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英アストンマーティンが新型スポーツカー製造に3Dプリンティング技術活用。AM部品製造はDivergent Technologiesが担当

イギリスの高級車メーカー、アストンマーティンは新型スポーツカーDBR22の製造にAM技術を活用すると発表。予定生産台数は10台と限定生産だが、車体を支持するサブフレームなどを3Dプリンターで製造する。製造を担当するのは、協力会社のDivergent Technologies 社で、3Dプリンターで造形することを前提に専用設計を実施。造形も一気通貫で担当する。多くの自動車メーカーが3Dプリンターを販売車両の製造に活用を始めている中だが、アストンーティンが安全性能に大きくかかわるサブフレームの製造にAM由来部品を採用した点に注目したい。(写真はDBR22。出典:アストンマーティン)

予定生産台数10台の限定モデル、 DBR22

英国の高級スポーツカーメーカー、アストンマーティンは予定生産台数10台の限定モデル、DBR22のコンセプトを公開した。最高出力705馬力、5.2LのV型12気筒エンジンを搭載したスーパーカーで、価格は1台あたり約150万ポンド(約2億4000万円)の予定だ。こうした少数生産の高級限定車の製造は、従来であれば協力工場と連携して、職人が手作りでワンオフ部品を製作し組み立ててきた。

DBR22では、サブフレームなどの車体支持構造の製造に3Dプリンティングを用いて製造されるという。このサブフレーム製作は、Divergent Technologies(ダイバージェントテクノロジー)が請け負った。Divergent TechnologiesがアストンマーティンのOEMサプライヤーであることが明かされたのはこの時が初めてだ。

次世代の製造技術開発へのチャレンジという意図があるとしても、3Dプリンターで部品を製造することは目的ではなく手段だ。3Dプリンターで部品を製造することが、ほかの工法よりも明確にメリットがある分野で選択されるべきだし、今回のアストンマーティンでの採用は、台数限定車に求められる製造コストと軽量化などの性能貢献(と先進性へのPRという観点)で合理性があると判断されたはずだ。 英国の名門アストンマーティンが採用したDivergent Technologies の取り組みを簡単に紹介してみたい。

DBR22のイメージ(出典:Aston Martin)

DAPSはDivergent Technologiesの「3Dプリンターでの最終部品製造プロセス」そのもの

実際に最終部品製造に取り組むためには、大きなハードルがある。その中でも大きなハードルがコストと品質の両立だろう。今回のような数量がすくない限定車においては、3Dプリンターに有利な土俵だ。金型コストや大規模な製造ラインを必要としない3Dプリンターは、コストのハードルは乗り越えやすい。一方で品質基準への適合は大きな課題だ。製造プロセス全体を通じて品質を作りこんでいく必要がある。

Divergent Technologiesは、次世代の自動車部品生産のための3Dプリンターを使ったAM工法に取り組むために、部品設計、3Dプリンターでの製造、製造後の管理までを包含した独自の製造プロセスを開発し、DAPS(Divergent Adaptive Production System)と名付けた。

製造プロセス全体から見渡すとき、品質基準への適合がゴールだとすれば、スタートは設計だ。そもそも「設計者は製造できるものしか設計しない」ので、品質基準に合格する部品を工法を意識して設計する。量産部品の場合は、製造ラインで製造可能な部品を設計するので、現在の部品設計は既存の工法を意識した合理的な形状をしているが、3Dプリンターで製造するなど他の工法で製造する際には変更をしないと合理的でない場合もでてくる。

DAPSでは設計段階で、基本となる3Dモデルに対して、部品の設計要件を数字として入力すると、材料や造形する3Dプリンターに対応した微調整を加味して形状の最適化をソフトウェアが自動で行う。 Divergent Technologiesは、 こうしたパラメトリックな自動設計への取り組みなど、AM工法に取り組むための具体的な取り組みを、製造プロセス全体にわたって組みたて、実際の最終部品製造を行うレベルまで落とし込んでいる。

「実際に必要なプロセスの実現方法」に関しては、装置メーカー、ソフトウェアベンダーなど各プレイヤーが独自にソフトウェア開発などを通じて進めているが、Divergent Technologies は自らが部品製製造を行う上で必要なプロセス全体を製造ラインに落とし込み、環境マネジメントや品質マネジメント分野でISO、AS、IATFなどの認証を取得するまでに至っているという。実際に世界的に名を知られるメーカーからの受注を獲得するなど成果を上げ始めており先行事例として注目していくべき企業となっている。

自動車生産の新たな形

DAPSが自動車部品生産に役立てられたのは、実は今回が初めてではない。

Czinger 21C(出典:Czinger Vehicles)

Divergent Technologiesの創業者であるKevin Czingerは、2019年にCzinger Vehiclesというスポーツカーメーカーも立ち上げている。Czinger Vehiclesが生産する「Czinger 21C」でも、DAPSは車両の軽量化に寄与し、重要な役割を果たしている。Czinger 21Cは2023年度第1四半期から納入される予定だ。

Czinger 21Cの背景技術として、DAPSは大きな評価を受けた。Divergent Technologiesは2022年4月に1億6000万ドルの資金を獲得し、7月には8000万ドルの与信枠(融資限度額)を得ている。DAPSによる自動車生産は着実に前進を続けていると言えるだろう。

Kevin Czingerは、今後ともDAPSを広く展開することを目指す方針を示した。現在、フレーム生産は年間100台程度だが、今後は大手自動車メーカーと協業し、2025年には年数万台の生産へと拡大する予定だ。

Divergent Technologiesは、SLMソリューションズの「NXG XII 600」3Dプリンターを活用し、航空宇宙分野へも版図を拡大している。詳しくは以下の記事をご参照頂きたい。

大手ロケット会社が金属3Dプリンターを2台導入。ニコン、ポルシェなどが利用するSLM社の3Dプリンターの魅力とは

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