ついに革新的な経済性を実現!80%のコスト削減に成功した3Dプリンター製自動車部品
ドイツのフラウンホーファー研究機構のIAPT研究所のAM( アダプティブマニュファクチャリング/積層造形)デザイン責任者であるTim Wischeropp氏は、3Dプリントをベースとした設計のためにあらたなプロセスを開発した。
3Dプリンターの事例は、切削加工や鋳造などの従来方法よりも製造コストが安いことが注目されてきた。しかし、今回の事例は3Dプリンターの製造からさらにコスト削減に成功したという一歩先に進んだ事例である。
80%のコスト削減に成功。軽量化を実現したドアヒンジ
今回、新たに開発されたプロセスに従うことで、80%のコスト削減を実現。
方向と構造の最適化、およびサポートの効率化による45%のコスト削減、最適化された材料の選択、速度パラメータ、およびAFプロセスでの最大使用率向上により35%のコスト削減で、合計80%のコスト削減となる。加えて重量を35%削減できるとのこと。
その内訳は以下の表のとおりだ。
改良されたプロセスの特徴一覧
改善プロセス | 期待できる効果 |
---|---|
ビルドプラットフォームに適合するパーツの向きや、数を最大化し、1度で造形できるように設計。また、やり直しの量も削減 | 15%のコスト削減 |
力がかかる構造をシュミレーションし、それに沿った必要な材料、形状を設計する | 35%の重量削減、材料削減、製造時間短縮、従来3Dプリンター工程と比較し20%のコスト削減 |
後工程で、手作業で行っていたサポート材の取り外し作業の必要がない設計のため、時間とコストを削減 | 10%のコスト削減 |
必要かつ最適な材料の選択 | 10%のコスト削減 |
造形するうえで層の厚さとレーザービームプロファイルの調整することで、 構築時間が大幅に短縮 | わずかな品質低下とトレードオフで、15%のコスト削減 |
加工スペースに積み重ねる「ネスティング」、設置スペースでのスタッキングによるマシン使用率の最適化 | 10%のコスト削減効果 |
このように、設計~後工程に至るまで最適化されることにより製造時間や造形コストを削減することが可能となった。
IAPTプロジェクトの結論
これらのトップクラスのスポーツカーのドアサスペンション用のアームの再設計を通じて、AMよる革新は経済的にも実現可能であるということを示している。
「常識として、コンポーネントがゼロから設計されている場合に、これらの利点を最大限に活用できます。しかし、この要因が、他の最適化手段とともに、技術的特性と完成したコンポーネントのコストの両方にどの程度影響を与える可能性があるかは、一部の専門家でさえ驚かれることでしょう。
IAPT研究所のAMデザイン責任者 Tim Wischeropp氏 Tim Wischeropp氏
この新たなプロセスは、多数の自動車コンポーネントに応用することができ、AMが最大5,000個のより大きなシリーズですでに有益に使用できるとしている。
金属AMを25年研究し続けるフラウンホーファー研究機構とは
フラウンホーファー研究機構は、ドイツの物理学者フラウンホーファー氏にちなんで運営されている公的研究機関で金属AMについて25年間研究してきた歴史をもつ。さまざまな産業分野をカバーする72の研究所で構成された応用研究機関で、年間研究費の70%は民間からの委託研究で賄われている。
IAPT(Institute for Additive Production Technologies、付加製造技術研究所)は他の3つの研究所と共同でAM(アダプティブマニュファクチャリング)の研究が進められており、「新技術の有用性を研究とデータで明確にし、迷う企業の背中を押して、導入と普及への道筋を作る」ことを使命としている。
関連情報
電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。