AMは「マルチポテンシャライト」も作る!


イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。
AMは「マルチポテンシャライト」も作る
暦の上での「大寒」も過ぎ、道や公園の樹々を見ているとつぼみがつき始めていたりして、冬の峠は越えたかなと思うこの頃です。とはいえインフルエンザに罹った人の話も聞きますし、ニュースでも花粉が飛び始めているとのことで、のんきに春を待つとはいかないようです。政治経済金融においても、アメリカの大統領が変わることは去年からわかっていましたが、その後何が起こるのか、何か起こるけれどもその振れ幅や日本への影響はわからず、本格的な春になるころには、さてどうなっているでしょうか。もちろんAM界隈も無関係ではないと思いますし、それとは別にビジネスの面でも技術の面でも、どうなっていくのかが見えにくい、不安定な状況はしばらく続きそうです。だからと言って何もしない、様子見するのはリスクにもなると思いますので、ShareLabでも特に春にかけて、展示会TCT Japan(1月29‐31日 東京ビッグサイトで開催)の事前、会期中・後の情報や、海外イベントの情報などを多く提供する予定ですので、アンテナ感度を高くし、情報を得ながら変化をチャンスに変えていくことは大事だと思います。

今年のAMがどうなっていくかを見通す機会のひとつとして、「AM研究会第11回委員会」に参加しました。内容は下記記事を参照ください。

その中で私もAMビジネスに起きつつある変化について、講演をしました。以下はその時のスライドの1ページです。

ここでは内容について細かくお伝えしませんが、よく考えてみると、上図の右側は他の加工技術産業でも起きてきたことで、今までが特殊で、AMがあるべき方向に向かっている良い傾向と捉えています。これにあてはまる内容や事例が他の講演でもいくつかありました。その中で、新しく知ったのは「マルチポテンシャライト」という言葉と、若い世代にこれを目指している、または既になっている人が増えているということでした。ネットで検索するとそこそこ広まっている言葉で、自分の好きな、得意なことに次々挑戦し、異なる複数の分野で仕事をして暮らしていく人のようです。講演された、デジタルハリウッド大学 星野氏の解説では「昔は器用貧乏と呼ばれた」「いろいろなものになりたい、何屋かわからない」とのことですが、「マルチタレント」とも少し違うようで、私のような昭和世代の「二兎を追うものは一兎をも得ず」とか「一つのことを極め続けることが美徳」のような価値観ではマイナスに捉えてしまいがちですが、ふと思い返すと最近の若い著名人にもそういう人が増えているようですし、これまで見てきたAMユーザーの中には、そのような人がたくさんいました。例えば下の記事の成田氏も、学術研究者でもあり、起業家でもあり、またビジネス起点は「エネルギー課題」という「コト」であり、解析設計のソフトウェアが重要なケースです。

また特にCG、ゲーム、ファッション、アート、建築でAMを活用している人は、デザインのセンスや技術を持ちながら、コンピュータプログラミングもできる人が多く現れています。星野氏がおっしゃるように、この不確実性の時代には「マルチポテンシャライト」が適している、または必要なのでしょう。同時にこういう人がチャレンジしやすい、または短期間で仕事にできる背景には、3D形状を作るデジタル技術とツールが進化し、それをカタチや商品にするAMも、始めるきっかけにもなり、「マルチポテンシャライト」を作る、またはそれを仕事にできる道具とも言えます。もう既に生成AIやコンピューテーショナルデザインは3D形状をデザイン、設計するのに個人や企業で急速に使われ始めています。おそらく既にみなさんの会社や組織で働く方の中にも、実はマルチポテンシャライトだったり、そうなる秘めた才能を持った方もいるのではないでしょうか?そのような方が、AMによってマルチポテンシャライトになり、経済や社会を良くする活躍をされることになれば、AMを使う価値も大きくなるでしょうし、そうなることがとても楽しみです。

このAM活用事例は、すごい革新的とか、驚くような形状とかではないですが、鋳造という歴史が長く、確立されていると思われる技術にAMが活用されることで、その技術がより良く使われるようになるという、個人的にはすごく素晴らしいと思ったニュースでした。「鋳包み材」は知らなかったので勉強不足を恥じるばかりですが、この使い方と形状設計は、過去にこのコラムでお伝えしたDwAMの好例であり、このような課題をAMで解決改善する可能性は、まだまだ日本にも埋もれているのではないでしょうか?

こちらは上のニュースと対極と言いますか、新しく、これからを変える技術がいよいよ世の中で使われるようになるという点で素晴らしいと思ったニュースでした。生成AIによる3Dデザインツールのひとつで、早速試してみようとしましたが、既に処理制限を超えてしまっていて、ログイン待ちで試せていません。今年はこのようなツールがどんどん使われ、これに伴うAM活用も増えると思います。
ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!