1. HOME
  2. 業界ニュースTOP
  3. 3Dプリンターに必要なソフトウェアとは【3DCAD編】

3Dプリンターに必要なソフトウェアとは【3DCAD編】

株式会社矢野経済研究所が調査した2021年データによると、3Dプリンタ―の世界出荷台数は2023年には37万台になることが予測されている。特に、欧米・中国を中心に航空宇宙や自動車、金型、医療、宝飾などの業種・分野で実用化、量産につながる最終製品に向けた動きが活発化している。今後は脱炭素社会実現に向けた電気自動車の出荷増加に伴う3Dプリンターでの軽量化、性能向上などさらに需要が増えることが予想される。

今後、3Dプリンタ―の活躍の場はさらに広がっていくことが期待されている。

そんな注目される3Dプリンタ―だが、実際に3Dプリンターを導入したあと、何が必要で、どんな使い方があるのかを知らない方も少なくないだろう。今回はそんな3Dプリンター初心者の方に向けて、3Dプリンターを動かすために必要なソフトウェアを中心に、3Dプリンターに必要な基礎知識をご紹介する。

3Dプリンター導入・運用に必要なもの

まず、3Dプリンターに必要なものをご紹介する。必要なものは、大きく分けてソフトウェアとハードウェアがある。ハードウェアはもちろん3Dプリンターだが、この3Dプリンターを動かすために重要なのが「ソフトウェア」である。ソフトウェアは2種類あり、設計に必要な「3DCADソフト」、設計したデータを3Dプリンターで出力するために変換する「STL検証ツール+スライスソフト」である。

今回は3DCADについて解説を中心にご紹介するが、そもそも3Dプリンターのためのデータとは何か、どのような表現方法があるかご紹介している記事もあるので気になる方は併せてご覧いただきたい。

(3Dプリンター/出典:pixabay)

3Dプリンターでデータ作成する方法

3Dプリンターで造形物をプリントするためには、まず造形物の設計図が必要となる。データを作成するのは大きくわけて3つ方法がある。

  1. 3DCADデータソフトを利用してモデリングする方法
  2. 2DCADデータを3D変換する方法
  3. 実物を3Dスキャナを利用して抽出する方法

それぞれの方法についてやり方や特徴について解説する。

3DCADデータソフトを利用してモデリングする方法

まず1つめは3DCADソフトを利用してモデリングする方法だ。体積・表面積・質量・重心などの測定に長けており、デジタル環境でプロトタイプを作成できる。この方法であればどんな造形物も自由に設計でき、正確な寸法を入れた精緻なモデリングが求められる部品のデータなどに活躍するため製造業で活用されている。

ちなみに、3DCGソフトでも3Dモデリングは可能だが、CADは設計図なのに対しCGは作図が目的と製図の目的が異なる。3DCGは主にアニメやゲーム、フィギアなど見た目の美しさが重視される場面で活躍する。ゲームやアニメは膨大なデータ量を扱う作業が多いため、スムーズに行えるように処理速度が重要視されるため、3DCADのように体積・表面積・質量・重心などのデータと紐づかず、目に見える部分の情報処理に特化している。そのため構造的に不整合なモデルも作れてしまい、3DCADと比較すると寸法面は粗くなるなど、精緻な設計が求められる部品や建物などの造形物の場合は3DCADの利用が望ましい。

2DCADデータを3D変換する方法

2つ目は2DCADデータを3D変換する方法だ。製造業界では近年、3Dデータの利用が増えてきたが2DCADデータ利用がまだ一般的だ。そのため元データが豊富にある2DCADを活用したいという人も多いだろう。しかし、変換するデータによって3Dの形状を再現できない場合もあるため手直しが必要になることもあるため注意が必要だ。

2DCADから3D CADへ切り替える際のポイントを詳しく見る

実物を3Dスキャナを利用して抽出する方法

3つ目は3Dスキャナーを利用し、現物から3Dデータを抽出する方法だ。手作業で製作したのや、過去に発売終了した製品など、そもそも2Dのデータすら残っていないケースでは、この方法が有効となる。比較的短時間で3Dデータを取得できる点がメリットだ。そのため、既製品を大量生産したい場合などに活用されることが多い。

デメリットとして、既存製品しか対応していない点と、場合によっては3Dデータの手直しが必要になる点だ。スキャンしただけでは正確な寸法まで再現することは難しく、またノイズが混じっていることも多い。精度を気にしないのであれば比較的安価でスキャナーは手に入るので手軽に3Dプリンターを始めたい人向けにはおすすめだ。

ShareLab編集部の3Dスキャンの体験レポートがあるので、気になるけど難しそう……と思っている方はぜひご覧いただきたい。

3DCADデータのメリット

(イメージ画像/出典:pixabay)

ここで改めて3DCADのメリットについて解説する。

その名の通り図面を3次元(実体)で表現するもので、1つ1つのフィーチャー(円錐や立方体のデータ)を組み合わせることで製品を作っていく方法である。専門知識がなくても見ただけで容易に形状を把握できるかどうか、実物に対する再現性が高いかどうかが重要視される。そのため、体積・表面積・重心など多くの数値データがひもづけられていることが特徴だ。

そのため、寸法が正確に作られる点が大きなメリットだ。ほかの方法では寸法がうまく作れないが、3DCADデータは様々なデータを組み合わせて構築していくことで正確な寸法データを作ることができる。そのため、機械部品や自動車の製品など精緻なモデリングが求められる場合に活躍する。

また、設計・製造工程をデジタル化して効率化したことによる納期短縮と品質の向上が実現できる。製造に関わる各種工程(解析・加工・組立・保守)をすべてデジタルで完結できるため、各工程が設計工程から並行して進行が可能になり、各種工程のスピードを高めることができる。

3DCADデータのデメリット

正確な寸法データ取得による精緻なモデリング・製造工程のコスト削減などのメリットがある一方、3DCADソフトの使い方など技術力と専門知識が必要になるため気軽にデータ作成ができない点はデメリットである。

また、実際に導入する場合は2Dから3DCADへの切り替えにおいて、どの3DCADソフトがいいのかなど社内エンジニアに確認するなどの調整も必須だ。

デメリットを聞くと導入が難しく感じるかもしれないが、最近では3DCAD導入のためのトレーニング法の手段が多く選べるようになっている。ぜひ自社の現状に合わせて導入ポイントはどこか、「2DCADから3D CADへ切り替える際のポイント」をにまとめたのでぜひ参考にしていただきたい。

3DCADソフトウェア一覧

3DCADソフトは無料から有料まで多種多様なものがそろっている。以前、ShareLab編集部がご紹介したように、無料公開しているSTLデータや、OBJデータは数多く存在している。

3Dモデリングを支援するツールとして広く利用されている3D CADだが、機能の差によってさまざまなソフトがある。特に複雑な製品設計をする際は、それに適した高度なソフトを選ぶことが重要だ。ソフトの種類としては「ハイエンド」「ミッドレンジ」「ローエンド」の3種類あり、これら大きな違いは「機能差」だ。

ハイエンド > ミッドレンジ > ローエンド の順に機能が高いCADとなり価格帯も高くなる。

機能別3DCADソフトウェア一例

ハイエンド3DCAD

ハイエンドは機能が高く、価格帯も100万円を超えてくる。その機能性の高さから、主に航空機・自動車・家電業界など製品の部品点数が多く、複雑な設計を必要とする分野で利用されている。

ソフトウェア名発売元価格特徴対応OS
CATIA Dassault Systèmes(フランス)160万円~540万円複雑な曲面形状の設定・変更が可能なだけではなく、部品点数が多いアセンブリを、ストレス無く取り扱うことができる

主にBoeing社、トヨタ自動車(株)、本田技研工業(株)、三菱自動車工業(株)等の自動車業界、造船等で利用されている
Windows
Creo ParamatoricParametric Technology(アメリカ)114万円~120万円工業デザインから生産製造設計までカバーする豊富な設計機能
主にトヨタ自動車、SHARP、SONY等の自動車・家電業界で利用されている
Windows
NXsiemens PLM software(アメリカ)要問合せCAD、CAM、CAEを統合し製品開発のプロセスをトータルサポートが可能。
マツダ(株)、日産自動車(株)等の自動車や精密機器など幅広い分野で活用されている
Windows、Mac4
図脳CAD3D V2株式会社フォトロン(日本)80万円~高度な演算能力をもつCGM™ Core Modelerを搭載し、金型設計・治具設計、解析を得意としているWindows(32bit/64bit)
iCAD SX富士通株式会社(日本)138万円~高速処理を実現した大規模機械装置向け3D CADで、品質の向上と開発リードタイムの短縮が可能
大型機械装置、大型プラント・生産ライン設備設計が得意分野。
Windows
Mastercam Design株式会社ゼネテック(日本)要問合せCAD/CAMを必要とするあらゆる業種に対応が可能。
複数のCAD/CAM関連モジュールを組み合わせて、あらゆる業種や加工に対応できるオールラウンドCAD/CAMである
Windows

ミッドレンジ3DCAD

ミッドレンジはは、低価格で使いやすさを重視した直感的な操作方法を採用されていることが特徴的だ。機能はハイエンドCADに劣る部分があるものの、主要な機能はハイエンドに劣らず、設計で十分利用できる。

ソフトウェア名発売元価格利用企業対応OS
SolidWorksDassault Systèmes(フランス)98.5万~158万家電製品・機械部品設計など、機械系の3Dモデリングを得意としており、特にサーフェスでのモデリングの柔軟性が高いことが特長

一部を編集すると他の部分も連動して自動で修正するパラメトリック機能を搭載しているため、部品数の多い製品の設計に最適
Windows
ICAD/MX富士通株式会社(日本)120~140万2次元から3次元設計への移行を容易にする混在設計環境に対応している。Windows
Solid Edgesiemens PLM software(アメリカ)180,000円/1年成形部品や鋳物などを作成するような機械設計に適している。独自のモデリング手法を装備し、高品質と安定性を実現している。Windows
TopSolidMissler Software (フランス)98万円~ハイエンド機能をミッドレンジ価格で提供をコンセプトにしており、コスパが高い。2DCADの取り込みも可能で使い勝手が良い。主に設備機械・家電製品等に活用されている。Windows
IRONCADIronCAD, LLC(アメリカ)898,000円~装置設計・治具設計・設備機械設計が得意分野
従来の3D CADでは難しいとされていた構想設計を簡単に行える点が特徴
Windows

ローエンド3DCAD(無料)

ローエンドは有料から無料までさまざまだが、今回は無料で使用できるソフトウェア一覧をご紹介する。非商用利用の場合に限り無料で使えるケースもあり、まずは無料版で操作性を体験してから、有料版を使用するといった使い方もできるので3DCADを試したい方にはおすすめだ。

ソフトウェア名発売元特徴対応OSSTL出力
Fusion 360
(非商用利用)
Autodesk(アメリカ)圧倒的にシェアが高く、このソフト一つでデザインから設計まで可能。
3DCADのモデリング機能に加えて、3DCAMやレンダリング、解析、アセンブリ、2次元図面などの機能が搭載。
Windows(64bit), Mac
SketchUp Make
(非商用利用)
Trimble Navigation Limited(アメリカ)Trimble Navigation Limited社がGoogleから3Dモデリングソフト「SketchUp」の権利を買収して公開したソフトWindows/Mac
Creo Elements
DirectModeling Express
PTC(アメリカ)ソソリッドモデリングとサーフェスモデリングに対応した履歴の無い3DCAD
元が高価な3次元CADの機能制限版のため、スケッチ機能やモデリング機能はプロ向けの高機能が備わっている
Windows/Mac
FreeCADオープンソースの3DCADであり、利用者がカスタマイズ可能。
FreeCADで作ったデータは他のCADとのデータ互換性が高い国際標準化機構(ISO)の標準規格であるSTEP での出力が可能です。
Windows/Mac/Linux

まとめ

今回は3Dプリンターを動かすために必要なソフトウェアの1つの「3DCAD」について解説した。3Dプリンターを使う目的に合わせて最適な3DCADソフトを見つけるための参考としてご活用していただきたい。

また、ソフトウェアの強みと弱みなど詳細をまとめた「3D CADソフトウェア紹介」記事もあるので併せてご覧いただきたい。


ShareLab NEWSでは、毎週月曜日に最新の注目ニュースと編集部おすすめの人気記事を選出してご紹介しております!ぜひこちらからメルマガご登録をお待ちしております!

関連情報

シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

資料ダウンロード 3Dプリンティング国内最新動向レポート

サイト内検索

関連記事

最新記事

おすすめ記事