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日本の3Dプリント住宅メーカーが世界5カ国で3Dモデルの並列生産に成功! ― セレンディクス

Sphere

次世代の住宅開発に取り組む日本の3Dプリンター住宅メーカー、セレンディクス株式会社は海外と日本からの相談件数がすでに1000件を超え、初回販売戸数である6棟をすでに完成させている。こうした反響を受け、セレンディクスは世界5カ国の3Dプリンターメーカーと連携し、3Dプリンター住宅の部材を同時に造形する並列生産に取り組み、世界初となる五か国同時生産に成功した。300万円以下で住宅を提供するというセレンディクスの野心的な試みは着実に具現化しつつある。

3Dプリント住宅でセレンディクスが目指す新しい住宅との関係

国内の一般的な住宅ローンは30年と長く、完済時の平均年齢は73歳となる。人口が減少し、地方部の空き家率が20%を超え、住宅が老朽化している一方で、日本人の4割は一生住宅を所有しない。仕事や家庭環境にも流動性が高まる昨今、従来の新築住宅をローンで買うという行動様式は大きな転換点にある。こうした背景を受けて、セレンディクスが目指すのは、(1)施工時間が24時間、(2)車の1/10の価格、(3)人の作業を必要としない、3つの新しい特徴を備えた3Dプリント住宅だ。これからの日本そして世界を生きる人たちが、気軽に家を持ち、施工業者へも負担が少ない家を目指すヴィジョンには多くの期待が寄せられている。

「家を24時間で創る」を実現 – セレンディクス・パートナーズ

セレンディクスの3Dプリント住宅「スフィア」

セレンディクスは、住宅建設に3Dプリンターを用いることにより、これまでとは全く異なる住宅の形を提示してきた。SFの世界から飛び出してきたような同社独自デザインのスフィアは現行の建築基準法の範囲内でも建設できるパッケージとして設計され、24時間以内に狭小住宅(タイニーハウス)が手に入るということで、大きな衝撃を与えた。

そしてより大きなパッケージとして慶応技術大学と3Dプリント住宅「フジツボモデル」を開発。一般住宅としても対応可能な住宅を3Dプリンターで自動化することで、大幅なコストダウンを行うことが可能であることを示した。

慶応義塾大学と共同で作る3Dプリント住宅「フジツボモデル」-セレンディクス

そんな同社の取り組みは世界中で大きな反響よび、すでに1000件以上の問い合わせが寄せられているという。タイニーハウス型のスフィアは、初回販売として6棟販売済みで、すでに完成している状態だ。非常に好調な滑り出しを見せている中、セレンディクスは、独自に3Dプリント住宅用の保険商品の開発にも乗り出すなど、実際に住宅流通を可能にするための仕組みづくりに余念がない。

並列生産を協力工場と行う取り組みで事業スケールの急拡大が可能に

そして今回セレンディクスが取り組んだのが、サプライチェーンの整備だった。世界5カ国(日本、中国、韓国、オランダ、カナダ)の3Dプリンターメーカーと連携し、セレンディクスが保有する住宅用建材のデジタルデータを同時造形する並列生産にチャレンジした。

セレンディクスの日本最大級を誇る住宅用3Dプリンター

グローバルな並列生産を行うことができるということは、大量の需要が寄せられた際も、大きな工場設備への投資がなくても、生産量を拡大できる。セレンディクス社によると世界5カ国での住宅用3Dプリンターによる同時出力は世界初の事例となるようだ。

またデータを共有するだけで、世界中で3Dプリントを造形今まで国土や風土と密着していた住宅という産業が、本当の意味でグローバル化することも意味する。デジタルデータを世界各地で同時に出力できるようになれば、これまでとは全く違う住宅メーカーの形が見えてくる。例えば、3Dプリントデータの設計会社が住宅デザインを発表すると、その瞬間から世界中の3Dプリンターへデータが転送され、すぐにプリント開始、ということが可能だ。日本国内でも3D住宅の価格は低下し、完成までの期間は大幅に短縮されるだろう。

セレンディクスのオープンイノベーションを支えるプラットフォーム構想

またセレンディクスは、デジタルな住宅の設計も世界で同時に行おうとしている。スフィアのような次世代の新しい住宅開発を目指す独自のコンソーシアムを組織し参加する企業は、全世界で140社を超えた。セレンディクスでは、これら企業と水平分業を行っている。各々が得意とする分野はその企業に任せ、課題とツールを共有するオープンイノベーションは、これまでにない開発スピードを生み出し、高度な設計技術と高い柔軟性を併せ持つ。

こうしてみるとセレンディクスが目指すのは、住宅メーカーではなく、ライフスタイルが具現化した住宅の設計図と物理的に3Dプリンターを保有し施工する新時代の住宅業者をつなぐプラットフォームビジネスであることがわかってくる。いままで住宅メーカーの顧客でなかった層を開拓し、いま住宅メーカーが抱える現場職人の老齢化と人手不足を解決するという意味では、従来の住宅メーカーと競合関係にありながらも協力関係に立ちうるamazon型のビジネスモデルだと言えるだろう。

こうしたオープンイノベーションに舵を切ることができたのも、「デジタル」に特化した結果だ。物理的な距離を超え、瞬時に共有されるデジタルデータは、世界中の企業を結びつけ、水平分業を可能にした。

2023年の高島屋福袋に「Sphere」

こうしたセレンディクスの取り組みに注目したのが有名百貨店の高島屋だ。毎年トレンドになるアイテムをチョイスし話題性を喚起する時代を象徴する福袋になんと3Dプリント住宅がチョイスされた。高島屋では2023年1月2日の初売りに、セレンディクスの作る3Dプリンターハウス「Sphere」の福袋販売を企画しているという。

Sphereイメージ(出典:Clouds Architecture Office)

本企画では、福袋応募者の中から抽選で当選者が選ばれる。当選者には1月中旬までに連絡が届き、設置場所などを相談の上、2月中に納品される予定だ。 税込み価格は330万円で、1棟限定となる。

約10平米、球形の外観を特徴とするSphereは、自分だけの趣味の離れ小屋として、グランピングや書斎として活用できる。電力供給は可能だが、上下水道の工事には対応していない。また、クレーンの搬入ができない場所には設置できないため、応募の前には注意が必要だ。タイニーハウスらしい条件だが、オフグリッドな生活にあこがれる富裕層には格好のアイテムだと言えるだろう。

2025年の大阪万博出展や特区での3Dプリント住宅建設などを掲げたセレンディクスは、有言実行で着実に産業界へ新風を吹かせている。国内、及び海外でも、3Dプリンターとオープンイノベーションを活用したプラットフォーム事業を展開することで、一気にグローバルな住宅データ流通事業を立ち上げようとするセレンディクス。私たちが3Dプリンター住宅を気軽に購入できるようになる時代は、もうすぐそこまで来ているようだ。

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