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東レから3Dプリンタ向け真球ポリアミド粒子「トレパール®PA6」を販売開始

インテークマニホールド(カットモデル)

東レは、パウダーベッド方式3Dプリンタに対応した樹脂材料粉末である真球ポリアミド粒子「トレパール®PA6」の量産体制を確立し、販売を開始した。トレパール®PA6は、高強度、高耐熱性と3D造形後の高い表面平滑性を実現する。

パウダーベッド方式と不定形状リスクと真球であることの重要性

パウダーベッド方式(PBF方式)は、樹脂、金属造形双方で広く用いられる3Dプリンタ方式だ。細かく加工した材料パウダーを平らに敷き詰め、レーザーを照射して粒子を溶解させる。冷えて固まるとレーザーを照射した部分のみが硬化し、これを繰り返すことで3D造形を行う仕組みだ。

パウダーベッド方式における造形物の品質には、材料粒子の形状が大きく関わってくる。

材料粒子の尖った部分は、他の部位よりも溶解しやすく、熱の伝わり方にばらつきが生じる。これは粒子サイズについても同じことが言えるだろう。サイズの大きな粒子は小さな粒子より熱が伝わりにくく、結果として、成形物内部の隙間や表面粗さを増加させる。

現在市場で主流となっているポリアミド12を含む3Dプリンタ用樹脂粒子は多くが不定形状だ。これらから造形した製品は表面粗さが大きく、造形後の研磨や後加工が必要であった。

真球ポリアミド粒子「トレパール®PA6」

トレパール®PA6(出典:東レ)

東レは、「表面粗さを改善して欲しい」、「強度を高めて欲しい」というユーザーのニーズに応え、開発を行い。「トレパール®PA6」の販売を開始することになった。

トレパール®PA6は、東レの真球粒子化技術で作られたポリアミド6の真球粒子だ。まさに真珠のような美しい真球構造を特徴とする。

材料粒子の粒形が真球に近く粒子の大きさが均一であるほど、造形物内部の隙間を低減し、強度増強に寄与する。同時に表面粗さを抑え、研磨などの後処理に必要なコストを低減することが可能だ。

真球形状は粒子同士の接触による摩擦も低減するため、流動性を高める働きもある。高い流動性を持ち、熱を均一に伝えることで、これまでより精密な造形が可能となった。

トレパール®PA6では、融点の低いポリアミド12ではなく、より融点の高いポリアミド6を用いている。これにより、造形物の耐熱性はさらに高まった。融点の高い材料を利用できる背景には、真球形状によって熱伝達効率が上がったこともあるのだろう。

今後の産業分野における精密部品製造に、トレパール®PA6活用の期待が高まる。

トレパール®PA6を使ったエンジン吸気部品(出典:東レ)

東レ真球粒子化技術の歩み

「造形物の質を高めるため、材料粒子を真球にし、サイズのばらつきを低減する」という設計方針は、3Dプリント分野ではメジャーな発想だ。

Equispheresは、3Dプリンタ用球状アルミニウム粒子を製造する独自技術を開発し、量産、販売を進めている。

Equispheresの球状アルミニウム粉末をレーザー3Dプリンターメーカー2社が高く評価

東レでも早くからこの方針で材料開発が行われていた。2020年初頭には、ポリアミド6を用いた真球粒子化技術開発成功の報告が為されている。

ポリアミドの真球粒子化新技術を創出 -3Dプリンター実用部品に好適-

ただし、この技術には量産体制確立に難があったようだ。技術開発から2年半経過し、量産体制が十分に拡充できたことで、今回、トレパール®PA6が販売されることとなった。

トレパール®PA6の生産設備は2025年にはフル稼働の見通しということで、今後も需要が成長する見込みであるようだ。その他にも東レは3Dプリンタ分野の事業拡大をさらに推し進めており、樹脂材料開発のほかにも、AM用ソフトウェア開発、金属受託造形事業などグループとしての取り組みを行っている。

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