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ドイツ自動車企業で900万ドル相当の3Dプリント設備導入へーデスクトップメタル

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デスクトップメタルは、ドイツの某自動車メーカーから900万ドル(日本円で約12億円:1ドル136円)の注文を受けたことを発表した。公式発表では明かされていない納入先だが、業界筋によると導入先はBMWで装置はデスクトップメタルが傘下に収めたExONEのバインダージェット方式の装置だという。納入先の真偽はさておき、パワートレイン部品の量産に金属3Dプリンターが本格的に活用されるとする本発表は、自動車業界のAM活用が着実に進展していることを改めて浮き彫りにしたといえるだろう。(写真はデスクトップメタルのサイトより)

自動車業界でのAM活用の現在

一部の用途や部品生産では、アディティブマニュファクチャリング(AM)の効果が既に実証されている。例えば、トヨタ自動車は、SOLIZEと提携し、部品復刻生産にAMを活用した。古い部品の生産ラインを維持しつづけることは現実的ではない。

当然自動車メーカーが部品のすべてを製造するわけではなく、ティア2、ティア3と呼ばれるような下請け、孫請けのサプライヤーが製造するわけだが、仕様は量産継続時にも改訂されるし生産量は変動する。終売後も10年以上の供給責任を契約書で求められているので、供給できなければ違約金が発生してしまう。部品のサプライヤーはその上年率1%ともいわれるコストダウン圧力を受けながら供給責任を果たし、次回の発注を勝ち取らなければならない。

生産量の縮小に応じて、サプライヤーはラインを組み換え別製品の製造に充てるわけだが、終売の際は、需要予測の上、部品を一定数製造の上在庫することで、部品の供給期間を乗り越える。また金型や治具など生産再開時に必要になる設備は倉庫で保管し、定期的にメンテナンスを行う必要がある。大きな負担であることは確かだ。

3Dプリンターのような汎用生産設備でオンデマンドに必要部品が製造できれば、こうしたコストを大幅に減らし、サプライヤーの消耗を防ぎながらコストダウンが可能になる。トヨタ社内では「(収支は)トントンでよいので実現するべし」と経営陣から下知が飛び進められていたともいわれる。

>>トヨタ自動車、HPの3Dプリンターを導入し、部品復刻生産へ

こうした取り組みは日産もSOLIZEと進めており、業界共通の課題の解決のために取り組みが模索されていると言えるだろう。

他にも、ドイツのフラウンホーファー研究機構では、自動車用ヒンジに3Dプリンタを活用している。こちらの事例では、鋳造や切削加工を用いた従来製法と比較し、コストを80%削減することに成功した。

>>ついに革新的な経済性を実現!80%のコスト削減に成功した3Dプリンター製自動車部品

3DプリンターやAM技術の活用範囲は自動車業界でも拡大傾向にあり、大量生産分野には向かないとされてきたAM技術ではあるが、燃費向上、騒音性能向上のために活用を模索する動きと相まって、量産分野での活用検討がなされてきたし、自動車各社がAM研究施設を設立し、最終備品への落とし込みに対して取り組みを続けているのが現状だといえるだろう。

900万ドル(約12億円)の生産AMシステム

冒頭紹介したように2022年11月にデスクトップメタルは、ドイツの大手自動車生産メーカーから900万ドルの注文を受けたことを発表した。12カ月以内に同じ自動車メーカーから同様の発注を受けているため、今回の発注は2回目だ。合計での発注額は1,690万ドル(日本円で約23億円:1ドル136円)となったということだが、パワートレイン部品のデジタル鋳造目的とされる。

世界最大の自動車メーカー、トヨタ自動車が2022年9月に発表した四半期純利益が4300億円だったことを考えれば、今回の受注の規模が決して小さな額ではないことが伺える。

BMWエンジン冷却システムに使用される部品。DMのプラットフォームによって印刷された。(出典:DM)

デスクトップメタルの公式発表ではドイツの自動車メーカーとしか言及がなかったが、金属材料に詳しい業界筋によると納入先はBMWで、装置はデスクトップメタルが傘下に収めたバインダージェット装置の老舗ExONEの装置だという。AM製造に関して取り組みがすすむBMWだが、2019年だけでも30万点の部品を樹脂・金属の3Dプリンターで造形していると発表する同社だ。BMWが2020年には1,500 万ユーロ(日本円で約21億円:1ユーロ144円)かけて竣工したAMキャンパスでは50台以上の各種3Dプリンターが稼働しており、着実に部品製造の形が変わっていることを感じさせる。BMWは取材受け入れに積極的なようで、AMキャンパスを取材した動画はyoutube上に複数発表されている。下記にCarGaregeというyoutube番組で紹介された動画を下記に紹介しておく。音声の説明がほぼないので、英語やドイツ語が苦手な方でも、ストレスは少ない動画になっているので、是非実際に3Dプリンターが稼働している様子をみてほしい。

デスクトップメタルのコメント

DMの創設者兼CEOであるRic Fulopは本プレスリリースにて以下のようなコメントを寄せた。

「AM業界は、量産用途で成長を続けており、世界で最も革新的な企業がその道を切り開いています。」

「今回の受注は、お客様が製品の製造方法を変えることに成功し、Additive Manufacturing 2.0に向けたDMのビジョンを支持するものです。」

Additive Manufacturing 2.0は、AMがこれからの製造業界で果たす役割を示す考え方だ。従来のニッチ用途を脱却し、使いやすさや導入の容易さ、大量生産能力を持ち、AMが広い分野で分散的なオンデマンド生産を可能とすることを目指す。

ドイツは、インダストリー4.0発祥の地でもある。3Dプリンターは量産に向かない装置だと長らく位置づけられてきたが、バインダージェット方式のように生産能力が高い装置が生まれ、AMならではの設計や材料を利用できることで、従来工法と役割分担しながら、製品性能の壁を打ち破る手段になる未来が夢ではなくなってきたのかもしれない。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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