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今やパンプスもオーダーメイド!?3Dプリンターで実現する新ビジネスの秘密にせまる

顔や身長、指紋がひとりひとり違うように、足の形も人により異なる。しかし、普通の店舗ではサイズで区分された量産品の靴しか販売されていない。

特に量産品のパンプスは長時間履くと足腰に負担がかかる場合も多く、職場でパンプスの使用を強制されて悩む女性も多いという。デザインが気に入ってパンプスを購入したが自分の足に合わず、結局靴箱の中にしまってしまうケースもあるようだ。

これらの問題を解決するのが、個々人の足にぴったり合わせて製造するオーダーメイドのパンプスだ。実はここ2、3年、3Dプリンターを使ったオーダーメイドのパンプス製造サービスが現れはじめている。

今回の記事では、3Dプリンターを活用したオーダーメイドパンプスを手がける3社の事例を取り上げ、

  • 3Dプリンターをどのように導入したのか
  • 3Dプリンターで何が実現できたのか
  • 3Dプリンターを活用したビジネスの可能性

などを考察する。

3Dプリンターを活用したオーダーメイドパンプス製造サービスの事例3選

事例① AYAME

3Dプリンターで靴型を製造する様子(出典:AYAME)

AYAMEは、株式会社crossDs japanが提供するオーダーメイドパンプスブランド。2020年2月にサービスを開始した。

AYAMEでは客に店舗まで来てもらい、客の足を3Dスキャナーで計測して3Dプリンターで専用の靴型を製造する。この靴型を元に、この道60年のベテラン職人が手作業でオーダーメイドパンプスを製造する。靴は1ヶ月くらいで出来上がるという。

AYAMEがパンプスづくりに3Dプリンターを活用しているのは、「地球に優しいエコなパンプスを提供したい」という想いから。

3Dプリンターは、必要な場所だけに材料を積み上げて立体的な形をつくる装置だ。大きな塊を削りだして形をつくる従来の方法では削りかすなどが発生するが、3Dプリンターの場合は製造過程でゴミが出ない。

また、3Dプリンターでは造形の仕組みに応じてさまざまな材料を使用できる。AYAMEが3Dプリントに使用しているPLA樹脂は、トウモロコシなどの植物を原料にしたカーボンニュートラルな材料。コンポスト中で自然分解させることも可能だ。

エコのために3Dプリンターを使用するAYAMEの理念は、近年重要視されているサステナビリティに基づくものだといえよう。

事例② Soleil Sole

Soleil Soleのオーダーメイドインソール(出典:Soleil Sole)

Soleil Soleは、3Dプリンターでパンプス用のオーダーメイドインソールを製造している東大生グループだ。2019年から開発をスタートし、2021年1月には合同会社を設立。2021年4月1日からクラウドファンディングサイトでサービスを開始している。

インソールとは、いわゆる「中敷き」のこと。真っ平らな靴底と自分の足との間を埋めるために、靴底に敷くものだ。自分の足にぴったり合ったインソールを使用すると、体がぐらつかない、足が痛くならない、足の病気(外反母趾や扁平足など)がよくなる、といった効果がある。

Soleil Soleが提供するインソールは、前足部に負担がかかりやすいパンプスに特化してつくられている。また、千葉義肢装具製作所の監修の元、足本来の機能的な動きを回復させる設計となっている。

Soleil Soleがかかげるのは、製作工程の自動化による「フルオーダーメイドインソールのDX」の実現だ。

客は自分の足をスマートフォンで3Dスキャンし、Soleil Soleにスキャンデータを送信する。このデータを元に、Soleil Soleが3Dプリンターでインソールを製造する。「自宅での3Dスキャン」と「3Dプリンター」の活用により、製作工程を可能な限り自動化しているのだ。自動化により製造コストの削減に成功し、フルオーダーメイドインソールの低価格化が実現したという(従来製品は約5万円、同社の製品は1万8千円)。

Soleil Soleで作製するのはあくまでもインソールなので、自分が持っているパンプスの中に敷いて使うことが可能だ。昔購入したが足に合わず靴箱にしまったパンプスを、もう一度履ける可能性もある。

事例③ Shoe-Craft-Terminal

スマートフォン撮影動画から作成した足の3Dモデル(左)、3Dプリンターで製造したパンプス用の靴型(右)(出典:Shoe-Craft-Terminal)

Shoe-Craft-Terminalは、東京工業大学 初ベンチャーであるビネット&クラリティ合同会社が提供する、機械学習と3Dプリンターを活用した靴のフルオーダーメイドサービスだ。世界で初めて遠隔でフルオーダーメイド靴を購入できるサービスとして、2019年にスタートした。同社は女性向けのパンプスの他に、男性向けの靴も扱っている。

オーダーメイドシャツなどのサイズ測定では機械学習による低価格化が進んでいるが、オーダーメイド靴は専門家や専用の3Dスキャナーによるサイズ測定が必要な場合が多く、あまり低価格化が進んでいなかった。そこで同社は、靴のオーダーメイドに機械学習×3Dプリンターを導入して低価格化を実現した。

具体的なスキームはこうだ。まず客はスマートフォンで足の動画を撮影し、動画データをShoe-Craft-Terminalに送信する。専用アプリのインストールは不要であり、A4サイズの紙に足を載せて動画を撮影するだけでいい。もちろん、撮影は自宅でできる。Shoe-Craft-Terminal側は機械学習を活用して動画から3Dモデルを作成し、このモデルを3Dプリンターに読み込ませて靴型をプリントする。この靴型を元に、職人が手作業で靴を製造する。

機械学習×3Dプリンターを活用した自動化により、従来の半額(同社調べ)である約4万円で靴のフルオーダーメイドサービスが実現した。同社はさらなる低価格化のため、靴自体を3Dプリントする技術も開発中だという。

3社の事例を比較してみる

上記3社の事例を比較してみよう。

AYAMESoleil SoleShoe-Craft-Terminal
3Dプリンターを使う目的エコのため(切りくずが出ない、環境にいい材料を使用)自動化によるコスト削減&販売価格の低下自動化によるコスト削減&販売価格の低下
来店の要否必要不要(店舗なし)不要(店舗なし)
3Dプリント対象靴型インソール靴型
3Dプリントデータの取得方法専用スキャナーで足を3Dスキャン(店舗で店員が測定)足をスマートフォンで3Dスキャンして送信足の動画をスマートフォンで撮影して送信(機械学習で解析して3Dモデル化)
備考・3Dプリントした靴型を元に職人が手作業で作製→従来のフルオーダーメイドと同様の品質
・SDGsに向けた取り組みを実施(植物由来材料を使用して3Dプリントするなど)
・東京大学の学生により開発されたサービス
・千葉義肢装具製作所と提携
・東京工業大学発のベンチャー企業・機械学習×3Dプリント
・3Dプリントした靴型を元に職人が手作業で作製→従来のフルオーダーメイドと同様の品質
・靴自体を3Dプリントする技術も開発中

3Dプリンターだから実現できたこと

3社の事例から、3Dプリンターを活用する目的は「エコのため」や「自動化による低価格化のため」であることがわかる。従来のオーダーメイド靴は、靴型の製造時に切りくずが出たり、一点物なので高価格であったりする点が問題であったが、3Dプリンターを導入すれば上記の問題点を解決できるのだ。

また、従来の靴型作製は職人の勘に頼る部分があり、仕上がりにばらつきがある点も問題だった。3Dプリンターで正確な靴型を製造すれば、これも解決できる。

さらに、今回紹介した3社中2社は店舗を持たない。自宅でのデータ測定と3Dプリンターを組み合わせれば、店舗がなくてもものづくりが可能なのだ。

重要なのは3Dプリンターの使いどころ

上記事例からわかるように、現在のオーダーメイド靴ビジネスでは、靴の製造工程で使う道具(靴型)や、靴の一部(インソール)のみを3Dプリンターで製造するのが一般的だ。3Dプリンターで効率化しやすい部分や、オーダーメイドする価値がある部分にのみ3Dプリンターを使用しているのだろう。

今後はさらなる自動化および低価格化のため、靴全体を3Dプリントする技術も開発されるかもしれない。

3Dプリンターによるビジネスの可能性

今回は、3Dプリンターを活用したオーダーメイドパンプスビジネスの事例を3つ紹介し、3Dプリンターで実現できたこと、3Dプリンターの使いどころなどを考察した。

今回の事例から、製造工程の一部に3Dプリンターを導入するだけでも、コスト削減やエコに効果的だとわかっていただけたと思う。3Dプリンターのメリットやデメリットを理解したうえで、ビジネスの一部に3Dプリンターを導入する選択肢は「あり」だ。

3Dプリンターを活用したビジネスは確実に普及しはじめている。これにともない、従来の常識は非常識となり、わたしたちの生活やライフスタイルも変化していくだろう。ますます熱くなる3Dプリンター業界から、今後も目がはなせない。

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化学系大学院を卒業後に組込みエンジニアとして勤務。現在はフリーランス特許翻訳者、技術系ライター、技術リサーチャーとして活動中。難しい技術を分かりやすく伝えるのが得意。

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