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『出前3Dプリンター展示会』でにぎわった豊田自動織機の社内展示会から

豊田自動織機大岩氏

2023年12月6日、日本AM協会は、株式会社 豊田自動織機 主催の社内向け技術展示会に併設する形で、協会加盟企業各社と共に3Dプリンティング技術の出前展示会を開催した。最終的に12月6日、7日の2日間で500名を超える来場者が会場を訪れ、AM技術の展示に見入っていた。(写真は透明樹脂のサンプルを手に出前3Dプリンター展示会受け入れの経緯を説明してくれた豊田自動織機の大岩 洋之 氏)

日本AM協会の「出前3Dプリンター展示会」

「欧米に比べると日本のAM活用はまだまだこれからです。現場の方にこそ最新動向に触れていただきたい」と語るのは日本AM協会の専務理事を務める澤越 俊幸 氏。澤越氏は今までも防衛省などで出前展示会を企画し、最先端の活用事例や実際の造形サンプルなどの展示をより多くの関係者に訴求する活動を続けてきた。

2日間で500人以上が来場した出前展示会

技術を啓蒙したいベンダーや販売店が、大企業に新技術を訴求する際に、社内にパネルやサンプル展示を食堂やホールに一定期間展示するであったり、イベントに合わせて併設する取り組みは昔から取り組まれてきたが、10数社の出展企業が軒を連ね出前展示会を開催する取り組みは、非常にインパクトがある。

豊田自動織機で開催された出前AM展示会に参加した企業も、ソフトウェアベンダー、装置のリセラー、受託造形を請け負うサービスビューロ、後加工を請け負う加工企業などさまざまだ。

豊田自動織機はトヨタグループの一員として、カーエアコン用コンプレッサーの製造などで世界的なシェアを誇る。技術開発にも幅広く取り組んでおり、トヨタグループの中でも自働化の推進には実績も多い。今回の社内展示会でも社内体育館で100以上のテーマを展示するほど技術開発が活発に行われている企業だ。

今回日本AM協会の出前AM展示会に関して受け入れ窓口を務めた豊田自動織機の大岩  洋之氏に現地で話を聞いた。

豊田自動織機の3Dプリンティング技術への取り組み

シェアラボ編集部:今回の開催の経緯は?

大岩氏:AM協会で弊社の佐藤が冷却水管を活用したダイキャスト金型の取り組みで登壇したご縁で、澤越理事からお声を掛けていただきました。私たちは年に1回社内向けに自社の技術を共有し合う社内展示会を開いておりまして、そこに来ていただこうとなりました。

シェアラボ編集部:外部の展示会と比べていかがですか?

大岩氏:外部の技術に触れる機会としては大きな展示会もありますが、全ての社員が会場に行くことができるわけではありません。今までも工場の一角にメーカーさんや販売店さんのご協力でサンプル展示やパネル展示を行ったこともありますが、複数の工場拠点に分かれていると、どうしても社員の一部の目に触れるだけとなりがちです。今回は各工場から運行バスを用意して会場にくるイベントになっていますので、そこに出前展示会をご用意いただけたのは大変良い機会となりました。

シェアラボ編集部:大岩さんは豊田自動織機さんの中でAM推進のお取り組みをされているんですよね?

大岩氏:はい。私は2019年からAM推進の取り組みを行っています。社内向けのサービスビューロとして樹脂造形をメインにサービスを提供していますが、それ以外にも、各部署が個別に取り組んでいたのですが、社内に呼びかけ、3Dプリンターを活用している担当者の連絡会を組織しまして、導入機種や活用動向を共有しています。勉強会を定期的に開催するなどの取り組みは継続的に行っているほか、シェアラボさんのようなメディアで掲載されている最新情報を社内に共有する取り組みも行っています。

シェアラボ編集部:シェアラボの記事を社内の方に共有するためにメールや社内掲示板でお知らせいただくのは、大歓迎です。ちなみにご迷惑でない範囲でこんな形で3Dプリンターを社内で活用しているというサンプルなどを拝見することは可能ですか?

ニーズが多い透明部品と磨きの技術

大岩氏:私たちは主に樹脂の造形を行っていまして、人気のあるのが透明な材料を使った造形です。こちらは弊社に出向された方が帰任されるときに記念品として贈ったものですが、透明な地球儀に、新婚旅行の渡航先と新郎新婦の名前を意匠として造形したものです。

透明樹脂材料で造形された地球儀の形をした記念品。手磨きで透明度を上げているという。

シェアラボ編集部:すごい透明度ですね。表面もつるつるでガラスのようです。

大岩氏:ストラタシスの装置で造形しているのですが、透明な材料で造形した後に、手磨きで磨いています。コンプレッサーなどの機構を持った製品は、透明な部品で外装部分を造形し、中でどのように動いているかを見せるというニーズがあります。CGで見せるよりも工場に来ていただいた際に実寸大の透明サンプルを見せると反響が良いようです。

シェアラボ編集部:この透明度、手磨きで出しているんですね。

豊田自動織機で実際に利用されているダイキャスト金型の透明サンプル。
左が水冷菅の配置を最適化したもの。右が垂直方向にのみ冷却水管を掘ったもの。

大岩氏:こちらの透明な金型のサンプルは、青色が冷却水管です。先ほどお話にでた佐藤というものが、ダイキャスト金型に冷却水管を通して、金型温度を安定させ、ショット数を増やすという取り組みで一定の成果を上げているのですが、その金型のサンプルですね。

シェアラボ編集部:いままでと水管の配置が異なりますね。

大岩氏:私もダイカスト金型を触っていたのですが、昔はドリルで直線的に掘ることしかできませんでした。直線で掘って、ストレートの冷却水管を入れるのですが、冷やしたい箇所を思い通りに冷やすことができませんでした。ですが金型を金属3Dプリンターで造形することで、シミュレーションをしながら狙った箇所を冷やすことができるので、温度が安定します。サイクルタイムを削減しつつ、汚れが付着しにくいメンテナンスの工数を下げる設計も可能になりました。私が携わっていた時にこういう事ができていればなぁと思うほど、すごい成果だと思って見ています。

シェアラボ編集部:サイクルタイムが減るとショット数が増えて生産性に直結する改善になりますよね。メンテナンスが減るとダウンタイムも減るわけですから、スループットが増やせるということですよね。

大岩氏:弊社としてそうした先進的な取り組みを行っている部署もありますが、まだまだ「試作製作に活用する」ですとか、「治具を作る」ですとかそういう取り組みを地道に行っているのが実情です。

シェアラボ編集部:先ほどの金型の例のように、AM技術は手段の一つと割り切って、とことん合理化してもまだつぶしきれない課題に対して挑戦する、という位置づけで活用されると現実感がありますし、試作や治具のように手ごたえが感じやすい部分から取り組むほうがやはり取り組み易さがありますよね。ここ数年で社内での製作数は増えましたか?

大岩氏:着実に増えています。装置は毎日稼働していまして、台数も増やしています。ストラタシスのJ750 、フォームラブズのForm 3Lなどを使って製作しています。

社内に新技術を浸透させる秘訣は?

シェアラボ編集部:どういったお声が上がっていますか?

大岩氏:すべてが上手くいっているわけではありません。材質的に強度が足りないので、一回頼んだけれど、もういいや、となってしまうこともあります。そんな中ですが装置も材料も毎年よくなっていますので、リピーターも多いです。それに材料費程度の費用振替しか請求していないので、完成後の磨きなどは無償で提供していますから、透明な部品のオーダーは多くなってきました。

シェアラボ編集部:透明な樹脂は下手に磨くと白く濁るので、地道で手間がかかる作業だと思うのですが、先ほど見せていただいたサンプルの透明度で作ってくれるなら、かなり嬉しいですよね。社内の方がうらやましいです。

大岩氏:今日はこうした社内イベントに、日本AM協会さんの出前展示会が来てくださって、外部の展示会に参加しない社員も最新技術に触れる機会ができました。3Dプリンターを特別な技術ではないもっと普段から見かける工法だと思ってもらえるように情報発信を続けていきたいと思います。

終始謙遜する大岩氏だが、担当者連絡会を組織し、社内での情報共有を続ける姿には学びが多い。

シェアラボ編集部:最後になりますが、最近展示会などで、社内のとりまとめ役になったという方から、AM技術の社内普及のために何をするべきかご相談をいただくことが増えてきました。先駆者として大岩さんからアドバイスをお願いできますか?

大岩氏:弊社もまだまだ手探りの状況ですが、やってみて思うことが2つほどあります。一つ目は一人で進めようとしないという点です。社内に3Dプリンターを活用している人がいれば巻き込んでいく。連絡会と私たちは呼んでいますが同じような悩みをもっていれば共有し、知恵を出し合えます。相談すると案外答えを持っている場合もあるので、情報共有は大事だと思います。

次が社内への浸透です。掲示板に今日のようなイベントの取り組みを紹介するなど地道な情報発信を続ける、連絡会で最新ニュースを共有するなどの取り組みを地道に続けると少しずつ3Dプリンターが当たり前の存在になっていきます。3Dプリンターのメーカーさんや販売店さんは協力的な方が多いので「社内勉強会をしたいんだけど」と相談すると引き受けていただけることも多いはずです。

いろいろな方のお力を借りながら3Dプリンターを使うことが特別なことでなくなるといいなと思って活動しています。

社内普及を目指すには着実な情報発信の積み重ねが大事

豊田自動織機の大岩氏への取材で見えてきたのは、「大きな組織や複数部門間で3Dプリンター活用を目指すためには、着実な情報発信の積み重ねが重要」という点だ。大岩氏は、すでにジェネレーティブデザインを活用した最適化設計で水冷金型の製造に取り組んでいる先進的な実践事例が社内にある一方で、社内の他部門とは温度差が大きい実態があることを冷静に把握している。その上で、他の担当者や部門と温度差を解消するために「最新情報」「使える切り口」「イベント情報」などを社内掲示板で発信しながら、実務者の連絡会義体を運営している。こうした取り組みを行うことで、社内で必要としている人からの相談を集める下地作りを行っている取り組みは、業界や業種を超えて多くの企業が参考にすることができるだろう。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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