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航空宇宙業界における3Dプリンターの活用

ここ数年で、航空宇宙業界における3Dプリンター活用は加速しています。2~3年前までは自動車業界と同様に試作品への適用が中心でしたが、海外を中心に完成品への適用が急速に進んでいます。この記事では、航空宇宙業界において、海外で進む3Dプリンターの活用事例に加えて、国内での活用事例も合わせて紹介します。

世界の航空宇宙産業における3Dプリンター活用

航空宇宙業界では、NASAを中心に宇宙関連のビジネスに取り組むベンチャー企業など、さまざまな企業で3Dプリンターが積極的に取り入れられています。航空宇宙産業における3Dプリンターの活用事例を紹介します。

アルテミス計画に向けたISSでの3Dプリンター実験 | NASA

NASA(アメリカ航空宇宙局)は、2024年までに月面に人類を着陸させる「アルテミス計画」を進めています。その計画で重要な役割を果たすことが期待されているのが、月表面の砂礫(レゴリス)を建築資材の主原料とし、3Dプリンターを用いて建設される予定の月面基地です。

地上で行われた、3Dプリントの実験では、レゴリスに模した成分の砂礫を用いることで、十分な強度を持つ構造物の建設が可能であることが分かっています。今後は、地球とは異なる低重力下の環境で、同様の強度を持つ構造物をうまく3Dプリントできるのかという点を確認することが必要です。

NASAはISS(国際宇宙ステーション)のミッションでの一つとして、低重力下でも地上と同様に、3Dプリントができるかを確認する実験を行います。すでに2021年8月の打ち上げで3Dプリンターが打ち上げられており、今後はISSで実証実験が行われていくでしょう。この実証実験がうまくいけば、月で3Dプリントを用いた基地の建築が現実的になります。また、これは月での活動だけでなく、人類が火星で活動するためにも重要な一歩です。

宇宙ロケットへの3Dプリンター技術適用 | ブルーオリジン社

アメリカの民間航空宇宙企業であるブルーオリジン社は、2021年7月21日に、民間企業としては2番目となる有人での宇宙飛行に成功しました。ブルーオリジン社を立ち上げたのは、世界有数の通販サイトとして知られるアマゾン・ドット・コム社の創業者ジェフ・ベゾス氏です。

今回打ち上げられた宇宙船「ニュー・シェパード」に搭載されている「BE-3」と同系列の「BE-7」というエンジンは、大型の3Dプリンターで製造されています。「BE-3」が3Dプリンターで製造されたかどうかは明らかになっていませんが、民間企業でも3Dプリンターが積極的に活用されています。

NASAやブルーオリジン社の事例を紹介しましたが、これら以外の宇宙ベンチャー企業でも3Dプリンターは積極的に導入されており、効率的な開発が進められています。

国内の航空宇宙産業での活用実例

海外では積極的に採用が進んでいる3Dプリンターですが、国内でも徐々に活用され始めています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工の事例を紹介します。

最新国産ロケットのエンジン開発 | JAXA・三菱重工

日本の基幹ロケットであるH-IIA、H-IIBの後継機として、H3という次世代ロケットが開発されており、初号機が2021年以降に打ち上げられる予定です。このロケット開発では、JAXAと三菱重工が主体となって取り組んでいます。

H3ロケットの主エンジンとなる第1段用エンジンLE-9の開発・製造には、3Dプリンターが活用されています。三菱重工は低コストの実現と、海外のロケットに対する競争力強化の2つの目的で、12の部品を3Dプリンターで製造しています。

例えば、複雑な形状である噴射器では、コアとなる部分を一体造形できるため、全体コストの50%以上を削減できました。また、ミキサー配管はシンプルな配管構造ですが、一体化することで質量やコストの削減を実現しています。

このように、成立性が十分あると判断された部品に3Dプリンターでの製造が採用されています。今後も3Dプリントの技術開発が進むに従って、適用範囲が拡大していくでしょう。

月に着陸するSLIM探査機の脚 | JAXA

JAXAでは、月に着陸するSLIM探査機の脚先に付けているラティス構造を3Dプリンターで製作しています。この構造は枝状に分岐した格子が周期的に並んだもので、月面に接触する際にラティス構造がつぶれることで衝撃を吸収する機能を果たし、安定した着陸を実現します。

従来はアルミニウム箔で作られたアルミハニカムが用いられていましたが、いち方向からの荷重にしか対応できませんでした。そこで3Dプリンターを用いることで、機械加工では実現できなかった複雑な形状のラティス構造を実現でき、複数の方向からの衝撃に対応できるようになったのです。

まとめ

今や航空宇宙業界において、3Dプリンターは必須の選択肢となっています。この業界では形状が複雑で高機能が要求される唯一無二の部品が必要となることが多いため、3Dプリンターの強みが発揮されやすいのです。

特に海外では、NASAや民間の宇宙ベンチャーを中心に、積極的に採用されています。国内でもJAXAや関連企業を中心に少しずつ活用が進んでおり、今後は適用範囲も拡大していくでしょう。

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