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【通算開催10年目】TCT Japanの歩き方~国内3Dプリンター動向の現在と未来【2024年度版】

TCT Japanを主催するJTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)は今回のTCT Japan2024の開催で3Dプリンターの展示会を主催して10年目を迎える。2015年の初回開催から毎年開催し、10回目の開催となるわけだが、その間、熱狂から一転冷え込み、また近年着実に盛り上がりを高めてきた3Dプリンター・AM業界をどう見ているのか。また今年のTCT Japan 2024をどのように企画したのか。担当者を直撃した。(話し手:JCD 日比 まどか、花岡 祐子。聞き手:シェアラボ編集部 伊藤 正敏)

10年目を迎え、3Dプリンター・AM技術の”総合展”としての強み

シェアラボ編集部:この十年でどのように業界が変わったとお考えですか?

TCT日比氏:この10年間で大きな変化が見受けられます。3Dプリンターが取り上げられるようになってしばらくは装置自体への関心が高く集まっておりましたが、実際に活用・導入が広まったことで、設計やソフトウェアといった製造の前工程にあたる部分のソリューションや、後工程にあたる研磨工程や検査工程に関するソリューションへの関心への高まりを感じます。今回、TCT Japan 2024の出展者の出展製品を見渡すと、出展企業の約35%が3Dプリンター装置関連で、約65%がその周辺ソリューションを含んでいます。装置だけではない、産業としての成熟が見て取れるのではないでしょうか。

「3Dプリンター業界は装置だけではない、産業としての成長が見て取れる」と語るJCD日比氏

シェアラボ編集部:確かに、ここ数年で大きく3Dプリンター業界が変わった印象があります。どんどん装置が大型化し、材料が増え、設計の際の試作用途だけではなく、量産試作や治具の分野に広がりを見せていますし、量産部品にも利用される事例が飛躍的に増えてきました。TCT Japanさんは3Dプリンティング&AM技術の総合展と表現されてますが、そのあたりも意識されているのですか?

TCT日比氏:仰る通りです。出展企業各社とお話していても、3Dプリンターに製造業がどう向き合っていくか、製造業における3Dプリンター活用を考える際に、装置だけでではなく、前後の工程に関するソリューションが必要不可欠であるという認識が広まってきている事が伝わってきます。総合展である本展の価値がここにあると思っています。

TCT花岡氏:まだ3Dプリンターへ関心を持ち始めたばかりの方も少なくありません。我々主催者としては、総合展である本展に来場することで、3Dプリンターを活用した『モノづくりの全体像』を体感していただきたいと思っています。また3Dプリンターでのモノづくりに、すでに取り組まれている企業で毎年来場してくださる業界関係者にとっては、自社で抱える課題へのソリューションを提案する他ではなかなか会えない出展者との出会いの場となるように意識しています。

シェアラボ編集部:こういう企画側の想いは、なかなか来場者の方々が耳にすることがないので、貴重なお話です。会場づくりやセミナー企画に生きてきているとは思うのですが、具体的にはどのように会場を歩いていけば感じることができますか?

「初心者は大通りを見て大局をつかむ。経験者は小路でソリューションを発見」とおすすめの歩き方を語るJCD花岡氏

TCT花岡氏:これから3Dプリンター活用を検討していきたいと考えていらっしゃる方は、まずは大通りを回ってみてください。装置メーカーや装置や造形受託を総合的に請け負っている販売店の大きなブースが並んでいます。装置、材料、受託造形などを幅広く展示している出展者や、AM業界で活躍する豊富なノウハウを持つ出展者と話すことで、悩みを解決するための具体的なお話ができると思います。今年はブースが大型化しているので、どのブースも見ごたえがあるはずです。

シェアラボ編集部:装置やサンプル展示が並んでいるブースも多いので、見ているだけででも勉強になりますが、3Dプリンターメーカー各社の製品を扱う販売店のブースを回って自分の悩みを相談すると、装置選びの考え方を丁寧に教えてくれますよね。複数の専門家に一度に相談できるのが展示会の醍醐味ですし、できればこんな部品を作ってみたいけれど、という写真や実物をもって回ると効果的ですよね。

TCT花岡氏:そうですね。どんなことができるか知りたいという方は展示のほかにも主催者企画カンファレンスも是非聴講していただきたいです。また大通りだけでなく、出展ブースの密度が高い小路もぜひ回っていただきたいです。装置だけでなく、材料やソフトウェア、後処理技術、計測機器など特定の分野を深堀した専門的な製品・技術を展示する企業も多く並びます。装置だけでは解決できない課題や、3Dプリンター活用の中で新たに出てきた課題や新しい取り組みへの解決策やビジネスチャンスを見つけていただきたいと思っています。

シェアラボ編集部:毎年数々の展示会が開催されますが、TCT Japanにしか出展しない企業も多い印象ですし、今年初出展の企業ブースも多いようですね。

TCT花岡氏:そうですね。本展には例年出展する企業に加え、3Dプリンター業界に新規参入する国内企業や日本初進出の海外企業など、毎年多くの新しい顔ぶれの方にご参加いただいている傾向があります。今年はじめて初出展限定のトライアルブースを設けたところ、予定数より多くのご出展をいただきました。それだけ業界に動きがあるということですから、ぜひ3Dプリンター業界の現在と未来を本展の会場を歩きながら感じていただきたいです。

TCT Japan 2024 出展者一覧はこちら

3Dプリンター業界のキーパーソンを招聘した注目のカンファレンス

シェアラボ編集部:先ほどカンファレンスの話もでましたが、主催者の方が企画するカンファレンスが毎回面白くて、毎回、旬な方が登壇されているなと感じることが多いです。今年はどんな方が登壇されるのでしょうか?

TCT日比氏:今回も会期3日間終日でカンファレンスを併催します。グローバルブランドであるTCT Groupとの連携だけでなく、日本3Dプリンティング産業技術協会(J3DPA)様にもご協力いただき企画しています。大変魅力的なコンテンツになっていますので、ぜひ皆様にプログラムをご欄になってもらいたいです。初日は「3Dプリンティング/AM市場 各国の展望と事業化機会」をテーマに錚々たる方々を招聘いたしました。お一人目として、3Dプリンターの市場規模を策定する際に多くの企業が参考にしている「ウォーラーズレポート」の主執筆者であるTerry Wohlers氏にご登壇いただきます。全世界での3Dプリンターの出荷台数や活用用途に詳しいWohlers氏から、AM業界のグローバルな展望とAM技術の潜在的な可能性と市場予測について語っていただきます。

シェアラボ編集部:ウォーラーズレポートの著者であるWohlers氏が来日されるんですね!ここ数年の業界参入を考えた企業はほぼ100%ウォーラーズレポートを読んでいると思うので、業界に大きな影響を与えた著者の話が聞けるのは非常に期待が膨らみますね。

TCT日比氏:Wohlers氏には、市場動向だけでなく、「AM活用による競争上の優位性、革新的な考え方、新たな収益源を生み出す事例」についても触れてもらいます。また、3Dプリンターや関連技術による事業化機会について、ボストンコンサルティンググループ(BCG)のWilderich Heising博士よりお話いただきます。試作から製造へ、3Dプリンティング技術の活用幅を広げていく際の課題と、どう課題を乗り越え利益につなげるかに関して、電子部品会社を例に挙げ、SKU単位で3Dプリンターによる部品製造が可能か判定するスクリーニングツールを活用した部品特定についてのケーススタディや、実際の取り組み方を解説いただきます。

シェアラボ編集部:BCGといえば、世界的に知られている戦略系コンサルティング企業ですよね。その中でもパートナーを張る頂点に近い凄腕がどう3Dプリンターや周辺技術を語ってくれるかは非常に興味があります。めったに聞くことができない顔ぶれですね。

「日本でお話をなかなか聞くことができない方をお呼びできました」と笑顔で語る日比氏

TCT日比氏:はい、日本でお話が聞ける機会は、なかなか無いと思いますので、ぜひ多くの方に聴講いただきたいと思っております。さらに、国内素形材分野の政策を主導する経済産業省 製造産業局素形材産業室の星野昌志室長にも今回ご登壇を承諾いただきました。日本の素形材産業の展望や金属積層造形技術への期待をお話いただきます。

シェアラボ編集部:素形材分野は日本のお家芸ともいえる世界的に競争力の高い分野ですから、その政策を主導する室長クラスの方のお話は今後の方向性を考えるうえで、是非伺ってみたいです。

TCT日比氏:こちらのカンファレンスは全て事前予約制で現地聴講のみとなっています。お席に限りがございますので、ご興味のある方は、ぜひお早めに聴講登録をお願いします。

シェアラボ編集部:初日のセミナー、すごく熱いですね。なかなか聞くことができない内容になっていると思います。

TCT日比氏:ありがとうございます。ただ熱いのは初日だけではありません。2日目は「アプリケーション/応用事例」をテーマに、自動車業界・医療業界からキーパーソンをお呼びしています。「自動車アプリケーション向けのジェネレーティブ・デザイン最適化と持続可能な積層造形」と題して、北米日産テクニカルセンターのNanzhu Zhao博士にご登壇いただきます。ジェネレーティブ・デザインを設計に活用し、3Dプリンターで製造すると軽量化、性能向上、部品の統合、製造プロトコルの合理化、多機能材料の統合などの分野で大きな成果を上げることが期待されています。実際にZhao博士から設計(治具と最終部品に関する最適化)、製造(自動車用途の詳細なコスト分析を伴う積層造形技術の組み込み)、持続可能性(自動車鋳造アルミニウム廃棄物のアップサイクル)という3つの観点から研究成果を発表いただきます。

シェアラボ編集部:抽象的な方向性のお話だけではなく、実際のコスト分析などをしっかり行っている成果を共有いただける機会はそう多くありません。かなり貴重なお話ですね。

TCT日比氏:取り組み方針という点で、デンソー 先進プロセス研究部の寺 亮之介氏から、「 AMによる自動車部品量産を目指して」と題し、実際に進めていらっしゃる「将来の生産システムの変革を目指してAMが抱える課題を解決するための取り組み」についてお話いただきます。「自動車部品ユーザー視点でのAMの目標値」や「AM普及のための開発アイテムの最新状況」を共有いただけますので、こちらもぜひ注目いただければと思います。

シェアラボ編集部:レクサスの量産部品にAM品が採用されるなど、トヨタの取り組みが加速している印象ですし、トヨタグループの中でも中核的な位置づけにあるデンソーさんのAMへの取り組みに関しては、業種問わず聞きたい人が多いはずです。自社だけで格闘せずに、一緒にモノづくりをしているパートナー企業と課題感を共有し一緒に解決を探っていく姿勢も学んでいきたい点ですね。

「初めての方こそ現地で装置や材料に触れ、何ができるかを感じてほしい」(JCD花岡氏)

TCT日比氏:国内製造業における企業秘密の壁はありますが、各社それぞれ、大変先進的な取り組みを行っていらっしゃいます。そういった知見を出来る限り共有いただくことが国内3Dプリンティング市場の更なる発展につながるのではないかという想いで、事例や取り組み内容の情報発信をお願いしてきました。寺氏にはこの想いにご賛同いただきこの度ご登壇いただける運びとなりました。

シェアラボ編集部:業界を盛り上げるという言葉は綺麗ですが、取り組み方がわからない言葉で私たちもメディアとして悩むところなのですが、こうして登壇する方々のように、自社の取り組みを情報共有していくことがいま非常に求められているなと改めて思いました。こうした生きた情報から学んで自社ならではの取り組みを行い、その成果をまた発表していくという行動と情報共有が「盛り上げる」という事なのかもしれません。

TCT日比氏:3日目は例年多くの関心を集める「先端研究開発事例」をテーマに、R&D分野の取り組みにフォーカスを当てています。

シェアラボ編集部:いままでご紹介いただいたカンファレンスのテーマは業務として設計や製造を行っている方からすると、距離感のあるテーマだったかもしれませんが、3日目は非常に技術よりのテーマになっていますよね。3Dプリンター活用の全体感をつかみやすいJ3DPAの山口氏の「なぜ簡易なFDM(MEX)ではPLAはうまく造形できるのにABSだと失敗するのか?」など紹介いただける内容が実践的で、今まで3Dプリンターに触れてこなかった方にもすぐ役立つ知識になっていますよね。

TCT日比氏:3Dプリンター基礎知識のお話は、前回も立ち見が出るほど非常に人気のテーマでした。大学で最先端の研究を行う先生方をお呼びし、材料や造形方式に関する解説や最新の開発状況や取り組みに関してご紹介をいただきますので、技術動向を一気にキャッチアップしたい方にぜひおすすめです。

シェアラボ編集部:同時間帯に出展者による発表もあるので、非常に時間の使い方に悩むところです。

TCT日比氏:展示会は非常に情報量が多いので、ぜひ複数人でお誘いあわせの上、役割分担をして最新の情報を最大限収集していただければと思っています。TCT Japan 公式WEBサイトにて来場登録受付中です!

まとめ・・・TCTの歩き方

今回、大規模展示会を企画する主催者の方から直接展示会に関する思いや見どころを語っていただいたが、これから自部門で試作用や治工具用に3Dプリンターを導入しようと思っている人、グループ全体の取り組みを推進しようと思っている人、新規事業として3Dプリンターを活用した受託製造に取り組もうとしている人の3つのユーザー像をイメージして回り方を考えてみた。

1:自部門で試作用や治工具用に3Dプリンターを導入したい人

まず大きな意味での業界の流れを俯瞰するために、大通りをめぐって大きなブースを眺めながら、造形サンプルや装置の傾向を把握する。すでに使いたい材料や作りたい部品の大きさにイメージがある場合は、各ブースで聞いてみる。特にサンプルを触ってみて質感や表面性を確認してみよう。その後、サンプルを作成するのにかかる概算金額の目安や相談できる相談先を名刺交換しながらピックアップしていく。展示会終了後に先方からメールなどでご機嫌伺が届くだろうが、こちらから見積もり依頼を先にメールしておくと後回しにならずに済むので、おすすめだ。実際に自分が作っていくことになる部品を想定して、説明員として立っている現場の人に話を聞くようにしていこう。スペック表を後で見るよりも、現場で実際にふれて自分の肌感覚を養っておきたい。

2:グループ全体の取りまとめや推進担当者になっている人

ぜひカンファレンスに参加していただきたい。有料級のセミナーばかりなので、メモを取りながら市場の動向や技術の動向に触れ、社内に共有してほしい。シェアラボでも一部のセミナーは参加し報告する予定だが、やはり生の発表に触れることで市場の熱に触れることが重要になる。セミナー後に講師と名刺交換する機会がある場合は積極的に交流しに行こう。セミナーの合間に大通りを中心にトレンドを把握するために出展ブースを見て回ろう。どんな材料でどんな大きさのものが造形できるのか。事例としてどんな企業が取り上げられているかを見て、自分の会社が所属する業界や取引先の業界に近い例がないかを見ていくと、情報量に圧倒されずに、必要な情報を見つけ出すことができるはずだ。

また社内で関係者を啓蒙する際に、有識者を呼んでセミナーを開催したい場合もあるだろう。3Dプリンター業界は比較的気軽に社内勉強会に協力してくれる企業が多いと言われているので、是非そういった観点からも各ブースで積極的に協力者を開拓しておきたいところだ。

3:新規事業として販売やサービス提供を行いたい企業

すでに100社以上が出展する3Dプリンター業界だが、まだまだ市場は成長期。社内的に市場規模を報告する必要がある場合は、ぜひ初日のカンファレンスは抑えるようにしたいところ。また会場を見て回る際は、居並ぶ出展企業各社は競合というよりも業界を盛り上げるためのパートナー企業として見てみよう。こっそり視察したいという方も多いかもしれないが、3Dプリンター界隈は、装置販売や造形受託などの面で協業できる機会がある発展途上中の業界でもある。ほかの製造加工業と同様、3Dプリンター業界でも、受託加工案件で仕事の出し合いをしている事例も多い。積極的に顔を売っておくと思わぬビジネスチャンスがあるかもしれない。

打ち出し方や取り組み方を学ぶ上では、大通りに面した総合的な展示内容に触れておきたいが、小路に密集する専門企業のブースでもパートナリングの機会を探っていくと、後々差別化に悩んだ際に協業先として検討できることもあるだろう。丁寧に会場を回ってほしい。

当日はシェアラボ編集部も会場内にブースを構えている。こんな情報がほしいと相談いただければできる限りご対応していくので気軽に立ち寄っていただきたい。

TCT Japan事務局 

株式会社JTBコミュニケーションデザイン
事業共創部 トレードショー事業局内

〒105-8335 東京都港区芝3-23-1セレスティン芝三井ビルディング
〒541-0056 大阪市中央区久太郎町2-1-25 JTBビル 8階

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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