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AMは今年いくつの「掛け算」をつくれるか?

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。

今年もご愛読よろしくおねがいします

新年あけましておめでとうございます。昨年より始めたこのコラムも、おかげさまで新しい年を迎えることが出来ました。このように続けていけるのも、読んで下さるみなさんあってのことですので、今年も引き続きご愛読いただき、お会いする機会があればぜひご感想でもご批判でも結構ですので、お聞かせください。引き続きよろしくお願い致します。

2025年のAM界はどうなるか?

2025年が始まりました。私個人にとっては年男の年(何回目?)です。巳年であることから、あちこちで「脱皮して成長する年」という、ちょっとお決まりのあいさつが何度も報道されていました。AMは「重ね着」なので逆のようですが、海外では元日以降AM界の様々な動きや、2025年の見通しの発信がありました。概ね、昨年多く出てきた業績悪化、関連する買収合併、知的財産権の問題、高金利下での設備投資低調などによる落ち込みから、政治経済社会の不安要素はあるものの、装置、材料、ソフトウェアそれぞれの変化と進化が見込まれ、安定ではないながらも成長が予測されているようです。近年ますます変動が大きくなって、1年先の予測は当たらない、または意味のないことかもしれませんが、願望や希望を含めて考えてみることは悪いことではなく、必要だと思います。それもあり、ShareLabでも編集部員による「2025年のAM界がどうなるか」についての新春座談会動画を収録し、近日YouTubeチャンネル「ShareLabTV」で公開予定ですので、そちらをぜひご覧ください。

AMは今年いくつの「掛け算」をつくれるか?

年明けの楽しみは皆さんそれぞれあると思います。私は実は実際行ったこともなく、それほど熱心でもないのですが、毎年1月全米民生技術協会(Consumer Technology Association、CTA)主催、アメリカ ラスベガスで開催される電子機器の見本市「CES」でどのような新しい技術や製品が出てくるのかが年明けの楽しみのひとつです。だいぶ前には3Dプリンターも出展されて話題になったりしていましたが、最近は減った代わりに、今回もAM製部品による実働プロトタイプや市販品はおそらく普通にたくさん展示されたのではと勝手に想像しています。また今回の話題のひとつが、日本の自動車メーカーの出展・発表が戻ってきたことでしたが、トヨタ自動車株式会社 豊田章男会長のCES 2025 プレスカンファレンスにおける、Woven City(ウーブン・シティ)に関するプレゼンテーションの配信動画は、いろいろな面で日本のモビリティ産業や技術開発の世界における役割や、AMが役立つであろう製造や技術分野の参考になると思いました。約15分の英語でのプレゼンですが、和訳全文は下記で読むことが出来ます。https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/41969727.html
動画の12:55辺りからのスライドに、日本語で「掛け算」と表示され、「掛け算による発明」について話されていていたこどが印象に残りました。

私は、AMは「掛け算」に使うのに良い製法だと思っています。「新しくすごい、増やす」だけでなく、原価低減、不良低減、ムリムラムダ含めた「減らす」ことも含め、多くの異なる人によるアイデアを速く「カタチ」にして伝え合う、試す、実際に使うことで掛け算を加速する、または熱交換器のように、それが機能を発揮することで、複雑なシステム全体の性能が掛け算的に向上するような使い方に合っているからです。逆に言うと、「足し算引き算だけ」に使うと投資や工数対効果がまだ合わないことが多い、コストや性能の現状とも言えるでしょう。日本でも「掛け算による発明」にAMがどれだけ使われるか、極端な例で言えば「Woven City」内でどれだけAM装置、またはAM製部品や製品が使われていくのかが2025年の日本のAM活用度合いのひとつの目安になり、またその先の分岐点になるのではないでしょうか。今年も日本で、海外で、どれだけ多くのAMによる掛け算の例が出てくるか楽しみですし、出来るだけShareLabでもお伝えしていきます。

余談ですが、動画に映っていた自動運転によるタンデムドリフトはすごいと思いましたし、「環境、安全」ばかりじゃつまらないでしょ?というトヨタらしさ、豊田章男会長らしさが出ていて、好きな部分でした。またロボットの部品もAM製ではないか、そうあってほしい(あるべき)と勝手に思って見ていました。もし「Woven City」内でAMが使われているかをご存じの方がおられたら、ぜひ教えてください。

2025年がみなさんにとって良い年になるようお祈りするとともに、ShareLabを通じてそうなるような情報を提供していきたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。

ShareLabニュースにもう一言

歯周病治療、3Dプリンターで欠損部再生 広島大病院のグループとサイフューズ社が技術開発

年末年始休暇中、昨年最後に配信したニュースですが、国内のAM界では最近特に歯科医療や健康関連への活用のニュースが増えているようで、今年もさらに増えていくのではないかと思います。これも単純に3Dプリンターやメーカーだけでなく、医師、研究者、患者や認証関係者含め、それぞれの技術やアイデアが掛け合わさり、これで健康な生活を送れる人が増える価値は3Dプリンターの何倍にもなる、「掛け算」の例だと思います。

Ursa Major社とRTX社がAM技術を活用した次世代長距離ロケットモーターの飛行試験に成功

これは年始最初に配信したニュースでしたが、日本では昨年末にJAXAが開発中の小型固体燃料ロケット「イプシロンS」2段機体の燃焼試験中爆発と原因についての報道があり、固体燃料ロケット開発の難しさを素人ながら感じていました。世界情勢を背景にした軍需用の開発という、本来使われない方が良い製品ではありますが、おそらく航空宇宙にも転用されると思われ、上記の豊田会長の講演にも出てきますが、2025年は今まで以上に宇宙輸送や利用の開発競争がアツくなり、そこにAMが使われるニュースも増えるのではないでしょうか。ロケット開発も掛け算の塊のようなものでしょうし、結果として生まれる価値は、使われたAMの何倍も大きくなると思います。

ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!

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