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海外発の新工法から金属3Dプリントの後処理まで ― TCT Japan 2023レポート第2弾

NTTデータザムテクノロジーズの3Dプリント造形物、ロケットエンジン

2023年2月1日(水)から3日(金)の3日間、東京ビッグサイトでTCT Japan 2023が開催された。TCTは3DプリントをはじめとしたAM技術の総合展示会で、最新の3Dプリンターや設計支援ソリューション、新材料や後加工まで幅広い内容が取り扱われている。

今回ShareLab編集部では、樹脂と金属3Dプリンティングの最新動向を探るため、5つのブースを取材。TCT Japan 2023の会期中に公開した速報レポートに続いて、本稿では材料や製法、ソフトウェアの進化によって、さまざまな産業で実用化が進んでいく現状をお伝えする。

>>速報! TCT Japan会場で見つけた最新トピックス ― TCT Japan 2023レポート第1弾

>>まだまだあった!TCT Japan 2023の見どころ報告 ― TCT Japan 2023 レポート第3弾

樹脂+補強繊維で物性を向上させるMarkforged

アメリカマサチューセッツ州に本社を置くMarkforgedは、最終製品や部品を製作するための3Dプリンターや材料を開発する会社。TCT Japan 2023の会場では、出力後に脱脂と焼結を必要とする金属3Dプリンター「Metal X」のほか、カーボンファイバーなどの連続繊維材料を樹脂と共に出力することで、造形物の強度を大幅に向上させる「連続繊維対応樹脂3Dプリンター」が展示されていた。

Markforged造形ヘッド部分

これらは材料押出法(MEX方式)をベースとしており、メインとなる樹脂のフィラメントを加熱しながら出力していく過程で、カーボンファイバーなどの連続繊維材も織り交ぜていく方式。鉄筋コンクリートの組み合わせのように、繊維材を骨組みとして、樹脂材を外に覆い被せるようにして造形されていく。利用できる素材も豊富で、たとえば「X7」という機種では、マイクロカーボン強化ナイロンフィラメントであるOnyxや、硬めのゴムのようなSmooth TPU 95Aをはじめとした7種のベースプラスチックに、カーボンファイバー、グラスファイバー、柔軟性と耐摩耗性を持ち衝撃に強いケブラーなど5種の補強材を組み合わせることが可能。素材はそれぞれ曲げ応力や歪みの実験データも公開されているので、用途に合わせて選択して組み合わせることができる。

材料押出法の3Dプリンターは素材と機材さえあれば造形できる手軽さが利点だが、他方で利用できる素材には制約があり、完成品の造形強度は金属プリンターなどに比較すると劣る傾向にあった。Markforgedはカーボンファイバーなどの繊維素材を樹脂に補うことによって、出力の手軽さを損なわないまま、造形物の強度を向上させることに成功している。 

Markforgedの造形物

この方式が発表されてから時間が経ち、利用可能な素材の幅が増えたことに加え、ソフトウェア側の進歩もめざましい。Markforged装置専用のソフトウェア「Eiger」は、3Dモデルを3Dプリント用のデータに変換するスライス機能を担うもの。求める強度に応じて補強材の位置や密度を自在に設定できるため、3Dプリント後の強度を自在かつ手軽にコントロールできるようになっている。また、機種によってはAIプラットフォーム「Blacksmith」と接続することで、樹脂を出力するノズルの先端に搭載されたレーザーユニットを活用し、出力と同時に造形品質の確認が行えるようになる。造形エラーが出ていないか、あるいは過不足なく出力できているかなど、検査という手間のかかる要素をソフトウェア上で確認できることは、高度な品質管理が求められる生産プロセスにおいて、大いに効果を発揮するだろう。

こうした素材とソフトウェアを用いて作られるのは、工場で利用するための治具や、従来の樹脂造形では対応困難だった構造部品など。強度と軽量さを兼ね備えた造形が可能になったことで、アルミニウムなどの金属部品を代替している事例も紹介されていた。材料押出方式ならではの手軽さによって、オペレーションコストを大幅に上げることなく、開発から実用化までのスパンを短縮できることは、魅力的かつ現実的な選択肢と言えるだろう。

独自造形技術で高機能の液体樹脂を扱うCubicure

オーストリア・ウィーン発のスタートアップCubicureは、特許取得済の独自3Dプリント技術「ホットリソグラフィ(Hot Lithography)」によって作られた、最終製品のコネクターを展示。液体樹脂をレーザー光などで固めていく液槽光重合法という造形方式では、固定されたタンクに溜まった光硬化性樹脂にレーザーを照射し、一層ずつ固めていくことが一般的だ。それに対し、Cubicureの3Dプリンター「Creion」では、液体樹脂を一度シート状にしたうえで、それをベースに加工していくという独自の造形プロセスを取っている。この手法をとることによって、より粘度の高い液体樹脂を扱えるようになり、難燃性・耐熱性・耐薬品性・高精度という4つの要素を兼ね備えたアイテムが造形できるようになったという。

Cubicure光造形方式の造形物、BOSCHの電子コネクター

Cubicureは液体樹脂素材自体も開発しており、「ThermoBlast」は熱に起因する課題を解決するために作られたもの。短時間であれば300℃まで耐えられ、優れた電気絶縁性も持つ、信頼性の高い素材だ。エレクトロニクス業界のコネクターに適した「Connection FR」は、難燃性があることはもちろん、緻密な造形でも柔軟性を失わないため、精密な機器でも活躍が期待できる。他にも、嵌合と解放を繰り返し、継続的な負荷がかかるコネクターなどの電子部品に特化した素材がラインアップされていた。

Cubicureの造形物

電子部品のコネクターといえば、あらゆる機械に必要とされる重要なパーツ。世界的な供給不足によって部品調達が困難になっているようなニュースもあるなか、最終製品として活用可能なコネクターを生産できるCubicureの製品群は一定の需要を見込めるだろう。海外ではすでに複数のメーカーが実際に活用しており、会場ではBOSCHやWeidmullerでの使用例が展示されていた。日本企業は規格で定められた高い品質を求めるため、まだ代替が進みづらい部分もあるようだが、少量・中量生産において有効な手段として広まっていく未来を感じられるブースだった。

産業レベルの金属3Dプリントを実装するGE Additive

会場には多くの金属3Dプリント造形物が展示されており、もはや珍しいものではなくなったことが感じられる。なかでもひときわ大きなブースを構えていたのが、GE Additiveだ。

GEの3Dプリント造形物、製造装置用アーム

ブースには製造装置用のアームや燃料ノズル、プロペラギアボックスやタービンブレードなど、さまざまな産業で利用される金属部品の造形例が展示されていた。GE Additive はドイツに広さ40,000平方メートルのAM施設を開設するなど、本格的な導入を進めており、その規模と勢いが感じられる。 

GEの3Dプリント造形物、プロペラギアボックス

各種造形サンプルの他、映像とパンフレットで金属3Dプリンターの種類や導入シーンが取り上げられ、大型部品の造形から量産に特化したもの、ラインとして導入することを想定した機種まで多くの事例が紹介されていた。造形手法の改善によって速度が上がったことで、ムラのない加熱が可能になり、大型でも安定した強度が実現できるようになったことが近年の変化だという。

GEの3Dプリント造形物、高圧タービンブレード

造形手法も電子ビームを用いたものや、結合材付きのバインダージェット方式などさまざま。粉末材料の提供もおこなっているGE Additiveは、金属3Dプリンターを用いた大規模な製造やライン化を想定する企業にとって、心強いパートナーになることだろう。

航空宇宙領域で実用化を進めるNTTデータ ザムテクノロジーズ

金属の3Dプリントが最終製品に使われている、という点では日本のNTTデータ ザムテクノロジーズ(XAM)にも触れておきたい。金属3Dプリントで高い世界シェアを誇るEOS社の代理店として、25年以上にわたって国内で事業を展開するXAM。金属3Dプリント装置の導入からメンテナンス、アプリケーション開発や受託製造など幅広く取り組んできた企業だ。

NTTデータザムテクノロジーズの3Dプリント造形物、金属

そうした積み重ねが、近年では航空宇宙業界での展開につながっており、会場ではJAXAが次期基幹ロケットとして開発中の「H3ロケット」において、パーツの各部に金属3Dプリントによる造形物が採用されていることが紹介されていた。現時点では造形の自由度を生かした配管などに利用されているが、複雑な形状の一体化で製造と管理のコストを落としたタンクなどの開発も考慮に入れているという。XAMは航空宇宙分野向けの品質管理規格である「JIS Q 9100」認証も取得しており、こうした航空宇宙業界での実用化は、さらに着実に進んでいくことを予感させた。

また、XAMのブースでもう一つ目を引いたのが、後処理用の装置だ。金属3Dプリントの多くはその造形手法の特性上、表面がざらついた仕上がりになりがち。機械の組み立て時に使う治具や、内側で目に触れない部品ならまだしも、外装や人肌に触れる部分では、その粗さがネックになってしまう。XAMが日本総代理店契約を締結している、スペインのGPAINNOVAによるDLyteは、金属研磨に特化した乾式電解研磨装置。金属3Dプリンターで造形したアイテムをDLyteでの処理にかけることで、表面が自動的に研磨されていく。見た目の変化もさることながら、口腔内に用いる固定具をはじめとした医療用途でのニーズをはじめ、なめらかな仕上がりが求められるシチュエーションで必要とされる機材と言えるだろう。従来方法より廃棄物の発生が少ないこともポイントだ。

NTTデータザムテクノロジーズの3Dプリント造形物、Dlyteの後処理

これまで手作業で行っていた後処理が自動化されることによって、仕上げのコストを下げるだけでなく、研磨の痕が残らないため、完成品の耐欠損性や耐疲労性を向上させることもできるという。なお、樹脂3Dプリントの後処理においては、国内でYOKOITOがドイツのDyeMansionとのパートナーシップを締結したばかり。こうした3Dプリントの後処理まで含めたソリューションの構築にも、新たなテクノロジーを持った企業が参入しており、最終製品に至る道が短縮されていくことが感じられる。

クラウドベースの3Dモデル最適化ソフト ToffeeAM

多くの3Dプリンターメーカーや販売代理店などが集まるTCT Japan 2023の中で、自社開発のソフトだけを展示していた企業がTOffeeAMだ。インペリアル・カレッジ・ロンドンで航空力学を専攻していたチームが提供するのは、気体と流体の扱いに特化した3Dモデルの最適化サービス。クラウドベースで構築されたサービスページに訪れ、改変したい3Dモデルデータをアップロードすると、「耐圧性を上げる」「熱を分散する」といった目的を選択できる。その後、気体と流体の出入り口を選択して処理を開始すると、しばらくしたのち改変されたモデルが提供されるというシステムだ。

会場に展示されていたサンプルは、レーシングカーのエンジンクーラーや、電子基板上のICチップから放熱するヒートブロックなど、いずれも人間の設計では生まれない独特な形状のものばかり。3Dプリンター自体の性能が向上したからこそ、そこで造形するための3Dデータ自体を、より効果的で洗練されたものにしていく必要があるのだと感じられる。こうした解析や最適化機能を持つソフトウェアはすでに存在するが、TOffeeAMの特徴はそれがクラウドベースのWebサービスになっていること。サブスクリプション形式で利用でき、用途に応じて計算リソースの設定もできるため、構造の最適化だけを試したいときなどに、気軽に使える選択肢の一つに加わっていくだろう。

まとめ

本記事ではTCT Japan 2023の会場から5社を紹介した。独自の造形技術で樹脂の可能性を広げるMarkforgedとCubicure、ライン化や仕上げまで含めて金属3Dプリントの実用化を進めるGE AdditiveとNTTデータ ザムテクノロジーズ、そしてそれら3Dプリンターで使うための3Dデータを最適化するToffeeAM。素材・ソフトウェア・装置といった3Dプリントを取り巻く技術要素から、その実用例まで多くの情報に触れられたのは、TCT Japanという大規模な展示会ならではの体験だったと言えるだろう。

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記者/ライター

1992年生まれ。大学で3Dプリンタに出会いものづくりの楽しさを知り、大学院・研究員を経て独立。テック/ものづくり系の取材を中心にライターとして活動中。

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