米国エネルギー省国家核安全保障局(NNSA)は、人工知能(AI)、高性能コンピューティング(HPC)、3Dプリンティング(積層造形)を活用して開発した実証用飛行試験機「Aires Tide」を発表した。本プロジェクトは、トランプ政権が推進するAI活用プロジェクト「Genesis Mission」の成果を初めて実証した事例であり、従来の開発プロセスと比較して、開発コストを15分の1、開発期間を7分の1に短縮したことが大きな特徴である。
Aires Tideは、AIによる設計、高性能スーパーコンピューターによる解析、そして積層造形による製造を組み合わせることで、国家安全保障分野における新たな開発手法を実証するために開発された。
目次
Genesis Mission初の実証成果
Genesis Missionは、2025年11月24日にトランプ大統領の大統領令によって開始された取り組みである。AIを活用し、米国の国立研究所が保有するスーパーコンピューター群を連携させることで、国家安全保障や科学技術開発を加速することを目的としている。
NNSAはこの基盤を利用し、Aires Tideの設計から解析、製造、飛行試験までを実施した。今回のプロジェクトは、Genesis Missionの構想が実際の成果物として形になった最初のケースとなる。
開発には、ロスアラモス国立研究所、ローレンス・リバモア国立研究所、サンディア国立研究所に加え、カンザスシティ国家安全保障キャンパスが参加し、国家核安全保障エンタープライズ全体が連携して開発を進めた。
AI・スーパーコンピューター・3Dプリントを統合した開発プロセス
Aires Tideの開発では、AIによる設計支援、高性能コンピューティングによるシミュレーション、3Dプリンティングによる試作・製造を一体化した開発プロセスを採用した。
設計には、NNSAが保有するスーパーコンピューター「Venado」と「El Capitan」が活用され、従来よりも短期間で設計の最適化を実施。その後、積層造形技術によって部品を迅速に製造し、試験機として完成させた。
これらの技術を統合したことで、従来の製造方式と比較して、開発コストは15分の1、開発期間は7分の1まで削減されたという。
高度約9,750mから飛行試験を実施
2026年5月には、ユタ州の米陸軍ダグウェイ試験場において飛行試験を2回実施した。
試験では、高度3万2,000フィート(約9,750m)からAires Tideを投下し、いずれも成功を収めた。取得した飛行データは、今後同じAI設計・積層造形モデルで開発されるシステムの最適化に利用される予定である。
NNSA長官のブランドン・ウィリアムズ氏は、「AI、高性能コンピューティング、積層造形を組み合わせることで、人間の判断を中核に据えながら、国家安全保障能力をより迅速かつ効率的に設計・製造する新たなモデルを構築している」とコメントしている。
今回の取り組みは、防衛・宇宙分野においてAIと3Dプリンティングを組み合わせた開発プロセスの有効性を示す事例となり、今後の国家安全保障関連システムの開発手法にも大きな影響を与える可能性がある。
シェアラボ編集部コメント
近年、防衛・航空宇宙分野では、AIによる設計最適化と積層造形を組み合わせた開発が急速に進んでいる。Aires Tideは、単に3Dプリント部品を採用した試験機ではなく、「AIで設計し、スーパーコンピューターで解析し、3Dプリンターで製造する」という一連のデジタル開発プロセスを実証した点に大きな意義がある。
日本でも防衛産業や宇宙産業を中心にデジタルエンジニアリングへの関心は高まっており、今後はAI、高性能計算、積層造形を組み合わせた開発手法が、製品開発のスピードやコスト競争力を左右する重要な要素となりそうである。
用語解説
| ■ Genesis Mission 米国エネルギー省が主導するAI活用プロジェクト。国立研究所のスーパーコンピューターを相互接続し、AIを用いた設計・解析・研究開発を加速することを目的としている。 |
| ■ 高性能コンピューティング(HPC) スーパーコンピューターなどを用いて大規模な数値解析やシミュレーションを高速に実行する計算技術。航空宇宙、防衛、材料開発など幅広い分野で活用されている。 |
| ■ 積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング) 材料を一層ずつ積み重ねて立体物を製造する加工技術。一般的には3Dプリンティングとも呼ばれ、複雑形状の部品を短期間で製造できることから、防衛・航空宇宙・医療など幅広い分野で利用されている。 |
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