日本HPが「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」の国内販売を発表
日本HPが、産業用3Dプリンティングソリューション「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」の国内販売を2023年5月に予定していることを発表した。日本HPは独自方式の樹脂3Dプリンターを展開し、産業用途でシェア拡大を進めている。
「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」とは
「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」 は、白色パーツを高品質かつ安定的に製造できる産業用3Dプリンティングソリューションだ。同ソリューションは、HP独自の造形方式である 「HP Multi Jet Fusionテクノロジー」 と組み合わせることで、1パーツあたりの製造コスト削減や製造予測性の向上などが見込める。
HP Multi Jet Fusionテクノロジーは、「パウダーベッドフュージョン(通称、PBF方式、粉末床溶融結合方式)」とHPの得意とする「インクジェットプリント技術」を組み合わせたHP独自の造形方式だ。造形エリア全体に材料を敷き詰め、硬化させたい場所には「硬化剤」を、それ以外の場所には 「硬化抑制剤」 を滴下してから熱で溶融・硬化させる。
これにより、最終製品の表面が滑らかに仕上がる。熱照射の精度はあまり気にしなくても良いため、印刷の高速化と生産性の向上が実現できる。
上記以外にも、HP Multi Jet Fusionには「等方性」という強みがある。
FDM方式とも呼ばれるFFF方式(Fused Filament Fablication)やSLS方式(Selective Laser Sintering)では、ヘッドやレーザーの掃引方向によって材料が硬化する方向性が変わってくる。これによって、掃引に平行な方向と垂直な方向では物理的強度が異なるが、対するHP Multi Jet Fusionでは、「面」で硬化が起こるため水平方向に異方性が存在しない。そのため、どの方向にも等しい強度を有し、高品質の製品を製造できる。
3Dプリントプラットフォームとしての運用も視野に
「HP Jet Fusion 5420W」は、近年その重要性が高まりつつある「3Dプリントプラットフォーム」としての運用も考慮されていることが分かる。これは、3Dプリンターをスタンドアローンの製造装置と捉えるのではなく、後工程や他の製造方式と組み合わせて大量生産に組み込む考え方だ。
材料・後工程については以下の企業とパートナー連携し、各社が提供するアプリケーションと連携できるように設計されている。
【材料面での主な連携企業】
- Arkema
- BASF
- Evonik
- Lubrizo
【後工程の面での主な連携企業】
- AMT
- Oechsler
- AM Flow
- DyeMansion
- Rösler Group AM Solutions
これらの企業との連携により、ユーザーとしては、特殊な材料や後処理工程が必要になった際、追加オプションとして連携企業各社から多様なサービスを選択できるようになる。3Dプリンターの活用の幅も大きく広がりそうだ。
海外での活用事例
日本国内でのHP Jet Fusion 5420Wの発売は2023年5月頃とされているが、海外では既に産業用途に活用され、新たな価値を創出している。
カリフォルニア州で3Dプリンティングサービスを提供する「GKN Forecast 3D」は、アメリカの大手自動車メーカーGeneral Motors Company(GM)向けに、エアロパーツのクローズアウトシールを製造した。
2021年9月、GMは、2022 Chevy Tahoeに取り付けられるリアスポイラーにクローズアウトシールを追加し、気流を合理化するという決定を下す。しかし、GMに残された時間は6週間のみで、生産された3万台全てに6万枚のクローズアウトシールを取り付ける必要があった。
複数のアディティブマニュファクチャリング事業者が入札した結果、GKN Forecast 3Dが契約を勝ち取り、実際に6週間で6万枚のクローズアウトシールを製造した。
このスポイラークローズアウトシールは、第51回「SPE Automotive Innovation Awards」のAM技術部門で最優秀賞を受賞している。
関連記事
ShareLab NEWSでは、これまでにもHP製3Dプリンターの情報を取り上げている。
今回の記事に興味を持っていただけた方は、以下の記事もぜひご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。