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エプソンアトミックスが15億円で新ライン増設。金属粉末製造を強化。

複写機メーカーであるエプソンのグループ会社エプソンアトミックス株式会社(青森県)は、八戸市の北インター工場に新生産ラインの操業を開始した。約15億円の投資で建設された新ラインは、水アトマイズ方式を使用して超微細合金粉末を製造するという。(写真はエプソンアトミックス社プレスリリースより)

エプソンアトミックスは微細合金粉末の製造において2019年の出荷額ベースで世界シェア No.1を達成した金属微細粉末の市場リーダーの一角。

この新ラインにより、本社工場でも超微細合金粉末を生産しているエプソンアトミックスは、2025年までに総生産能力を現在の生産能力の約1.5倍にあたる約15,000トンに増強する見込みだ。

水アトマイズ法による金属粉製造

同社の水アトマイズ法による超微細合金粉末は、その製造法と使用用途に応じて、主に2つのタイプに分類される。磁気用途の粉末と金属射出成形(MIM)用の粉末だ。

水アトマイズ方式で製造される超微細金属粉末(エプソンアトミックス社プレスリリースより)

同社は、高周波誘導炉からの溶融金属の流れに高圧の水ジェットを衝突させて金属をミスト状に破裂させる水アトマイズプロセスに独自の技術を追加したと説明している。この急冷プロセスにより、ミクロンオーダーの顆粒を製造して、一貫性があり、均一な組成と特性を持つ超微細合金粉末を供給することができるとのことだ。

CASE対応、金属AM市場の成長など金属粉末製造事業は盛り上がりを見せる

水アトマイズ法により製造された金属合金粉末は、医療機器、自動車エンジン用途、電子機器、オフィスオートメーション機器など、形状が複雑で寸法精度と強度が要求されるMIM部品に使用されている。金属積層造形技術が各業界でますます広く使用されるようになるにつれて、金属粉末の需要も拡大していく事が見込まれている。

エプソンアトミックスのMIMグレード粉末のラインナップには、ステンレス鋼と低合金鋼が含まれる。用途に応じて粒径を調整し、焼結部品の密度と強度を高めることができるとのこと。

磁気グレードの粉末は、スマートフォンやラップトップコンピューターなどの高性能モバイルデバイスの電圧を制御するために必要なインダクター、チョークコイル、リアクターなどの電子部品の原材料として機能する。これらの粉末の市場は、自動車での電気部品の使用の増加と、ハイブリッド車やEV車に搭載されるインダクターの数の増加により、安定的な成長が見込まれている分野だ。

エプソンアトミックスの磁性グレードの粉末は、同社のマイクログラニュール製造技術を使用してエネルギー損失を制御し、電気的に制御されるコンポーネントの消費電力とサイズの削減、および高周波と大電流のサポートにも大きく貢献することを目指している。

2021年は金属3Dプリンターの中量生産機の発表が続々控える

2021年はビルドレートと呼ばれる造形速度が高いことで、自動車産業などでの用途拡大を期待されるバインダージェット方式の金属3Dプリンターの新機種が複数市場に投入されるといわれている。こうした機種の中には、オープンマテリアル対応(専用造形材料以外にMIM用金属粉や自社独自配合の金属粉などを利用できる)を視野に入れている機種もあり、材料分野でも市場の広がりが期待できる。

すでに日本国内でも導入事例があり、実際に購入できるバインダージェット方式の金属3Dプリンターとしては、ヘガネスジャパンが販売を進めDegitalMetal、ExOne、DesktopMetalの3社が挙げられる。

DegitalMetal

一体造形された鎖帷子状のサンプル。造形物の金属密度の高さ、精度の高さを誇るDegitalMetal

DegitalMetalは世界中で30万点以上のパーツ製造実績を持ち、ソフトウェア、ハードウェアの継続的なアップデートを続けており、眼鏡や時計などのアプリケーションを打ち出している。高精度・高密度造形での実績は魅力的に映る。

DesktopMetal

造形領域内に部品をびっしり並べ量産することができるDesktopMetal

2020年11月末から世界各国への出荷を始めたDesktopMetal社の中量製造向けの3Dプリンターシステム「Shop System」は、700cc/hの製造能力をもつ中量生産機としての位置づけだけではなく、その後に控える12,000cc/hの製造能力を誇る「Production System」の評価機としての位置づけでも期待が高まっている。上場で集めた資金力を活かした品質向上の取り組みなどもに期待が高まる中、丸紅情報システム、アルテックなど大手商社が日本での販売を担っており、今後数年で一気にシェアを獲得する成長可能性を持っている。

ExOne

Exoneもラインアップを展開(ExOneサイトより)

ExOneは砂型3Dプリンターによる量産用砂型のAM化を進める一方で、バインダージェット方式の3Dプリンターを展開している。去年の展示会でもブースは活況で注目度の高さをうかがわせる。MIM工法や金属パウダーの専門家とのアライアンスもすすめ、製造現場への投入を本格検討する企業からのアプローチに備えているようだ。

その他のメーカーの動き

推進メンバーとH2(GEアディティブサイトより)

またここ数年のAM業界をけん引するGEアディティブもベータ・パートナーシップ・プログラム(特定顧客の評価利用)を展開し独自開発の金属バインダージェット機「H2」の先行納入を通じて、2021年の市場投入にむけた最終調整に入っている様子だ。すでに傘下にあるAP&C以外にもSANDVIKなどとの提携を進め、多角的に世界市場を見据えた取り組みを行っている様子が伺われる。

「このほかにも水面下で複数の金属3Dプリンター開発プロジェクトが進展しており、初期ユーザー獲得に血道を上げている」(業界関係者)という事で、新技術にむけて積極的な検討姿勢を見せる自動車業界をはじめとした製造業に対して積極的なマーケティングが展開されていることをうかがわせる。(開発検討を進めていても実際に上市を見合わせるプロジェクトもあるので、特に日本メーカーの動きは表に出てこないが、金属とセラミックスに関して3Dプリンターによる量産研究を行っているメーカーは多く非常に熱い分野だ。)

金属材料メーカーも続々

こうした新技術の導入検証は日本では3年から5年はかかるといわれており、すぐに導入され大きくあり方が変わるわけではないだろうが、発売の数年前から検証を含めて取り組んでいる企業は多いため、2025年前後に実際に製品製造に取り入れられる動きが始まる可能性は充分あるといえる。

自動車のCASE対応をはじめとして堅調な材料需要を背景とした材料メーカーの設備増強は、導入検討企業を大きく後押しすることになるだろう。

エプソンアトミックスと同じく金属粉末を製造している大同特殊鋼なども2019年に工場ライン増設を図るなど自動車業界の需要増を見越した投資が続いている。金属3Dプリンター市場も2020年のコロナ禍により改めて注目度が高まっており、金属3Dプリンターメーカー各社も最終製品製造を見据えた装置の市場投入のタイミング待ちの段階にある。材料、装置ともに金属3Dプリンター市場の今後の成長が期待される。日本が誇る高機能素形材分野での強みが活かされるアプリケーション開発が今後のカギとなるだろう。

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