Stratasys、Markforgedを約64億円で買収へ 航空宇宙・防衛向け3Dプリント事業を強化

2026年6月4日
出典:Stratasys
出典:Stratasys

Stratasysは2026年5月27日、Nano Dimension傘下のMarkforgedを買収する最終契約を締結したと発表した。買収額は4,250万ドル(1ドル150円換算で約63億7,500万円)。取引は規制当局の承認などを経て2026年後半に完了する見込みだ。

Markforgedは連続炭素繊維(Continuous Carbon Fiber)技術を活用したFFF方式の3Dプリンターで知られ、航空宇宙、防衛、自動車分野を中心に高強度部品の製造ソリューションを展開している。今回の買収により、Stratasysは防衛・航空宇宙市場における競争力をさらに高める狙いだ。

連続炭素繊維技術を取り込み製品群を強化

Markforgedは2025年に約7,000万ドル(約105億円)の売上高を計上した。なお、この数字には金属バインダージェッティング事業も含まれるが、同事業は引き続きNano Dimensionが保有する。

Markforgedの主力技術である連続炭素繊維強化造形は、軽量でありながら高い機械特性を持つ部品の製造を可能にする。航空宇宙や防衛分野では、治具や固定具、地上支援装置、一部最終製品部品などへの採用が進んでいる。

Stratasysは今回の買収によって、自社の複合材料ポートフォリオを補完し、高性能部品市場への提案力を強化するとしている。

ソフトウェアとデジタル製造基盤も獲得

Markforgedは「The Digital Forge」と呼ばれる統合プラットフォームを提供している。

このプラットフォームは、3Dプリンター本体だけでなく、材料管理、部品管理、シミュレーション、造形最適化、遠隔運用機能などを統合している点が特徴だ。

Stratasysはこれらのソフトウェア資産を取り込むことで、デジタル製造ソリューションの拡充を図る。

また、両社の販売ネットワークを統合することでクロスセル機会を増やし、顧客基盤の拡大も目指す。

防衛・航空宇宙市場への対応を加速

StratasysのCEOであるヨアブ・ザイフ氏は、「防衛や航空宇宙など、要求水準の高い分野において積層造形の採用が進む中、顧客ニーズに対応する能力をさらに高める買収になる」とコメントした。

近年、各国でサプライチェーンの強靭化や製造拠点の分散化が重要課題となっており、防衛産業でもオンデマンド生産や現場近接型製造への関心が高まっている。

StratasysはMarkforgedの技術を取り込むことで、こうした市場ニーズへの対応力を強化し、防衛・航空宇宙向けの高付加価値市場での存在感拡大を狙う。

買収後1年以内の収益改善を見込む

Stratasysは買収完了後1年以内に粗利益率の改善とコストシナジーを実現できるとの見通しを示している。

さらに、Markforged事業がEBITDAベースでプラス寄与することも期待しており、買収完了後に改めて業績見通しを公表する予定だ。

今回の買収は、2024年にNano DimensionによるMarkforged買収が成立した後の再編となる。積層造形業界では市場統合の動きが続いており、主要メーカーによる技術・顧客基盤の獲得競争が活発化している。

編集部コメント

今回の買収で注目すべきは、Stratasysが単にFFFプリンター製品を追加するのではなく、Markforgedが持つ連続炭素繊維技術とソフトウェア基盤を同時に獲得する点である。

航空宇宙や防衛分野では、軽量化と高強度化を両立する複合材料部品への需要が拡大している。さらに、製造現場では造形装置単体ではなく、設計から生産管理までを含むデジタル製造環境の整備が重要視されている。

近年の3Dプリンター業界では企業統合が相次いでいるが、本件は特に防衛・航空宇宙市場を見据えた戦略的な動きとして位置付けられそうだ。

用語解説

■ FFF(Fused Filament Fabrication)
熱可塑性樹脂フィラメントを加熱溶融し、積み重ねながら造形する3Dプリント方式。FDM方式とも呼ばれ、試作から治具製作まで幅広く利用されている。
■ 連続炭素繊維(Continuous Carbon Fiber)
造形中に連続した炭素繊維を樹脂内部へ埋め込む技術。通常の樹脂部品と比較して高い強度と剛性を実現できるため、航空宇宙や防衛用途で活用が進んでいる。
■ EBITDA
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。利払い、税金、減価償却費を差し引く前の利益を示す指標で、企業の本業の収益力を比較する際によく利用される。

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