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砂型3Dプリンターってなに?鋳造プロセスを大幅に改革、量産に活用されるAM技術の注目株!

鋳造のイメージ(出典:Adobestock)

3Dプリンティング技術を活用して金属部品を生産する方法は、金属3Dプリンターで直接金属部品を製造するだけではない。金属を溶かして型に流し込み部品を生産する鋳造工法を大きく合理化するための砂型3Dプリンターは、すでに量産に活用されている。砂型3Dプリンターとは何か、原理、できること、苦手なこと、金属3Dプリンターとの違い、取り扱っている装置メーカーや導入している企業の例などを解説していく。(写真は鋳造のイメージ。Adobestockより)

鋳造業界の苦境と砂型3Dプリンター

国内に2,000拠点以上ある鋳造工場は自動車関連、工作機械関連などをはじめとして、さまざまな金属部品製造に携わってきた。しかし生産工場のグローバル化や海外工場の技術力向上により、国内での製造量は漸減、高精度かつ短納期・低価格化を求められている厳しい分野だ。

そんな鋳造だが、砂型に用いる木型は職人の手仕事で製作を行うことも多く、コスト削減などに限界もある。また技術者の高齢化という問題もあり、DX活用や自働化が待ち望まれる分野でもある。そこで注目されているのが、鋳造用砂型を3Dプリンターで製作する取り組みだ。

鋳造部品のイメージ(出典:Adobe Stock)
鋳造部品のイメージ(出典:Adobe Stock)

鋳造用砂型3Dプリンターは、3Dモデルをもとにダイレクトに砂型を造形できる。そのため、木型製作と組み立ての工程を省けるだけではなく、精度と作業性の向上、設計の自由度の飛躍的な向上が見込める。

砂型のイメージ(出典:Adobe Stock)
砂型のイメージ(出典:Adobe Stock)

砂型3Dプリンターに関してはExoneなどの海外メーカーが優れた装置を投入しているが、2023年8月時点で世界最大最速の製造能力を持つ装置は日本製だ。国策プロジェクト「TRAFAM」で開発された国産砂型3Dプリンターは、鋳造工場を持つユーザー企業の意見をもとに、1日に100個のエンジンブロックを製造する性能として1日10万ccの生産能力を実現している。

鋳造の原理と砂型3Dプリンターにできること

では砂型3Dプリンターに何ができるか、どんな仕組みかを簡単に説明していきたい。その前提として一般的な砂型鋳造のプロセスをまず解説する。

砂型鋳造とAM砂型の工程を比較(作成:シェアラボ編集部)
砂型鋳造とAM砂型の工程を比較(作成:シェアラボ編集部)

一般的な砂型鋳造のプロセス

形状が複雑な部品を鋳造で製作する場合は、原型と呼ばれる作りたい部品を再現した木製の型を用意する。鋳造のリスクとして、金属の密度が低下して巣と呼ばれる隙間が生まれてしまう懸念があるが、木型の形状や組み方、砂型への埋め込み方、取り出し方、溶けた金属である「湯」の流れ方をどう制御するかを形状に落とし込んだ湯口系の設計にはノウハウが詰まっている。

だが木型は職人が制作し、組み立ても手で行うため揺らぎも発生する。木型では表現できない複雑な形状にも対応できないなどの限界もある。

砂型3Dプリンター

砂型3Dプリンターを活用して鋳造を行う場合は、実際に作りたい形状を3DCADで設計したあとに、砂型も3DCADで設計する。砂型には溶かした金属を注ぎ込む湯口や湯の流れを整えるフィルター、ガス抜きの穴、滓溜りなどを配置する。近年は鋳造型の設計時にもシミュレーションを活用し、巣が発生しないように湯の巡りを最適化していくことが一般的になってきた。

砂型3Dプリンターは、「中子(なかご)」と呼ばれる内部の中空構造や複雑な形状を表現するための型と「主型」と呼ばれる全体の形状を表現するための型のどちらにも利用できる。また形状の自由度も高いため、砂型3Dプリンターでは中子を分割して組み立てることなく一体で造形できるほか、複雑な流路を設計することも可能だ。複数部品を同時に生産する際に、木型を追加で発注しなくても砂型を印刷するだけで対応できる点もメリットだろう。

砂型3Dプリンターのメリットとデメリット

砂型3Dプリンターは3Dプリンティング技術を活用して、鋳造に必要な砂型を制作する装置だ。木型を使った鋳造と比べると積層痕の懸念は増すが、3Dデータから直接砂型を造形できるため、仕様変更、設計の自由度は大きく増す。また木型の製作リードタイムを短縮できる。

メリットデメリット
・木型よりも設計自由度が大幅に高い
・自働化できる
・木型レスなので仕様変更が容易
・木型レスなのでリードタイムが早い
・新規の設備導入が必要
・積層痕の懸念がある
砂型プリンターのメリット・デメリット(シェアラボ編集部作成)

砂型3Dプリンターに取り組むユーザー企業

現在日本で砂型3Dプリンターを活用しているのは、3Dモデルでの部品・砂型の設計能力がありシミュレーションを活用できる鋳造に取り組む企業だ。自動車や船舶関連部品を鋳造に実績のある「コイワイ」、航空機部品での活用を行う「TANIDA」、自動車部品などで実績のある「JMC」、真空ポンプなどの制作実績を公開している「鶴見製作所」など複数企業が活用を行っている。また鋳造設備を持たないが設計やシミュレーションに優れた企業では砂型を支給することで、協力工場での高度な部品生産を実現している例もあるという。

砂型3Dプリンターの装置メーカー

砂型3Dプリンターの分野では国家プロジェクト「TRAFAM」で開発された乾式国産砂型3Dプリンターをシーメット株式会社が生産販売している。10万cc/日という強力な生産能力を誇り、2018年の発売開始だが、生産能力は2023年段階でも世界一を誇り(シーメット調べ)。すでに国内60社以上への導入済みだ。これまでは海外への販売に制限があったが、2023年以降、海外での販売にも取り組みが可能になった。

海外勢ではDesktop Metalの傘下にあるExoneが世界的に実績があり、国内でも導入事例がある。

おわりに・・・金属3Dプリンターとの違い、鋳造業界を変える可能性

関係者を取材して「AM工法と鋳造工法は、品質保証の在り方が似ているが、捉えられ方が大きく違う」という発見があった。鋳造もAMも同じくプロセス保証で品質を評価する。しかし歴史がある鋳造は発注者側の品質管理部門にも検査ノウハウがあり、監査を行う際もポイントがわかっているため受け入れられている。以前は大学の学部で鋳造学科を持つ大学も多かったというほど生産の手の内として確立している存在だ。

一方で3Dプリンターを利用して生産を行うAMは規格も専門の学術体系も、企業内のノウハウ蓄積もない。そのため、金属AMというだけで非常に厳しい、ある意味基礎研究的な研究を、技術理解のための検査として段階的に各社が実施している。車輪を各社が再発明しているような状況だ。もちろんそれだけ日本企業が深く材料、工法を理解し、その上で加工の合理化を積み重ねてきたことの裏返しでもある。

便利な技術をうのみにせず、付加加工の原理、できること、できないことをきちんと理解したうえで活用しようとする取り組みには時間がかかるので、金属3Dプリンターは日本でなかなか受け入れられないと言われてきた。

それだけに、同じ3Dプリンティング技術を活用して既存の工法を一段階進化させ、自働化させることができる砂型3Dプリンターは3Dプリンターによる量産をすでに実現している存在となっている。全国に2,000カ所以上ある鋳造工場の内まだ導入は数十というレベルだが、今後鋳造業界が漸減していく注文と老齢化していく職人という問題に向き合う際に、特効薬となる可能性を秘めている。

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