3D Systems、高スループット光造形システム「SLA 825 Dual」と工場向け統合ソフトウェア「AddiTrak」を発表 量産領域でのAM活用を拡大

2026年5月18日
SLA 825 Dual 3D プリンタ(出典:3D Systems)
SLA 825 Dual 3D プリンタ(出典:3D Systems)

3D Systemsは2026年4月13日、高スループットかつ高再現性を実現する新型光造形システム「SLA® 825 Dual」と、積層造形工場向け統合ソフトウェアプラットフォーム「AddiTrak™」を発表した。いずれも、量産環境における積層造形(AM)の導入拡大を見据えた製品群であり、RAPID + TCT 2026(ブース#1801)で公開された。

今回の発表は、航空宇宙・防衛、自動車、ヘルスケア、産業機器などの分野で高まる量産AM需要に対応するものとなる。3D Systemsは、ハードウェア、ソフトウェア、材料、アプリケーション開発を統合したソリューション提供を強化し、試作用途から本格量産への移行を支援する構えである。

デュアルレーザ搭載の「SLA 825 Dual」を投入

新たに発表された「SLA 825 Dual」は、デュアルレーザ構成を採用した次世代SLAシステムである。従来機比で22%大きい造形容量と、最大25%高速な造形速度を実現しており、1シフトあたりの生産量向上を狙う。

同社によれば、競合する同クラス製品と比較しても20%以上大きい造形容積を備え、最大30%高速なプリント性能を発揮するという。

高稼働率を前提とした設計となっており、以下のような高精度・高再現性が求められる用途を想定している。

  • モータースポーツ向け部品
  • 実寸大の高精度プロトタイプ
  • インベストメント鋳造用パターン
  • 高歩留まりが要求される量産部品

従来、SLAは高精細な試作技術として認知されてきたが、今回のシステムでは生産性向上によって量産領域への適用拡大を狙う。

AddiTrakでAM工場全体を統合管理

同時に発表された「AddiTrak」は、3D Systems製AM装置群を統合管理するためのオンプレミス型ソフトウェアプラットフォームである。

積層造形の量産化では、複数台の装置を横断した監視や工程管理、品質トレーサビリティが重要となる。AddiTrakは、こうした課題に対応するため、リアルタイム監視、プロセス制御、データ収集、分析機能を統合ダッシュボード上で提供する。

また、MTConnectやOPC UAといったインダストリー4.0対応規格にも対応しており、既存の製造システムとの連携も視野に入れている。

さらに、同社の造形準備ソフトウェア「3D Sprint®」とも統合されており、

  • ジョブ準備
  • スケジューリング
  • プリント実行
  • パフォーマンス分析

までを一貫して管理可能とした。

クラウド型ではなくオンプレミス構成を採用している点も特徴であり、機密性の高い設計データや製造データを社内管理下で運用できる。

金属AMによる大型補修部品製造の事例も紹介

RAPID + TCT 2026では、AMを活用した実際の量産事例も紹介された。

その一例として、ノルウェーのポンプメーカー Eureka Pumps AS は、3D SystemsのDMP(Direct Metal Printing)技術を用いて大型金属スペア部品をオンデマンド製造している。

この取り組みにより、

  • 部品廃番への対応
  • 長期リードタイムの回避
  • 在庫削減
  • サプライチェーン強靭化

などを実現しているという。

AMによるデジタル在庫化が、ミッションクリティカルな産業設備保守において実運用段階へ入りつつあることを示す事例と言える。

プレート上の DMP 500 ビルド(出典:3D Systems)
プレート上の DMP 500 ビルド(出典:3D Systems)

量産AMへのシフトを加速

3D SystemsのSVP Technical Fellowである Patrick Dunne は、「積層造形による設計自由度とデジタル生産による運用柔軟性の価値が認識されるにつれ、工業用途でのAM導入は加速している」とコメントしている。

また、同社社長兼CEOの Jeff Graves は、「過去数年間にわたり、生産用途に焦点を当てた規律ある投資を進めてきた」と述べ、高スループットSLAと工場管理ソフトウェアによって、高精度・高複雑形状を必要とする製造用途へのAM適用をさらに広げていく考えを示した。

今回の発表は、3D Systemsが単なる装置メーカーではなく、“量産AMインフラ企業”としての立ち位置を強めていることを示す動きとも言える。特に、装置単体性能ではなく、「複数装置をどう工場運用するか」に焦点が移り始めている点は、AM市場の成熟を象徴している。

編集部コメント

近年のAM業界では、「どれだけ高精細に造形できるか」から、「どれだけ安定して大量生産できるか」へと競争軸が移りつつある。今回の3D Systemsの発表は、その流れを象徴する内容である。

特に注目すべきは、AddiTrakのような“AM工場OS”的なソフトウェアの登場だ。量産環境では、装置性能だけでなく、装置群全体の稼働率、品質データ、工程管理が重要になる。これは従来の工作機械業界が歩んできた道と重なる。

また、オンプレミス管理を重視している点も興味深い。航空宇宙や防衛など、機密性の高い製造領域ではクラウド利用に慎重な企業も多く、日本市場でも一定の需要がありそうだ。

さらに、大型金属スペア部品のオンデマンド製造事例は、「補修部品を在庫ではなくデータで持つ」というAMの本質的価値を改めて示している。量産だけでなく、保守・サービス領域でもAMの存在感は今後さらに高まりそうである。

用語解説

■ SLA(Stereo Lithography Apparatus/光造形)
液体樹脂にレーザを照射して硬化させる3Dプリント方式。高精細かつ滑らかな表面品質を得やすく、試作や鋳造用パターン製作などで広く利用されている。
■ DMP(Direct Metal Printing)
金属粉末をレーザで溶融・積層する金属3Dプリント技術。高密度かつ高精度な金属部品を製造でき、航空宇宙やエネルギー分野などで活用が進んでいる。
■ MTConnect / OPC UA
工作機械や産業装置間でデータ連携を行うための標準通信規格。工場全体の可視化や自動化を進めるインダストリー4.0領域で重要な役割を担う。

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