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フォームネクストフォーラム 東京 2022速報レポート

神戸工業試験場 圷(あくつ)勝幸氏

2022年9月27日(火)ー28日(水)と東京の浜松町で開催された3Dプリンターを活用した製造技術に関する専門展示会「フォームネクストフォーラム 東京」 の速報レポートとして業界団体の展示内容をお届けしたい。

今年の傾向は、具体的事例の展示が増えた点と複数企業の共同出展が目立った点だ。 一般社団法人 AM協会、ひょうごメタルベルトコンソーシアム、一般社団法人 日本3Dプリンティング産業技術協会(通称:J3DPA)などの業界団体としての出展が見受けられたが、実際にコラボレーションが生まれた成果を展示している事例も散見された。産業としての3Dプリンターの生態系が徐々に生まれ始めたことを伺わせる事象だ。(写真は株式会社神戸工業試験場の圷氏)

AM業界で進む企業間の協業ーひょうごメタルベルトコンソーシアム

フォームネクストフォーラム 東京に初めて出展したひょうごメタルベルトコンソーシアムの展示では、企業間のコラボレーションの事例が展示されていた。

ひょうごメタルベルトコンソーシアムは、金属材料研究で実績のある兵庫県立大学の新素材研究センターを中心とした金属AM推進のためのコンソーシアムで、瀬戸内海沿岸の金属加工メーカーなどが参加し、その規模は100社を超える国内最大級のコンソーシアムだ。このコンソーシアムは試験造形機の提供や勉強会、シーズ・ニーズマッチングなどを行っている。

さびやすいS20C材の造形物を着色・コーティング : ハニー化成/山陽特殊鋼

さびやすいS20C材の造形物を着色・コーティング : ハニー化成/山陽特殊鋼

ゴルフのパターを開発する際に、軽量化や強度の向上などにも取り組んだ事例だが、意外にもチタンやステンレスなどの材料ではプロゴルファーの最も大切にする感性価値「打ちごたえ」の面でNGがでた。使い心地の面で期待に応えたのは汎用材料だったS20C材(炭素5%配合の鉄材)だったという。汎用材であるがために金属AM用のパウダー材料がなかったため、山陽特殊鋼に3Dプリンター用の材料パウダーの開発を依頼し、ひょうごメタルベルトコンソーシアム保有の金属3Dプリンターでゴルフのパターとして造形した。

そのままではさびやすいS20Cだが、ハニー化成が着色・コーティングした。塗装することで防錆効果を付与し、機能性も見た目も向上させた取り組みになったという。

発注者のあいまいな検収要件をリスクなく可視化:神戸工業試験場

ひょうごメタルベルトコンソーシアムの展示を見るだけでも、実際にAMを使った造形案件に複数の企業が新しいアプローチを行っていることがわかる。しかし実際の製品に関して求められる品質保証に関してどのように対応しているのだろうか。そんな疑問を持ったところでちょうどいい展示コーナーが用意されていた。材料試験を行う神戸工業試験場のブースでは、複数の材料や部品の評価を行う際の試験片や各種の試験の展示が行われていた。

神戸工業試験場 圷(あくつ)勝幸氏

神戸工業試験場の試験担当者はこう語る。「AMに関する相談はここ数年で間違いなく増えています。『3Dプリンターでこの部品をこの材料で作ってほしい、こういう用途で利用する』というあいまいな要件で発注者から提案を求められたサプライヤーさんが、『どうやって発注者と品質の目線合わせをしたらよいのかわからない』と悩んでいらっしゃるようです。弊社で試験方法や結果の考え方をアドバイスすることも増えてきました。」(神戸工業試験場 圷(あくつ)勝幸氏)

金属3Dプリンターは内部に隙間が生まれやすい工法だ。密度を試験項目に設定すると非常に苦労する場合でも、強度や金属疲労に関する発注者の懸念を払拭できる試験を品質の要件に設定することで回避できるという。嘘のない上手な手の抜き方は現場ノウハウだと思う。新しいAM工法で商売を進める際、いち早く自社ノウハウを蓄積させるには、こうした各種分野のプロフェッショナルに知恵を借りることが必要になってくるだろう。

国産DED方式の3Dプリンター:村谷機械製作所

一般社団法人 AM協会も複数企業のパネル展示が見受けられた。今回特に目をひいたのが、国産でDED方式の金属3Dプリンターを出展していた村谷機械製作所だ。

村谷機械製作所の長井久雄氏

「母材になる金属になるべく熱の影響を与えないようにパウダーの噴射方法を調整しています。サイコロのような形状の場合、角がたれやすいのですが、造形状況を計測し加工にフィードバックする仕組みを取り入れ、角のたった形状を造形できます。」と語る国産DED方式の金属3Dプリンターを製造する村谷機械製作所の長井久雄氏。

同社はカスタムオーダーの生産装置を手掛ける専門メーカー。ノウハウを活かして数年前から3Dプリンター製造に取り組んでいる。

DED方式の金属3Dプリンターは母材のコーティング、金型補修などを行うことができるため、自社生産ラインの運用保守時にも力を発揮するだろう。

3Dプリンターメーカーの指定材料だけでは足りない!顧客の要請で材料開発も進む

従来は金属3Dプリンター用の材料といえば、メーカーの提供する純正品での造形でなければ、保証を受けることができないという印象が強かったがこの状況が変わりつつある。

海外では航空・宇宙、国内ではステンレス系: カーペンターアディティブ

インコネル625 カーペンターアディティブ

日本と海外では人気の材料が異なるようだが、3Dプリンターメーカー指定材料以外の材料を求める声は、材料メーカーに多数寄せられているようだ。日本と海外両方の材料事情に詳しい出展者によると「海外では航空・宇宙分野向けの軽量化をAMで行う動きが盛んです。材料もインコネルなど材料でメーカーの用意がない材料を求める声が高まっています。国内でもマルエージング鋼などに対する需要があり引き合いは増えていますね」(カーペンターアディティブ山名修一氏)

真球に金属パウダーを加工。3Dプリンター用MMC材も製造可能:ニイミセラミックス

MMC材料 金属セラミックス複合材料

ひょうごメタルベルトコンソーシアムのブースでもより高性能材料をもとめる利用者の声にこたえている企業の出展があった。ニイミセラミックス社は材料粉末の粒径・粒形を整えるために、高周波誘導熱プラズマを用いた約1万度の熱処理を行うことで、粒径を均一にし、球形に整える独自の技術を提供している。また従来製造が難しかったMMC材料(金属セラミックス複合材料)材料の生産ができるということで、新材料での研究に取り組む企業からの引き合いが増えているという。

協業の重要さが感じさせられたフォームネクストフォーラム 東京

需要があるところに商品やサービスが生まれる。とはいえ、まだ新しく難易度の高いAM技術を用いた工法に対して、自社単体で取り組むのではなく、企業間が協業し果敢に取り組みを行う姿が徐々に表に出始めている。

かつて大量生産時代に強い日本の製造業を支えた「系列」は生産技術の導入にあっても系列の頂点にあるメーカーからトップダウンで落とし込んでいくアプローチで精緻化されてきた。製造拠点の海外シフトにより、系列が解体されていく傾向にある中、サプライヤー各社が自助努力で新しい市場を開拓しなければならない。AMに関するすべての設備、技術者を自社内で賄うことが難しい立ち上げ期には、特に相互の協業は不可欠の要素だと思われる。そうした取り組みをすでに行っている企業の情報発信が展示会の場では披露されていた。

伊藤 正敏
シェアラボ編集部

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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