オルトモスグループ、インスタリムに出資 3Dプリント義肢装具の共同検討を開始

2026年5月27日
出典:オルトモスグループ
出典:オルトモスグループ

オルトモスグループのオルトモスインベストメント株式会社は、AIおよび3D-CAD、3Dプリント技術を活用した義肢装具のデジタル製造ソリューションを展開するインスタリム株式会社への出資を実施した。また、同グループのアルケア株式会社とインスタリムは、義肢装具分野における協業可能性を検討する基本合意書を締結した。

今回の出資は、インスタリムが実施したJ-KISS型新株予約権による資金調達を引き受ける形で行われた。オルトモスグループは、医療・ヘルスケア分野における課題解決型の投資を推進しており、義肢装具分野におけるデジタル製造技術に注目した格好である。

義肢装具分野で深刻化する供給課題

WHOおよびユニセフによれば、義肢を含む支援機器を必要とする人は世界で25億人以上に達している。一方で、そのうち約10億人は必要な機器を入手できておらず、特に低・中所得国では実際に利用できている割合が約3%にとどまるという。

義肢装具分野では、熟練技術者による手作業中心の製造工程が長年続いており、生産能力やコスト面で大きな制約が存在している。また、患者ごとの身体変化に応じたフィット感維持や継続利用支援も十分とは言えない状況である。

日本国内においても、医療高度化に伴う安定供給体制の維持が課題視されている。

AI・3Dプリントによる義足製造のデジタル化

インスタリムは、AI、3D-CAD、3Dプリント技術を組み合わせ、義肢装具の設計から製造、提供までをデジタル化しているスタートアップ企業である。

同社は独自開発の3Dプリンタやモデリングソフトウェアを活用し、従来はアナログ工程が中心だった義足製造をフルデジタル化。義肢装具士1人あたりの製造能力を10倍以上へ引き上げる「3D義足製造ソリューション」を展開している。

また、製造コストについても、従来比で約10分の1以下まで低減できるとしている。

現在はフィリピンやインドを中心に事業展開を進めており、自社クリニック運営とライセンス提供の両軸で事業を拡大している。

義足ソケットや福祉用具開発を共同検討

今回の基本合意により、アルケアとインスタリムは以下の3分野で共同検討を進める。

1つ目は、調整可能な義足ソケットソリューションの開発である。AIや3Dプリント技術を活用し、患者や医療従事者がフィット感を調整可能な義足ソケットの検討を行う。

2つ目は、装具や福祉用具へのデジタル製造技術の応用である。高齢化や慢性疾患に伴う身体変形への対応を見据え、長期使用可能な製品開発を目指す。

3つ目は、日本市場での事業展開である。国内市場におけるデジタル義肢装具事業の実装可能性について協議を進める。

アルケアは長年にわたり、皮膚生理や人間工学をベースとした粘着・樹脂技術や製品開発ノウハウを蓄積しており、医療現場とのネットワークも持つ。インスタリムのデジタル製造技術と組み合わせることで、新たな義肢装具提供モデルの構築を狙う。

医療格差解消に向けた3Dプリント活用が拡大

近年、3Dプリント技術は義肢装具分野でも導入が進んでいる。従来の石膏型による製造と比較し、短納期化や低コスト化、データ管理による再製作性向上などが期待されている。

特にグローバルサウスでは、義肢装具士不足や医療アクセス問題が深刻であり、デジタル製造による遠隔対応や量産化モデルへの期待が高まっている。

今回の協業は、単なる義足製造の効率化に留まらず、日本国内を含めた医療・福祉分野におけるデジタル製造インフラ構築の一例として注目されそうである。

編集部コメント

義肢装具分野は、3Dプリント技術が社会実装段階へ進みつつある代表的な領域の一つである。特にインスタリムのように、単なる造形装置ではなく、AI・CAD・製造・運用まで含めて一体化したソリューションとして展開している点は重要である。

また今回注目すべきなのは、医療材料や人体接触ノウハウを持つアルケアとの連携である。義足は「作れる」だけでは成立せず、長時間使用時の皮膚負荷やフィット性、継続運用まで含めた総合設計が必要になる。3Dプリント技術単体では解決できない領域へ踏み込もうとしている点に、日本市場向け実装の現実味を感じる。

今後は、義足だけでなく装具・リハビリ・高齢者向け福祉機器などへデジタル製造が広がる可能性もありそうだ。

用語解説

■ J-KISS
スタートアップ向け資金調達手法の一つ。投資家が将来的に株式へ転換できる新株予約権を取得する仕組みで、日本国内のスタートアップ投資で広く利用されている。
■ 義足ソケット
義足と人体の断端部を接続するパーツ。装着感や歩行性能、皮膚への負担に大きく影響するため、義足の中でも特に重要な部位とされる。
■ グローバルサウス
新興国・途上国を中心とした地域を指す言葉。アジア、アフリカ、中南米などを含み、近年は製造業や医療分野での市場拡大先として注目されている。

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