世界初の3Dプリンターによる研究施設がUAEに誕生 | 日本と世界の市場規模を比較
ドバイ政府は、ドバイの首長であるシェイク・モハメド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム氏が掲げる、他の都市よりも10年先を行くグローバルリーダーになることを目標に掲げた「ドバイ10Xプロジェクト」の一環として、3Dプリント技術で建設された世界初の研究施設を設立した。
この研究施設は、世界最大のメガ・ソーラーパーク「Mohammed Bin Rashid Al Maktoum Solar Park UAE」内にオランダの建設用3Dプリンターを用いて設置された。施設ではエレクトロニクス、ソフトウェア、メカニック、プロトタイピングの4つの分野が研究される。
施設内にはMarkforged社の「Metal X」3Dプリンターが設置されており、発電や送電、配電部門の試作品やスペアパーツの生産、在庫品のデジタル化支援など 低コストでの運用とリードタイムの削減、さらに業務の効率化と生産性の向上を目的に活用される。さらにはAM(アディティブ・マニュファクチャリング)の技術的ソリューションやトレーニング、知識の共有、研究開発の促進に役立てられる。
施設の運営元はドバイの電力水道局(DEWA:Dubai Electricity and Water Authority)で、4つの分野の研究への投資を増やすことでさまざまな分野の生産能力と運用能力の強化を可能にさせることを狙っている。
すでに同施設のエンジニアが、ソーラーパーク内の太陽光発電パネルの性能を低コストでテストできるロボットの社内開発に成功しており、太陽光発電パネル上で日光がどのように乱反射するか計算する際に役立つ「アルベド測定」に関する2つめの特許も取得済みだ。この特許を利用した自立走行型の自動運転自動車も5台開発・製造されている。
2025年の世界の3Dプリンター市場規模予測
日本でも徐々に市場拡大している産業用3Dプリンターの世界だが、世界規模で見るとその市場規模はさらなる拡大を見せている。
株式会社日本能率協会総合研究所によると、2019年度に1,300億円規模だった世界の金属3Dプリンター市場は、2025年にはほぼ倍の2,500億円規模にまで達すると予測されている。
金属3Dプリンターでは設計データをもとに、切削や鋳造などの加工が困難な複雑な形状のものでも部品を組み合わせずひとつの造形品として一体成型が可能だ。すでに航空宇宙分野、自動車分野、医療分野などで活用が進んでいる金属3Dプリンター、今後は付加価値の高い製品を中心とした製造業での活用に期待が寄せられている。
現在の3Dプリンター市場は欧州と北米が中心で、世界における日本市場のシェアは10%に満たない。しかし経済産業省主導のもと始まった産官学連携プロジェクト「TRAFAM」の実施を後押しに、今後は日本でも実用化の加速と市場の拡大が期待されている。
日本の3Dプリンター活用支援団体も
日本の3Dプリンタービジネスを後押しする存在として、3Dプリンター技術研究所(運営:株式会社マイクロジェット)がある。同研究所では3Dプリンターの販売や造形サービスをはじめ、プリンターの開発支援や導入コンサル、セミナー開催なども行っている。
今後の日本の産業3Dプリンター市場への期待
日本ではここ数年で開発部門も活発になってきた。多くの国内工作機械メーカーが金属3Dプリンター事業に乗り出すなかで、キヤノンや東芝、富士通といった名だたる電機メーカーも参入している。自社開発だけでなく、他社との共同開発のような横連携の動きも生まれており、今後は国内でも開発競争の激化が期待できる。
政府としても3Dプリンター市場への期待は大きい。金属3Dプリンター業界を牽引する北米のメーカーが主要な技術特許を握っているなか、経産省は前述のとおり技術研究組合「TRAFAM」を設立し、海外メーカー製を上回る装置の共同開発を実施してきた。5年間のプロジェクトで3Dプリンターに関わる技術開発は概ね計画通り達成され、開発した大変の装置がすでに実用化、市場投入されている。
今後の日本市場がどこまで拡大し、世界に伍する存在となっていけるか。大きな期待を胸に、ShareLab NEWSではその動向に関するニュースを日々配信していく。
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