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やわらか3D共創コンソーシアム6周年記念シンポジウム参加報告

2024年4月5日に日本科学未来館で「やわらか3D共創コンソーシアム」の6周年記念シンポジウムが、「やわらか3Dシンフォニー」というテーマで開催された。今回は私たちShareLabの丸岡が開会宣言をさせていただくということもあり、参加報告を私の方からさせていただく。

「やわらか3D共創コンソーシアム」とは?

「やわらか3D共創コンソーシアム」は山形大学の古川教授を会長とし、「材料 “30年” を、材料 “3ヶ月” に」という目標を掲げ、アイデアづくりとそれを実際に形にするための “場” として、研究機関だけではなく世界の最新技術を持った企業や団体、山形県地元企業等も集まるプラットフォームとなることを目指している。

また、今回のテーマ「やわらか3Dシンフォニー」は、コンソーシアムの活動を様々な楽器(奏者)が集まることにより素敵な音楽を奏でるオーケストラに例え、研究開発についても1人 / 1団体ではなく、複数集まることにより、より素敵でおもしろいことができるのではないかという想いが込められている。以下にシンポジウムでの講演の一部とディスカッションの要点をお伝えする。

開会宣言

開会宣言をする丸岡
開会宣言をする丸岡

イントリックス株式会社・ShareLab事業部 事業開発ディレクターである丸岡から開会宣言が行われた。その中で「やわらか3D共創コンソーシアム」が6周年を迎えられた祝辞の後、自身がこれまでの仕事の中で「これがアディティブマニュファクチャリングのすごさだ!」と感じた3つの衝撃を紹介する。3Dプリンティング業界で働き続け、これからも働きたいと思えるエネルギーはそこからもらったことや、3DやAMは世の中の仕組みからひとりの人生を変える可能性も持っていると話し、本シンポジウムが参加の皆様にとって知識や関係を一つ積み上げていくことにつながる願いのメッセージとして、スティーブ・ジョブズの名言にあやかり「Stay Hungry, Stay Additive!」を全員で発声して開会の宣言とした。

会長挨拶 会長講演:古川 英光 氏(やわらか3D共創コンソーシアム・会長 / 山形大学・教授)

やわらか3D共創コンソーシアム・会長 / 山形大学・教授 古川 英光 氏
やわらか3D共創コンソーシアム・会長 / 山形大学・教授 古川 英光 氏

本コンソーシアムは6周年を迎えた。設立は3Dプリンターブームのころ、多くのさばききれないほどの共同研究提案が来たが、それに応えたくオープンに最新の話ができる場として設立。試行錯誤してきたが、オンライン会議の普及が会合開催の大変さを緩和したこともあり、5部会で活動が活発化してきた。今後の活動予定として、2024年4月16日~2024年4月18日 スペイン ビルバオで開催されるFood 4 Future展示会に出展し、食品部会での研究成果を発表し、スペインの食に関する総合研究組織Basque Culinary Centerとの提携を目指す。

話題提供 岡島 博司 氏(トヨタ自動車株式会社・先進技術統括部 主査 / 担当部長)

ワーケーション中のスペイン バルセロナからオンラインで講演。「全固体電池から苺へ」の題で、トヨタ自動車の蓄電池研究開発の現状とビジョン、コスト低減の課題を紹介。製品開発はこれまでの垂直統合/自前主義から有機結合/共創に変わってきている。例として、工場からどうしても出る熱とCO₂は植物にとっては「栄養」であり、それらを利用する苺やトマトのハウス栽培の実証実験を工場内で近隣農家と共同で行っている。トヨタイムズでも概要を公開している。

吉本 陽子 氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社・政策研究事業本部 産業創発部 主席研究員)

3Dプリンティングの市場拡大に必要なのは3Dプリンターを使わざるを得ないような状況を作る、つまりビジネスモデル、規制・ルール、UX(体験価値)であることを、国内の歯科矯正マウスピース製造や金属廃材利用3Dプリンターの例とともに示した。

部会活動報告

<食品部会>

<医療部会>

  • 医者の困りごとを聞く講演会開催
  • 舌癌3Dプリントモデルの開発を目指す

<ゲル部会>

  • 採択されている「NEDO先導研究プログラム/マテリアル・バイオ革新技術先導研究プログラム」において「革新的異種柔軟材料3D/4Dものづくり基盤の構築」研究推進
  • 「直交反応4Dインク」「キメラ4Dプリンター」「4Dシミュレーター」の開発

<モビリティ(構造)部会>

  • 建築用大型3Dプリンターと材料×内部構造の研究
  • 国産建築3Dプリンターやスライサーソフトウエアのメーカーと共同研究

<ソフトマシン部会>

  • 山形大学 小川准教授による真空駆動型ソフトアクチュエータモジュール「MORI-A」の紹介

パネルディスカッション 「やわらか3Dシンフォニー」 

モデレータ:佐々木 直哉 氏(山形大学・客員教授 / 立命館大学・客員教授)

パネリスト:吉本 陽子氏

      田中 浩也 氏(慶応義塾大学環境情報学部・教授 / SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ・代表)

      古川 英光 氏

      小川 純 氏(やわらか3D共創コンソーシアム・技術リーダー / 山形大学・准教授)

パネルディスカッション パネリストの方々
パネルディスカッション パネリストの方々
  • 3Dプリンティングを活用するビジネスモデルを作る方法などについて意見交換
  • 田中教授から、慶應義塾大学、鎌倉市、企業・団体の共創による研究拠点施設「リサイクリエーションラボ」と、鎌倉市内公園の老朽遊具更新に、大型3Dプリンターと市内の廃プラスチックを原料から作る遊具「ぷかぷかドーム」を活用する事例紹介。このようなビジネスモデルは、2つ以上の社会課題(サステナビリティやごみ減量など)を解決するものであることが重要、また自治体と連携していくことを示した。

講評:佐々木 直哉 氏(山形大学・客員教授 / 立命館大学・客員教授)

モデレータ 山形大学・客員教授 / 立命館大学・客員教授 佐々木 直哉 氏
モデレータ 山形大学・客員教授 / 立命館大学・客員教授 佐々木 直哉 氏

目的が先に決められるこれまでの研究開発と違い、これから必要なのは本コンソーシアムのように研究を進めて行き、後付けで目的が決まっていく、または「ブリコラージュ」と呼ばれる方法ではないかと提言。

シンポジウム終了後の懇親会で古川会長に丸岡が個別にお話を伺った。

古川 氏と丸岡 懇親会にて

「どのようなご感想を持たれましたか?」の質問に対し、「 1期3年で計画と実行をしてきたが、1期目では研究テーマが拡散し、2期目ではそれらがかなり集約されてきたと感じ、また部会間協働の動きも出てきました。これからの3期目では、海外での活動や団体との連携を進めていきたいです。」とのこと。

日本でも様々な3Dプリンティングを使った協働研究がある中で、「やわらか」を基軸に食品からロボットまで幅広い分野と多様な立場の方々が活発に活動され、海外にまで連携を広げられていることに驚かされたとともに、関わる方が全体に明るく、楽しそうに活動されている印象を受けた。本コンソーシアムのように社会課題や材料活用課題を協働で解決する手段としてAMを使う、また、まず始めてみた後に成果やゴールを探す方法は、国内でAM活用方法やビジネスモデルがなかなか見つからないという悩みの解決のヒントになるのではないだろうか。

システム開発会社のエンジニア、WEB制作会社のディレクターなどを経て独立。現在は企業コンサルティング、WEBサイト制作の傍ら3Dプリンターをはじめとしたディープテック分野での取材・情報発信に取り組む。装置や技術も興味深いけれど使いこなす人と話すときが一番面白いと感じる今日この頃。

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