GE、電気自動車などに使われる3Dプリンター製熱交換器を開発
2019年の初めから、GE Researchは国防高等研究計画局(ARPA-E)主催のプログラムの下、よりクリーンで効率的な発電を可能にするコンパクトな熱交換器を目指し開発を進めてきた。
今回、同社は3Dプリンターで造形した熱交換器が、200°C(約400°F)を超える温度で正常にテストされたことを発表した。普及が広がる電気自動車に必要な熱管理という概念および今回のGE Researchによる熱交換器についてお届けする。(写真は、GE Researchの熱交換器。GE Research公式サイトより引用)
電気自動車の普及には、特に熱管理が重要
ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、全体像の把握のために、今回の熱交換器の説明に入る前にそもそもの熱管理という概念について解説する。
今日、電気自動車(EV) の普及が広がっている。しかし、エンジン効率を向上させていくと、走行エネルギーに対する空調エネルギーの割合が増して実用燃費が悪化するなどの課題がある。
EVとなると、その傾向はさらに加速する。車の全消費エネルギーに対する冬季の暖房エネルギー等の割合は50%以上になる場合もあり、走行に利用できるエネルギーが減り実走行距離が大きく低下する恐れがある。
そこで役立つのが、熱交換器等を実現手段とする熱管理という概念だ。
熱管理とは?
熱エネルギーを有効に利用するための技術。
熱エネルギーを利用するにはかならず低温の熱源に熱を流す必要があり、高温の熱エネルギーも利用のきわめて困難な低温の熱エネルギーに変化する。この低温の熱エネルギーはいくら大量にあってもそのままでは利用がむずかしいので、高温の熱エネルギーの有効な使用は燃料などの高温熱源の使用量に関係し、工業製品ではコストに影響を与える。
工業製品などでは燃料費の占める割合が大きく、熱エネルギーを有効に利用できるか否かは企業の存続に影響を与えるほどで、熱管理が重要になってきている。(コトバンクより)
熱交換器とは?
温かい流体から冷たい流体へ熱を移動させる(熱交換させる)機器。
コンピューター、自動車のエンジン、飛行機、その他のさまざまな電子機器など、私たちの日常生活において広く使われている。
熱管理の例として、米Tesla社は2020年より「Octovalve(オクトバルブ)」と呼ばれる熱マネジメントシステムの”司令塔”を、「モデルY」を始めとした自社のEVに搭載している。以下の動画で詳しくまとめられているので、ご興味のある方はぜひご覧いただきたい。
EV普及にあたっては、この熱管理が重要になり、今後ますますその市場は拡大すると予想されている。REPORTOCEANが今年発行したレポートによると、自動車用の熱交換器市場は、2020年から2027年において、6.71%を超える健全な成長率で成長する予想。
高圧、高温、および超小型の熱交換器を目指して
GE Research、オークリッジ国立研究所(ORNL)およびメリーランド大学のプロジェクトチームは、発電所やジェットエンジンにおけるよりクリーンで効率的な発電を目的に、3Dプリンターで造形した熱交換器の開発を進めてきた。今回、彼らは200°C(約400°F)を超える温度で正常にテストされたことを発表した。
同熱交換器気は、従来の最先端のデバイスよりも高く、プロジェクトの目標である900°C(1,652°F)を満たしている。大規模な発電や飛行での炭素排出量の削減に役立つだけでなく、効率も向上させる可能性があるとのこと。
3Dプリントプロセスと設計ツールによってもたらされる設計の自由により、以前は不可能だった新しい熱交換器の設計をより迅速に開発、構築、テストできるようになりました。
GE Research リードエンジニア LanaOsusky氏
リードエンジニア LanaOsusky氏によると、同プロジェクトチームは、2022年第1四半期のプロジェクトの終わりまでに最高の温度と圧力(1,650°Fおよび3,600 psi以上)での挙動をゴールに、3Dプリンティング製熱交換器のプロトタイプを構築する予定。
GE Researchについて
GEの研究開発部門。1,000人以上の科学、工学、マーケティングのマインド(500人以上の博士号)から成る世界クラスのチームを抱える。
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3Dプリンタ―の”先進っぽさ”を感じさせる作りに男心をくすぐられる毎日。さまざまな業界にて活用されるアディティブ・マニュファクチャリングの今をお届けします!最近のニュースは、鳥を飼い始めたこと。