再生医療分野における量産体制の確立に向けて、新たな一手が打ち出された。株式会社サイフューズ(以下、サイフューズ)は、日本精工株式会社(以下、NSK)と共同で、3D細胞製品の商業生産を見据えた新型バイオ3Dプリンタを開発したと発表した。本装置は、従来の研究・臨床段階から一歩進み、実際の製造現場での活用を前提に設計された点が特徴である。
目次
商業生産を見据えた開発背景
再生医療および細胞治療分野は、近年急速に市場が拡大している。サイフューズでは複数のパイプラインで臨床開発を進める一方、将来的な量産化に対応するための製造技術の確立が課題となっていた。こうした中、同社とNSKは2022年より製造工程の機械化・自動化に関する共同開発を開始。2024年には基盤技術の確立に至り、今回の新型装置開発へとつながった。サイフューズのバイオ3Dプリンティング技術と、NSKの精密制御技術を組み合わせることで、再生医療製品の量産化に向けた実用的なプラットフォーム構築を目指している。
スケールアップと自動化を両立した新型装置
今回の新型バイオ3Dプリンタは、同社の既存機「S-PIKE®」の設計思想をベースにしながら、商業生産に必要な機能を大幅に強化している。まず、作製可能な組織サイズの大型化が実現された。設計自由度を維持したまま、NSKの高度な制御技術を取り入れることで、より大きな組織構築が可能となっている。さらに、製造工程の統合と自動化も大きな特徴である。細胞塊の分注から積層までの工程を安全キャビネット内に集約し、一連のプロセスとして自動化。加えて、低発塵・除染対応アクチュエータを採用することで、製造環境におけるリスク低減も図られている。これにより、安定した生産体制の構築とコスト削減の両立が期待される。
展示・今後の展開
本デバイスは、2026年3月19日〜20日に開催される「第25回日本再生医療学会総会」のNSKブースにて展示される予定である。今後は、本装置を用いた3D細胞製品の評価を進めるとともに、装置の販売・展開も視野に入れ、商業生産に向けた製造基盤の整備を加速させる方針だ。また、再生医療にとどまらず、機能性食品や化粧品といったヘルスケア領域への応用も検討されており、事業領域の拡大にも注目が集まる。
編集部コメント
バイオ3Dプリンティングは「研究用途」から「製造技術」へとフェーズが移りつつある。今回の発表は、その転換点を示す動きと言える。特に注目すべきは、NSKのような精密機械メーカーが本格的に関与している点である。再生医療は技術的なハードルだけでなく、量産・品質管理・コストといった製造課題がボトルネックになりやすい分野だ。今回のように産業機械側のノウハウが融合することで、「作れる」から「作り続けられる」へと進む可能性がある。今後は装置単体だけでなく、サプライチェーン全体の構築がどこまで進むかが鍵となるだろう。
用語解説
| ■ バイオ3Dプリンティング 細胞や生体材料を用いて立体的な組織構造を構築する技術。再生医療や創薬分野で活用されており、人工組織の作製などに応用される。 |
| ■ 3D細胞製品 3次元的に構築された細胞組織を用いた製品のこと。再生医療では移植用組織として利用されるほか、創薬や評価用途にも活用される。 |
| ■ アクチュエータ 電気信号などを受けて機械的な動作を行う装置。3Dプリンターではノズルやステージの精密な動きを制御する重要な部品である。 |
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