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CEO 来日講演 マークフォージドのトップが語った製造業の課題に対する使命と手段とは?

2024年9月5日(木)に、日本3Dプリンター主催「Markforged CEO来日講演[JP3DP×Markforged MeetUp]」が開催され、シェアラボからも参加した。マークフォージド社 CEO シャイ テレム 氏からAM業界のトレンドと同社の最新製品情報を直接聞け、また会話が出来た貴重な機会であった。ここではその概要をお伝えする。(記事内写真:撮影許可を得てシェアラボ 衛藤 撮影)

マークフォージド シャイ テレムCEOの講演

3Dプリンターメーカーであるマークフォージド社(アメリカ)のMarkforged, Inc. President & CEO シャイ テレム 氏が来日され、日本の販売代理店各社が東京、横浜、名古屋、大阪で「2024 Markforged Japan Tour」として全5回を開催した。その最終回として、日本3Dプリンターが開催したイベントに招待いただき、参加した。日本3Dプリンター本社である会場には30名近い参加者が訪れ、大盛況であった。

イベント会場の様子

日本3Dプリンターについては先日掲載したシェアラボの記事を参照されたい。

その最初の講演として、「AM業界のトレンドとマークフォージドの最新情報」の題でシャイ テレム 氏が英語で講演、マークフォージド・ジャパン株式会社 代表取締役社長 トーマス パン 氏が逐次日本語通訳をされた。

写真左 トーマス パン 氏 写真右 シャイ テレム 氏

その中で特に注目したポイントを以下にお伝えする。

現状の世界の製造業の課題には「サプライチェーン」「セキュリティ」「地政学的リスク」「設備投資向け資本金の調達コスト」「人材不足」「金利上昇」などがあり、それらの対策に有用なAM技術はキャズムを乗り越えなければならない キャズム理論とは、新たな製品が世に出た際に、その製品が市場に普及するために超える必要のある溝について説いた理論のこと。

マークフォージドが提供するエコシステムは、1つ目として「ものづくりの現場をサポート(治工具、補修・補給部品を製造)」、2つ目として「工業生産の機械メーカーをサポート(少量生産や複雑な生産機器を設計生産、FAをインテグレーション)」。「強い・簡単・信頼」を特長とするAMプラットフォームは金属と炭素繊維複合樹脂用3Dプリンターと材料とソフトウエアで構成される

アメリカでの事例として、米Azoth社は自動車メーカーGMのサプライヤーとして量産認証を得て、金属BJT方式プリンターPX100で50部品以上を量産している

参加者からの質疑応答では、MEX(材料押出法)プリンターの未来についての質問に対し、「プリンターに搭載される各種センサーデータの分析による改良と材料の多様化が進む」との回答があった。また講演後の休憩時間にテレム氏と直接会話することができた。世界の主要3Dプリンターメーカーの多くが、販売や収益の不振に置かれている現状についての見解を尋ねたところ、「AM産業の成長における一時的な谷と考えている。マークフォージドは製品技術改良開発に、変わらず積極的な投資を行っている」との答えであった。

続いてマークフォージド・ジャパン株式会社 代表取締役社長 トーマス パン 氏より、「マークフォージド最新製品情報:FX20/VEGA/FX10+アルファ(新発表あり)」の題で講演があり、同社の世界累積設置台数が約15,000台になったとのこと。また海外ユーザーは製造治工具・部品のアルミやスチールから、炭素繊維強化樹脂へ置き換えるユーザーが7割以上なのに対し、日本では切削用ナイロン系樹脂材料からの置き換えが多いという違いも示された。その他、興味深い活用事例として、海外ブラスタマシンメーカーが、装置と樹脂3Dプリンターをバンドル販売し、ユーザー自身が歯車スペアパーツを製造することで、納期を2週間から翌日へ短縮した例を紹介された。

また、製品情報として樹脂MEXプリンター FX20とFX10、シェアラボでもニュースとして下記の通りお伝えした、新材料VEGAの紹介の後、新製品「FX10金属造形用メタルキット」の発売発表があった。

この後にユーザー事例としてキヤノン株式会社光学機器事業本部の鈴木 弘樹 氏が、実際の現場で活用している「からくり機構」を活用した治工具を実際に多数展示、説明され、現場でのリアルな活用状況について多くの参加者からの質問攻めにあっていた。

「からくり機構」を活用した治工具 展示

イベント参加を終えて

AMが発展してきた歴史の中で、開発設計分野での試作用途から、製造分野での治工具・機械部品の実用用途に広がる間の谷を越えることに、マークフォージドの炭素繊維樹脂複合化の技術と製品が貢献したことは、誰もが認めるところであろう。今回テレム氏から示された製造業の課題は日本も例外ではなく、マークフォージド社はその課題に対する会社の使命を「工業生産を必要な場所で実行できるようにする」、手段を「ものづくりの現場と工業生産の機械メーカーをサポートする」と具体的、端的に言語化してトップ自ら伝え、それを製品に反映していることも、日本の製造企業にもユーザーが増えている一因ではないかと感じた。また課題と対策を絞った製品や材料の開発提供は、メーカーにもユーザーにも利点が多く、AMが「なんでもできる」時代から「これに使う」時代への変化を牽引するメーカーの1社として、また日本のユーザーからもさらに積極的に課題を示していくことで、メーカーとユーザー双方の発展につながるよう、同社の今後の技術改良開発にも期待したい。

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今回の記事に関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から2つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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