3Dプリント製「貼るバイオ電子デバイス」、高血圧治療への応用に期待 Penn Stateが伸縮性インプラントを開発

2026年5月29日
出典:Penn State
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米ペンシルベニア州立大学(Penn State)の研究チームは、動脈に直接貼り付けて高血圧を制御する3Dプリント製バイオエレクトロニクス「CaroFlex」を開発した。柔軟かつ伸縮性を持つハイドロゲル素材を活用したデバイスで、ラットモデルによる実験では血圧を平均15%以上低下させたという。研究成果は学術誌『Device』に掲載された。

高血圧は世界的な健康課題となっており、米国では成人の約半数が罹患している。そのうち約10%は薬剤抵抗性高血圧とされ、複数の降圧薬を投与しても十分な改善が見込めないケースがある。

今回研究チームが開発したCaroFlexは、頸動脈洞(けいどうみゃくどう)に貼り付けて使用する小型バイオ電子デバイスである。頸動脈洞には血圧変化を検知する「圧受容体(バロレセプター)」が集中しており、ここへ微弱な電気刺激を与えることで身体の血圧制御反応「バロレフレックス」を調整する仕組みだ。

従来の同種デバイスは金属や硬質樹脂を用いることが多く、生体組織との柔軟性の違いや、縫合による固定が課題となっていた。動脈は常に伸縮しているため、長期使用では組織損傷やデバイス破損のリスクも指摘されていた。

柔軟なハイドロゲルを3Dプリントで成形

CaroFlexでは、ゼリー状の柔軟素材であるハイドロゲルを主要材料として採用した。導電性ハイドロゲルが電極として機能し、接着性ハイドロゲルが生体組織への密着を担う構造となっている。

研究チームによれば、この構造により生体組織に近い柔軟性を実現でき、従来型よりも安定した電気接続が可能になったという。

物性試験では、CaroFlexは元の長さの2倍以上まで伸ばしても破損しなかった。また、6か月保管した接着材料でも性能維持が確認されている。

出典:Penn State
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ラット実験では平均15%以上の血圧低下

研究チームは、ラットの頸動脈洞へCaroFlexを埋め込み、5種類の電気刺激周波数を用いて血圧変化を測定した。

その結果、5種類中4種類の刺激条件で血圧低下が確認され、平均15%以上の降圧効果が見られた。また、2週間後の観察では、デバイス接触部位に大きな炎症や免疫反応は確認されなかったという。

今後は、刺激条件の最適化や大型化を進め、人間向け臨床試験を目指すとしている。

出典:Penn State
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3Dプリント医療デバイスの可能性拡大へ

近年、3Dプリンターを活用した医療デバイス開発では、生体適合性や個別最適化が重要テーマとなっている。特にハイドロゲル系材料は柔軟性や生体親和性の高さから、人工臓器や神経インターフェース分野でも研究が進む。

今回の研究は、3Dプリントによる柔軟バイオエレクトロニクスが循環器領域へ応用可能であることを示した事例といえる。

将来的には、高血圧だけでなく神経刺激治療やウェアラブル医療機器などへの展開も期待される。

編集部コメント

3Dプリンターによる医療機器開発は、義肢や歯科領域からさらに進み、生体へ直接作用する「バイオエレクトロニクス」へ広がりつつある。今回注目すべきなのは、単なる形状自由度ではなく、“柔らかさ”そのものを設計対象にしている点である。

従来の電子デバイスは、生体との硬さの違いが大きな課題だった。そこへハイドロゲルと3Dプリントを組み合わせることで、生体組織へ自然になじむ電子デバイスが現実味を帯びてきた。今後、個人ごとの血管形状や疾患状態に合わせたカスタム医療デバイスへ発展する可能性もありそうだ。

用語解説

■ バロレフレックス(圧受容体反射)
血圧変化に応じて心拍数や血管収縮を自動調整する身体の生理反応。動脈壁に存在する圧受容体(バロレセプター)が血圧変化を感知し、脳へ信号を送ることで血圧を安定化させる。
■ ハイドロゲル
大量の水分を含む柔らかい高分子材料。ゼリー状の性質を持ち、生体組織に近い柔軟性を持つため、医療・再生医療・バイオセンサー分野で活用が進んでいる。
■ バイオエレクトロニクス
生体と電子回路を接続し、電気信号によって身体機能を計測・制御する技術分野。神経刺激デバイス、人工感覚器、ウェアラブル医療機器などへの応用が進んでいる。

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