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3Dプリンター製「赤ちゃんの頭のゆがみ矯正ヘルメット」の生産実績が10,000個を超えるージャパン・メディカル・カンパニー

赤ちゃんの頭のゆがみ矯正ヘルメット:クルム

東京都中央区に本社を構え、最先端の3Dプリント技術を用いて、医療領域で製品開発を行うものづくりベンチャーの株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー(以下ジャパン・メディカル・カンパニー社)が開発した赤ちゃんの頭のゆがみを矯正するヘルメット「クルム」を用いた治療者数が自治医科大学附属さいたま医療センターで100名を超えた。ジャパン・メディカル・カンパニー社の発表によるとクルムの製造実績は2022年9月時点で10,000個以上とのこと。
(画像は「クルム」の着用イメージ 出典:ジャパン・メディカル・カンパニー社)

「乳児頭のかたち外来」開設から9か月で治療者数が100名を超える

自治医科大学附属さいたま医療センターでは、生後7ヶ月未満の乳児を対象に頭のかたちに関する相談、診断と治療を行う「乳児頭のかたち外来」を2021年10月より開設した。同センターにおけるジャパン・メディカル・カンパニー社が開発した「クルム」を用いたヘルメット矯正治療者数は、開設から9か月で100名を超えたという。

クルムに限らず、ヘルメットを用いて乳児の頭のゆがみを矯正する治療が実施可能な医療施設は全国的に見ても多くない。自治医科大学附属さいたま医療センターでの治療者数が増えている背景にはそのような理由もあるようだ。

赤ちゃんの頭のゆがみ矯正するヘルメット「クルム」は累計1万個以上の生産実績

「クルム」の構造 出展:ジャパン・メディカル・カンパニー社

「クルム」の構造 出典:ジャパン・メディカル・カンパニー社

ジャパン・メディカル・カンパニー社が頭のゆがみを矯正する乳児用ヘルメットを開発したのは初めてではない。クルム開発以前から「アイメット」という3Dプリンター製矯正ヘルメットを開発・販売してきた。

クルムは、頭蓋形状矯正ヘルメット領域において大きな事績のあるジャパン・メディカル・カンパニー社が、脳神経外科、小児科、新生児科、小児外科、形成外科の医師たちの監修を受けて新たに開発したものになる。

頭のかたちやゆがみはひとりひとり異なる。そのため、クルムは3Dプリンターを用い、完全オーダーメイドで製作される。強度と軽さを両立した構造で、首が座っていない低月齢から装着可能だ。

ヘルメット内部は手術台や医療現場でも使用される特殊な低反発クッションで覆われ、頭部を包み込むように固定する。頭部変形を抑えたい部分にはフィットし、成長させたい部分には空間を持たせて成長を促す構造にすることで矯正作用を発揮する。高い通気性で、ムレにくい。ヘルメットだけでなくクッション自体も水洗いができ、常に清潔な状態を保てるのも大きな特徴だ。成長に合わせたヘルメットの調整は、医師の指導下で行われる。

赤ちゃんの頭のゆがみ矯正ヘルメット:クルム

クルムは、メッシュ型ニット帽子風のかわいらしいデザインが評価され、2022年度グッドデザイン賞にも選ばれた。治療中であっても子どものかわいい写真を撮りたいという要望にも配慮された製品となっている。カラーは3色展開。

医療用機器分野で3Dプリンターが着実に成長。一方でインプラント分野はまだ時間がかかる。

ジャパン・メディカル・カンパニー社は、凸版印刷と2021年3月に資本業務提携契約を締結。共同で頭蓋骨形状矯正ヘルメット治療を広める施策や頭蓋骨形状矯正ヘルメットの製造過程に必要な三次元計測技術を活用したスキャナー開発などを推進してきた。2027年9月までに乳幼児体内の健康状態を可視化するセンサーなどを搭載した新しい乳幼児向け頭蓋骨形状矯正ヘルメットを販売開始することを目指し、2022年9月から共同開発が開始されている。

3Dプリンターを用いたオーダーメイドの医療器具、という点では、歯科矯正分野でも大きな市場が立ち上がろうとしている。3Dプリンターで歯科矯正用マウスピースを作成する株式会社Oh my teethへは、ShareLabNEWSで過去に代表インタビューを行っているのでぜひご覧いただきたい。

>>「歯科矯正に3Dプリンター活用を!歯科矯正の民主化をめざすOh my teethの躍進」

一方でチタンによる人工骨や義歯など、3Dプリンター製部品を長期間人体に埋め込むインプラント施術分野は、まだまだ日本の医療現場では一般的ではない。生体適合性のある材料や装置、人体に埋め込む治療に用いることができる治療法に関して取り組みが開始できる環境にはあるが、世界的にも珍しい国民皆保険制度がある日本では制度適応外への治療に対して高いハードルがあるため、取り組みへのハードルがある状況のようだ。

認可外の治療法を用いた治療を行うと、関連する疾病の治療に対して医療保険の補助を受けることができなくなる。該当する施術以外に、その後の治療でも医療費補助が受けられないことで、高額な医療費負担が発生する。日本国内で提供されていない手術をうけるために海外に渡航して治療を受ける難病患者が募金を募るニュースなどが報じられることがあるが、そういった際も治療費には数千万円から数億円の費用が必要であると明かされることがあるように、高度な医療は高額なサービスだ。

より安価に良質な医療の実現は、病やケガに苦しむ多くの人を助けることができる。インプラント手術なども含めて、より広い領域で3Dプリンターが活用される未来が早くくることを願っている人は多いだろう。

医療分野における3Dプリンター活用については、以下のリンクにまとめてあるので併せて参照してほしい。

>>医療分野における3Dプリンタ―の活用事例

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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