。樹脂金属ハイブリッドの潮流もあり、両にらみしたい」ため、今回は樹脂についての話題提供としたとのこと。
  • 企業講演では、まずものづくり企業の現状課題が示された。
外注の場合リードタイム長期化 高コスト 2D図面作成承認 受入検査 在庫管理
内製の場合属人化 標準化 技術継承 環境配慮 在庫管理
会社全体の課題人的リソースの確保 自動化効率化 環境配慮 CO2削減 電力 物理的輸送

それに対し、国内外で生産治工具やロボットエアグリッパーなどを炭素繊維強化樹脂材料とAMで対策している事例が多数紹介された。国内大手自動車メーカーでも、リードタイム大幅短縮や切削加工からのコスト削減だけでなく、設計形状や樹脂の断熱特性により使用機能向上も実現し、活用が急速拡大しているとのこと。国内でも活用している企業はかなり進んでいて、活用していない企業との二極化、格差拡大が現実に起きてきていることを改めて認識した。

  • また、国内自動車メーカーでの樹脂AMによる量産部品の製造事例では、「3Dプリンターは経営課題であるSDGs、CASE対応、金型取引・保管の適正化など解決するためのツール」であり、AMによる最終製品製造の4つのポイントとして ①材料物性 ②生産性(1部品当たりの償却費) ③コスト ④信頼性 が示され、特にコストは生産終了後の「見えていないコスト」を含めた「製品・部品ライフサイクル全体」で算定評価することが重要であることが示された。またAM製造実現には、「部門、サプライヤー、材料メーカー、装置メーカー横断ワーキンググループ編成小さく始め、クイックにPDCAを回しスモールサクセスを創出する」という、実践した方からの提言は説得力があった。
  • MDEからは「AM実用化プロジェクト」の参加募集受付の案内や、令和6年度宮城県金属粉末積層3Dプリンター利用補助金令和6年度宮城県新規参入・新産業創出等支援事業費補助金の募集案内があった。
  • 講演の最後に、今年11月19日(火)~22日(金)にドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催予定のAMと次世代インテリジェント工業生産に関する国際製造加工技術専門見本市「Formnext 2024」について、MDEの方の調査同行について募集案内があった。あくまで現地集合&現地解散、費用は全額自己負担前提で、会場で「お互いに情報交換しましょう!」が主目的とのこと。特に初めて行かれる方にとっては、航空機やホテルの選択・市内交通や入場手段に悩まない、同行者同士の情報交換ができる、現地での不測の事態の際の相互支援、英語会話支援などが得られるなど大きい利点があるので、関心のある方はメールにてmiyagi-de@mit.pref.miyagi.jpまで問い合わせをされたい。
  • 国際規格 ISO/ASTM52920準拠の「AM製造サイト認証」を取得している日本積層造形株式会社の工場見学では、電子ビームおよびレーザー方式金属PBF装置の実機と、シェアラボでも業界ニュースとしてお知らせした「小型月着陸実証機「SLIM」の着陸脚の衝撃吸収材」試作品など、多くのサンプルを実際に見ることが出来た。(写真撮影、詳細公開は不許可)

参加を終えて

記者は前職在職中に当研究会設立当初より何度か参加させていただいた。まずMDEの皆様の長きにわたるAM研究、啓蒙の努力に敬服と今回の機会を頂いた感謝の意を表したい。また今回もこれまで以上に幅広く、実践的な情報提供があり、多くの学びがあった。参加者もAMを活用し、更に進めたい企業の方や、装置・材料販売をされている企業、学術研究者の方まで幅広く、オンラインでは得にくい「生きた情報」を交換できた。今後も研究会は開催をされるとのことで、AMに欠かせない「広い関係者間の対話」の場として積極的な参加をお勧めしたい。

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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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