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建設現場に即した3Dプリンターを開発。建設土木分野における国内注目のスタートアップ、ポリウス

ShareLab編集部は、その大きな可能性からさまざまな建設業界での3Dプリンティング活用に関連するニュースをお届けしてきた。

今回は、昨年に建設・ハードウェア・ソフトウェア・マテリアル・事業開発などに専門性を持つメンバーによって設立された、国内注目の建設用3Dプリンター開発を行うスタートアップ企業、株式会社Polyuse(以下、ポリウス)ついて、同社の共同創業者でありCBO(最高ブランディング責任者)の大岡航氏にインタビューさせていただいた。建設業界への想いや京都の老舗企業との共同実証実験の取り組みなどを中心にその魅力をご紹介する。(写真は、ポリウスより提供)

建設をテクノロジーの力でアップデート―ポリウスについて

閉鎖的な土木分野をテクノロジーの力で面白く―業界課題に対する解決の想い

建設業界と言えば、国内でも指折りのオールドな業界であり、下請構造が重なり複雑な業界構造をイメージされる方も多いだろう。またそのイメージも3K(きつい、汚い、危険)という言葉があるほど、ネガティブな印象がつきまとう。ポリウスは、そのような業界に対して当初どのような課題感を抱いていたのであろうか。

「ポリウス立ち上げのきっかけとして、自分だけの家を安く作りたい、また、皆様のこんな家に住みたい!という純粋な欲求に答えられるような社会にしたい、という想いがありました。しかし、業界知識を蓄えていく過程や建設従事者の方々からお話を伺っていく中で、新築から改修への需要変化や人材不足の業界の構造的問題を知り、そのような状況では、『家を何度も建てかえようと叫んだところで、建設業は疲弊するばかりではないか。』と思い、従来の建設業界にはなかった革新的な技術であるAM技術アディティブマニュファクチャリング)や3Dプリンティング技術などを用いて、建設業界の根本的な課題から解決していこうという結論に至ったのです。」(ポリウス共同創業者、CBO 大岡氏)

また建設業界の中でも土木分野に敢えて挑んでいるポリウス。彼らはそこにベンチャーだからこそ提供できる価値を見出している。

「業界のネガティブなイメージなど皆様が建設業界に対し抱かれるであろうイメージへのアプローチはもちろんのこと、最初に敢えて土木分野にチャレンジしようと思った理由として、土木という一見馴染みの少ない分野だからこそ逆に業界をもっと魅力的に発信できるのではないかという想いがあります。仕事の受け渡しなどで、信頼関係が重視され比較的閉鎖的な土木分野では、良い技術・価格メリットがあっても他業種は入りにくい現状が今までありました。そんな分野に対して、技術を持っているベンチャーと建設会社がコラボする私達の動き方で、近年他業界でも推進されていますDX化の流れが建設業界でも会社規模問わずに進め、1つの波にすることができるのではないかと考えています。」(ポリウス共同創業者、CBO 大岡氏)

建設現場の人が使えるものを目指す―他企業にはないポリウス独自の強み

ポリウスは、ハードウェア面では一般的なアーム型ではなく門型の3Dプリンターを扱っている。またソフトウェア面は、関係企業との関係から詳細を伺うことが叶わなかったが、安全かつシンプルで実用性のある機能を提供している。後ほどポリウスの建設用3Dプリンターを用いた実証実験についてもご紹介するが、開発・販売だけでなく、導入支援も行っている。またスタートアップ企業だからこその、海外メーカーや大手ゼネコンにはないスピード感や細かい修正ができるのもポリウスの強みだ。国内市場における同業社についても広く伺うことができた。

「建設用3Dプリンターのソフトウェアも開発しています。ハードウェアではなくとも、建設業界は相対的にソフトウェア開発が弱い側面もある上、ベンチャー企業では弊社が関わる領域全てを内製化する企業はまだそれほど多くないのではと個人的に感じています。もちろん、中小の建設会社でソフトウェア開発を内製化している企業様もいらっしゃいますが、ハードウェアとの運用面や素材面も含めて、どうすれば良いか分からないので弊社にご連絡いただくこともあります。大企業に対してだとコストやスケジュール面等でなかなか連絡を取って先に進めづらいかもしれませんが、私たちは安く・早く・安全に建設現場で使えるかどうかにフォーカスしてご支援することに注力しています。」(ポリウス共同創業者、CBO 大岡氏)

建設用3Dプリンターといえば、中国におけるコロナ感染者用病棟の事例など、海外での活用が進んでいる印象があるが、海外の建設用3Dプリンターと比べても、日本独自の建設現場の環境に即した建設用3Dプリンター、ソフトウェアや専用素材などを提供できるといった点でポリウス独自の強みがある。

「国内と海外では現場環境が異なる点があります。国内の建設現場は、都市部だけでなく、山や海・川、地下といった場所でも建設作業も多々あります。このような現場は綺麗に整備されていない場所も多くあり、大きなマシンは運搬効率が悪いのが現状です。また海外の製品はエネルギー消費量が多いため、別途で発電機器を用意する必要があったり、別途で管理する人材が必要であったりと、国内の建設現場の方から見て、コスト感が合わない可能性もあります。私たちの建設用3Dプリンターは、素人でも30分ほどで組み立てが可能であり、重要なパーツはスーツケースに収まるくらいの大きさです。建設現場の既存の資材を使うこともでき、コストも三百万程度、今後はそれ以下のものを目指しています。安いけれども、性能を満たしており、かつ使いやすいマシンがポリウスの最大の特徴だと考えています。」(ポリウス共同創業者、CBO 大岡氏)

各建設現場の方の視点に立つと、実用化に耐えうる機能やサービス、またそれを導入する際のスピード感は、従来のコストや手間に日々悩ませている中で頼もしい限りであろう。

今後の取り組みと目指す姿

建設現場の方が答えを持っていることが多い―老舗建設企業との実証実験

現在までポリウスは、京都府に拠点を置く老舗建設企業である吉村建設工業との共同実証実験を進めてきた。吉村建設工業は、大林組、竹中工務店など一般的な大手ゼネコンとは異なり、地域密着型の施工を行う地域ゼネコンである。造成・上下水道・道路・鉄道・河川・建築などさまざまな分野で事業展開しており建設現場での知見が豊富にあるため、今回の実証実験においてポリウスにとって最適なパートナーであった。

実証実験は、今年8月に実施され、民間企業、資材会社、素材会社、大学教授などさまざまな関係者が見学に集った。6日間に渡って実施され、モルタルを用いた建設用小型3Dプリンターを用いながら、集水桝(道路表面に溜まる雨水の排水などを目的に設置される)を造形・建設を行った。見学日には、民間の鉄道会社、水道局、素材会社、造園会社、ハウスメーカーの担当者などさまざまな業界関係者が訪れ、建設業界の中でも注目を集めた実証実験であった。

実証実験の様子①(ポリウスより提供)

実証実験では、建設用3Dプリンターの運送、現地での組み立て、構造物施工、養生、運搬設置、埋没の全工程が実験対象であり、ポリウスにとっても建設用3Dプリンターの可能性を探る実験であった。また同実験の位置付けについても、大岡氏から伺うことができた。

「今回の実証実験は、他の建設会社と全ての工程までを実施した第一回目の実験となります。建設用3Dプリンターを用いた実験はポリウスの開発拠点で既に何度も検証済みであったので、実証実験では建設現場の方が違和感無く使えるかどうか、イメージのずれがあるのであればそれは具体的にどれほどかを見ることが主眼でした。実機を現場に運搬し、組み建て、素材の準備を行い、実際にソフトウェアのタッチパネルを使って構造物を施工し、クレーンで運搬し、埋設する作業まで一連の流れを建設の現場監督の方などがイメージできるか。これはポリウスのメンバーもまだ十分には分かっていないことでした。」(ポリウス共同創業者、CBO大岡氏)

このような位置付けにあった実験だったからこそ、ポリウスの最新技術が建設現場の技術者視点から見た時の課題が分かり、大きな成果が得られたとのこと。

「成果は百に収まりきらないぐらいあったと感じています。やはり、建設現場の方が答えを持っていることが多いと感じました。例えば、ポリウスの建設用3Dプリンターについて電力や防水、運搬効率化についてさまざまな機能を検討し、取り入れていましたが、『この機能があれば十分。ここまでの機能は充実してなくても十分使えるよ』といった現実感のあるお声を建設現場の吉村建設工業の方から頂きました。こういった建設現場の価値観は簡単には得られるものではなく、建設現場のベテランの方だからこそ持ち合わせている答えは多いな。ということが分かりました。建設現場について、まだ分かり切っていないポリウスだけでは得られなかった建設現場の知見だと思います。次の段階としては、弊社の建設用3Dプリンターの早期適応に向けて既に動いています。」(ポリウス共同創業者、CBO大岡氏)

実証実験の様子②(ポリウスより提供)

3Dプリンティング技術など多くのテクノロジーノウハウには長けているが、現場の相場観が積みきれていないポリウスと建設現場での施工などに関する知識を豊富に持つ建設現場技術者。お互いの目線を合わせながら、建設現場への適用を試みた大きな意義のある実証実験だったと言えるだろう。吉村建設工業としても、建設現場への適応はまだまだこれからだが実用への期待感が高まった、とのことで今後の動きに大きな期待ができる。

公共構造物の建設を3Dプリンティング技術で

実証実験を始め、順調に土木分野における経験・知識を蓄え続けているポリウス。今後はどのような姿を目指しているのだろうか。

「現在はさらなる技術・事業開発に向け資金調達に取り組んでおり、全国様々な規模の建設企業のパートナーを増やすことも検討しています。またポリウスとして、今後は土木領域にとどまらず分野を拡げ、外構・エクステリア・インターロッキングや大型構造物にも取り組んでいきたいです。ただ直近は土木構造物(集水桝や側溝・小型擁壁等)の構築、また性能を向上し、制作過程の効率化を実現したものについて、来年2月に再度行う実証実験に向け固めていく予定です。その後は、構造物の応用を進め、街灯・看板・大型モニュメント・大型の構造物なども目指していこうと考えています。日々のニュースで、大型の構造物が建設用3Dプリンターで作られたとの話をよく聞きますが、実際にはまだまだ人の手が介在していたり、使用できる建設現場が限定的であったり、実社会で使える性能やコストを度外視していたりすることもあります。また一般の建設現場の方々にとって必ずしも使いやすい要件とはなっていないことも多々あります。ポリウスとしては、各社パートナー企業様との協議を通して、特に現場の建設従事者が使えることを意識したプロダクトを目指しています。そのため、大型構造物やモニュメントなどを建設用3Dプリンターで用いて建設するITクリエイティブ企業ではなく、土木分野の課題を堅実に解決する現場感に即した企業として進んでいきます。」(ポリウス共同創業者、CBO 大岡氏)

ポリウス設立のきっかけが、人々の住む家の選択肢を増やすことであった。その想いを内に秘め、建設という複雑で土木だけでなく幅広い分野を見据え続けているということではないだろうか。なお、インタビューの中でお見せいただいた今後企業としてどのように発展していくかという同社のサービスロードマップも以下にご紹介する。

今後の構造物の展開パターン。直近は土木構造物に取り組みつつ、今後は構造物の応用を進め、街灯・看板・大型の構造物なども目指していくとのこと(ポリウスより提供)

ポリウスの企業概要

建設業界をテクノロジーの力でアップデートすべく、シンプルな操作で安全かつ実用性のある技術開発から建設現場への導入支援、また建設現場に必要な機能やサービスの開発・運用まで専門チームで一気通貫で取り組むベンチャー企業。

現在は、土木建設領域において人材不足やコスト高騰などの業界課題に対し、先端テクノロジー技術を活用し、より効率的かつ本質的な課題解決に向けて技術・事業開発に注力している。

社名株式会社Polyuse / Polyuse Inc.
所在地東京都港区2-2-15 浜松町ダイヤビル2F
設立2019年6月
共同創業者岩本卓也、伊勢崎勇人、大岡航、松下将士
事業内容 建設・建築領域での3Dプリンティング技術開発及び活用、3Dプリンターハウスの開発
企業サイトhttps://peraichi.com/landing_pages/view/polyuse 

最後に、大岡氏からお伺いした話の中で印象的だったことを一つご紹介させていただく。ポリウスのメンバーのご紹介を頂いていた際、過去に洪水や地震など大きな災害を肌身で経験したことがあるメンバーや大岡氏の知人が何人かいると、お話いただいた。彼らに共通して言える被災時に困ったことは、インフラや道路が冠水等を起こして、公共施設が正常に機能しなかったことだという。食料や寝床はもちろん困りごとの一つだが、全てのものを供給するインフラが根本にあるということだろう。そんなわれわれのライフラインであるインフラに何かがあった時に駆けつけるレスキュー隊でもある建設従事者の方々を、3Dプリンティングの技術を用いて支援する、それがポリウスである。

3Dプリンティングの技術を活用しているからこそ実現できるポリウスの価値は、今回の実証実験のようにパートナー企業があってこそ建設現場で活かされるものになる。ポリウスとしても今後もさまざまなパートナーとの動きがあるとのことなので、今後の動きにも注目していきたい。

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