Nano Dimension、MarkForgedをStratasysに4,250万ドルで売却—2026年後半に完了予定

イスラエルのNano Dimension Ltd.(Nasdaq: NNDM)は2026年5月27日、完全子会社のMarkForged, Inc.をStratasys Ltd.(Nasdaq: SSYS)に4,250万ドルの全額現金取引で売却する最終契約を締結したと発表した。同日、Stratasys側も買収を発表するプレスリリースを公開している。

取引の概要

Stratasysはすべての発行済MarkForged株式を取得する。ただし、MarkForgedの金属バインダージェット(Metal Binder Jetting)製品ラインはNano Dimensionが引き続き保有する。具体的には、金属フィラメント押出方式のMetal XやソフトウェアプラットフォームThe Digital Forge、連続炭素繊維FFF製品群はStratasysに移管される一方、スウェーデンのDigital Metal買収を起源とする高精度量産システムPX100(バインダージェット方式)はNano Dimensionが手元に残す形となるようだ。

取引完了は2026年後半を予定しており、規制当局の承認および慣例的なクロージング条件の充足が前提となる。

MarkForgedの2025年売上は金属バインダージェット製品ラインを含め約7,000万ドルとのことだ。(出典:Stratasys SEC Form 6-K、2026年5月27日

Nano Dimension側の位置づけ

Nano DimensionはこのM&Aを、かねてより公表している3段階戦略計画における施策として位置づけている。同社プレスリリースによれば、本売却は「Phase 2(製品ラインの収益化・バランスシート強化)の一部」であると同時に、「Phase 3(長期株主価値最大化のための戦略的選択肢評価)の進捗を加速するもの」としている。3つのフェーズは順次ではなく並行して実行されている。

  • Phase 1:業務効率化とコスト削減による現金消費の圧縮
  • Phase 2:製品ラインの収益化によるビジネス簡素化とバランスシート強化
  • Phase 3:長期株主価値最大化のための戦略的選択肢評価と最適な道筋の選択

Nano DimensionのCEO David Stehlin氏は「この取引により、年間キャッシュバーンを直接・間接コストの削減を通じて約1,500万ドル圧縮できる見込みだ」とコメントしている。(出典:Nano Dimension SEC Exhibit 99.1、2026年5月27日

Stratasys側の位置づけ

Stratasysは本買収の戦略的意義として次の点を挙げている。

  • MarkForgedの連続炭素繊維(Continuous Carbon Fiber)技術により、航空宇宙・防衛向けの軽量・高強度部品製造能力を強化
  • MarkForgedのソフトウェアプラットフォーム「The Digital Forge」(シミュレーション・パーツ管理・自動印刷最適化)との統合による製造ワークフロー強化
  • 高性能ポリマー・金属フィラメントのラインアップ拡充
  • 販売パートナー・リセラーネットワークの統合によるクロスセル機会の創出

Stratasys CEOのDr. Yoav Zeif氏は、防衛・航空宇宙分野での顧客需要拡大に応えるための重要な施策であり、MarkForgedのパートナーネットワークを活用することで収益成長を即座に加速できるとの見方を示した。

同社は取引完了後1年以内に粗利益率の改善、コストシナジーの実現、調整後EBITDAのプラス貢献を見込んでおり、クロージング後に業績ガイダンスを更新するとしている。(出典:Stratasys SEC Form 6-K、2026年5月27日

編集部コメント

MarkForgedはNano Dimensionが2025年4月に約1億1,600万ドル(1株5.00ドル)で買収を完了した企業であり、今回4,250万ドルでの売却は大幅な損失売却となる。なお買収契約自体は2024年9月に発表されており、規制審査やDesktop Metalとの訴訟問題による遅延を経て2025年4月に決済が完了した経緯がある。

Nano Dimensionは、旺盛なM&Aを続けた後に経営陣の刷新と方針転換を経て、保有資産の整理・選択と集中を進めている。なおMetal Binder Jetting(PX100)の保持は、Desktop Metal傘下のExOneと合わせてバインダージェット領域を戦略的中核と位置づけてきたNano Dimensionの方針と整合する。Markforegedの強みである剛性が求められる1メートルまでの部品製造能力はAM業界の中では強い競争圧力にさらされている分野。本来の強みである電子部品製造とシナジーの強いセラミックス・金属による小型部品の高精度量産に資源を集中させる判断で生き残りをかける意思が垣間見えた。

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