広島県で3Dプリンター住宅の実証実験が成功 ― セレンディクス社
2024年5月27日、広島県のベイサイドビーチ坂で行われた3Dプリンター住宅の実証実験が成功した。特殊なコンクリートを使用し、鉄骨や鉄筋を使用しない新しい建築工法が試され、広島県の「ひろしまサンドボックス」プロジェクトの一環として、将来的な建築コスト削減と効率化を目指す取り組みである。(上部画像はセレンディクス社による3Dプリンター住宅。出典:セレンディクス社)
セレンディクス社の3Dプリンター住宅
セレンディクス社は、「車を買う値段で買える家」の開発を進めている企業である。2022年3月には愛知県で3Dプリンターを用いた住宅の実証実験を行い、わずか23時間で住宅を完成させた。この実証は国内外で大きな注目を集め、初回販売の6棟が即完売した。この成功を受け、同社には国内外から約3,000件もの予約や問い合わせが寄せられている。セレンディクス社の取り組みは、3Dプリンター住宅の普及と新しい建築技術の発展に大きく貢献している。
3Dプリンター住宅とは、3Dプリンター技術を用いて建設された住宅のことである。従来の建築方法とは異なり、3Dプリンターを使用することで材料を積層して形状を作り上げる。人手を大幅に削減できるだけでなく、建設コストも抑えられる特徴があり、一般的にはコンクリートを使用するが、最近では土や他の環境に優しい材料も利用され始めている。この技術により、迅速な建築が可能となり、わずか数日で住宅を完成させることもできる。さらに、3Dプリンター住宅は設計の自由度が高く、カスタマイズされたデザインも容易に実現できる点が大きな魅力である。セレンディクス社の3Dプリンター住宅は過去にシェアラボでも何度か取り上げているが、その中でも2022年当初に取材させていただいた記事を合わせてご覧いただきたい。
実証実験の背景と目的
広島県で行われた3Dプリンター住宅の実証実験は、地域の課題解決と新たな建築技術の普及を目指して実施された。この実証実験の背景には、従来の建築方法が抱える課題、すなわち高コストと人手不足がある。これらの問題を解決するために、3Dプリンター技術を活用し、効率的で経済的な住宅建設を実現することが目的で、さらに環境負荷を低減し、持続可能な社会を実現するための一歩として、この技術の導入が期待されている。今回の実証実験では、特殊なコンクリートを使用し、将来的には鉄骨や鉄筋を使わない工法の確立を目指している。
実証実験の詳細
実証実験は、2024年5月27日に広島県のベイサイドビーチ坂で行われた。この実験では、特殊なコンクリートを用いて3Dプリンター住宅を建設し、鉄骨や鉄筋を使用しない工法の実現可能性を探る。従来の建築方法では、鉄骨や鉄筋の組み立てが自動化できず、コスト増加の大きな要因となっていたが、今回の実験では、一般のコンクリートと比較して8倍の強度を持つ特殊なコンクリートを使用し、迅速かつ効率的な建築を目指した。また、この実証は「ひろしまサンドボックス」プロジェクトの一環として行われ、新技術の実用化に向けた重要なステップとなった。
ひろしまサンドボックスプロジェクトとは
ひろしまサンドボックスプロジェクトは、広島県が主導するデジタル技術や新ビジネスモデルの実証実験を支援する取り組みである。このプロジェクトは、地域の産業や社会の課題解決を目指し、新たな技術やサービスの実用化を促進することを目的としている。ひろしまサンドボックスでは、さまざまな企業や研究機関が参加し、先進的な実証実験を通じて革新的なソリューションを生み出している。今回の3Dプリンター住宅の実証も、このプロジェクトの一環として行われ、地域の持続可能な発展に寄与している。
3Dプリンター住宅の未来と課題
3Dプリンター住宅は、建築コストの削減や効率的な施工が期待される一方で、いくつかの課題も抱えている。まず、材料の選定や使用に関する技術的な課題がある。特に、環境に配慮した材料の開発と普及が重要で、現行の建築基準法に適合するための規制や認証の整備も必要となる。さらに、3Dプリンター技術の普及には、専門知識を持つ人材の育成や、技術の標準化も不可欠である。しかし、これらの課題を克服することで、3Dプリンター住宅は未来の建築技術として大きな可能性を持っている。
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