JIMTOF 2024 海外新製品展示レポート
2024年11月5~10日に「JIMTOF2024 第32回日本国際工作機械見本市」が東京ビッグサイトで開催された。シェアラボは主催者セミナー開催とブースで出展参加した。本記事では、海外から来日してブース出展し、記者が注目した企業と製品を特集してお伝えする。(写真は出展社許可にて記者撮影)
目次
注目した初出展海外企業・製品
今回のJIMTOF2024では特別併催展として、「Additive Manufacturing Area in JIMTOF2024」が東京ビッグサイト南2ホールにて開催された。その中で、実は公式ウェブサイトの出展者リストに掲載されていなかった4社の海外企業が、主催者メインステージ近くの集合ブースで出展をした。これはYouTubeチャンネル「ShareLabTV」で公開中動画の記者との対談に登場頂き、日本の製造産業とAMに精通したLayered Ltd CEO Peter Rogers氏が参入支援をしている企業で、日本の現状課題解決やこれからの需要に合った製品であった。
①PanOptimization社 「PanX」
PanOptimization社(アメリカ ペンシルベニア州)のソフトウェア製品「PanX」は金属AMのLPBF(レーザー粉末床溶融結合法)とDED(指向性エネルギー体積法、最大6軸)を対象に、あらゆるサイズや複雑さの部品に対して高精度の熱機械シミュレーションと最適化を可能にする。
サポート構造含めた3Dデータと、材料、造形条件、ツールパスなどのデータから、造形中の加熱冷却による応力ひずみを解析し、不具合や変形を造形前に把握、対策できることで、コストと時間のかかる造形不具合-原因究明ー対策再造形サイクルを減らすことが期待できる。
大きな特長として、解析結果までの時間が非常に短い上に精密な結果が得られること、小さい部品からメートルサイズの部品、熱交換器などの複雑形状まで、従来は解析計算が出ない、もしくは長時間かかる案件にも対応できることである。
その独自技術のひとつがマルチグリッドモデリングと呼ぶボクセルメッシング技術で、解析中にメッシュサイズを部分的に粗くして計算負荷を減らすが、解析結果情報は細かいメッシュの結果を保持することで、速さと精密さの両立を実現している。ワークステーションより性能の低いPCでも使え、ニーズごと選ぶライセンスは年間サブスクリプションで販売されるとのこと。
② Lumafield社「Neptune」
Lumafield社(アメリカ マサチューセッツ州)のX線CT装置「Neptune」は、研究開発や製造の現場にも容易に設置でき、簡単な作業で2D/3D非破壊検査が出来る製品。
装置も幅と高さが6フィート(約1.8m)、奥行き3フィート(約0.9m)、一般家庭用電源で動かすことが出来る。専門技術者でなくてもオートスキャン機能で容易に操作でき、スキャンしたデータはクラウドサーバーにアップロードされ、ウェブブラウザー上で動かせるAI活用ソフトウェア「Voyager」にて様々な形状観察分析、正しい形状との比較などが出来る。
③Additive Industries社 「MetalFAB-300 Flex」
Additive Industries社(オランダ)は金属LPBF方式3Dプリンター製品「MetalFab 300 Flex 」を、ブースで主に紹介。実績のある自社金属 3D プリンターのパフォーマンスと品質を、これまでで最も柔軟かつ手頃な価格のパッケージで提供する製品で、シェアラボでも9月12日に「初の2台のMetalFAB-300 FlexをK3D社に販売」のニュースをお伝えした。同社は2012年設立以降、試作から量産まで対応する大型金属3Dプリンター「MetalFABG2シリーズ」などを製造販売してきたことで知られているが、 「MetalFab 300 Flex 」 はそれより小型で、かつ造形必要に応じて造形領域を 300x300x400mm から 420x420x400mm まで拡大できるライセンス サービス (月間または永久)を購入することが出来ることで、稀にしかない大型部品造形のために大型装置を導入することなく、多様な用途に対応できる。詳しくは日本販売代理店の株式会社シーケービーに問い合わせいただきたい。
④Continuum社 金属粉末ソリューション
Continuum社(Asia-Pacific Production & Sales Center、シンガポール)は金属AMだけでなく、MIMや加圧加熱成形用の金属粉末製造ソリューションを提供している。コンテナにも入る大きさの自社開発ワンステップ粉末製造装置「Greyhound M2P」により、廃棄材から高品質な金属粉末の製造を実現している。同社についてはシェアラボでも2023年8月にインタビュー記事でお伝えした。同社は装置販売はせず、個別パートナーと製造システムを構築することを事業としている。うかがったところ世界各地で導入が進んでいるとのことで、日本国内でもサステナビリティ対応の点からも、今後高まるとみられる需要に対し、有効なソリューションではないだろうか。
まとめ
今回のJIMTOFでは上記4社によるパネルディスカッションも開催され、多くの方が聞かれていたようで、個別にブースで説明を受けたり、質問する方も見受けられた。もし上記について質問や詳細説明を希望される場合は、シェアラボの問い合わせページから問い合わせいただければ、日本語での対応が出来る方へつなぐことが出来るので、ぜひ活用されたい。
日本でのAM導入に課題があり先に進めない問題、またはAM活用が進むに伴い、新たな要求や課題が出てくるのは当然であるが、それらは海外で先行して起きており、それを改善解決する製品、材料、サービスも多数存在する。一方日本で購入できる製品はごく一部に限られているのが現状である。今後もこのような機会を通じ、まず海外の製品やサービスを知り、有用であれば積極的に活用することで、課題を解決したり、より良いAM活用につなげられるので、このような機会を通じ、積極的な情報収集をされることをお勧めしたい。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。