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ちょっとした現場のカイゼンを形に!業務用としてもトライしたいハンディー3Dスキャナー「RANGE」登場 ― Revopoint

3Dプリンター活用には3Dデータが必須だが、自社で設計していない製品や部品の3Dデータがなく、ちょっとした修理や使い勝手のカイゼンのために、何とか用意できないか、と考えたことがある方は多いことだろう。とはいえ、ゼロから3Dモデルを用意するのは手間がかかる。そこで注目したいのが3Dスキャナーだ。

工業用3Dスキャナーの導入というと、専用のスキャニング室を用意して、固定された大型のスキャニング装置でスキャニングをおこなう、というイメージが強かったが、今回紹介するようなハンディータイプの3Dスキャナーであれば、専用の作業しペースがなくとも、スキャニングが可能だ。スキャンした3D点群データを加工できるソフトと、3Dプリンターがあれば、数万円の投資で3Dスキャナーを購入することで、リバースエンジニアリングできる時代が到来している。

3Dスキャナーで現場のちょっとしたカイゼンを効率的に行おう!

実際にどんな局面で3Dスキャナーを使うことができるのか?いくつかのケースを見てみよう。まず紹介したいのは、工具の改善のための治具開発だ。ホビーユーザーの力強い支持を得ているハンディータイプの3Dスキャナーを提供してるRevopoint社の3Dスキャナーは、生産現場での治具製作や改修にも充分使える精度を持っている。Revopointの3Dスキャナー「MINI」を使ったリバースエンジニアリングで工具をカスタマイズしている事例を紹介したい。

「この握り工具では、ナットが滑ってつかみにくい!工具のアゴ(くわえ部)で滑らないように、樹脂のカバーが欲しい」と思っても、市販品がない。3Dプリンターはあるが、3Dモデルデータがない。3Dモデルデータをゼロから起こすのは手間がかかるため、後回しになりがち。

そんなときに3Dスキャナーがあれば、アゴ部分のスキャニングを手元作業で実施できる。取得した点群データと撮影画像を3Dスキャナーがメッシュデータに変換できる。不要な部分やゆがみがある場合は、メッシュデータを加工できるソフトウェアで整形する必要がある。

写真では、フュージョン360で取り込んで、データを整形した工具のアゴ部分を表示している。(フュージョン360は、スキャンしたメッシュデータの修正も、ソリッドデータとしての変換利用もシームレスに実現できるため、3Dスキャナーを使ったリバースエンジニアリング作業との相性がよい)

時間があればアゴ部分の把持力強化を狙って凹凸やギザギザのローレット形状などをデザインしてもよいだろう。

作った治具を3Dプリンターで造形することで、小さな改善の準備は完了する。この造形時に、滑りにくいゴムライク樹脂を使うなど、材料を工夫できるとなお完成度が上がるだろう。

アゴ部が金属で、滑ってしまうため把持しにくかった点を改善。樹脂製の治具を装着して、取りこぼしを削減できた。

こうした市販工具や既設の治具を改良できる部品を自由に造形できることは生産現場でのちょっとしたカイゼンを実現する大きな助けになるだろう。製品で出荷するものではないため、形状が必要以上に整っている必要もないし、切削で仕上げるニアネットシェイプと割り切れば、厳密な精度にこだわる必要も少ない。廉価な3Dスキャナーを必要な時にさっと取り出してスキャンするだけで、事足りるはずだ。

廉価3Dスキャナーの普及と進化をけん引するRevopoint

小さいものをスキャニングする装置の選択肢は増えてきたが、ちょっと大きな部品をスキャニングしようとすると、いきなり装置価格が上がり選択肢が限られてきた。そんな中、KickStarterなどのクラウドファンディングサイトでは、10万円以下という価格破壊を起こす野心的な取り組みも登場している。先ほど紹介したRevopointの「MINI」はどの成功事例といえるだろう。

Revopointは、これまでに全世界で合計7回の資金調達キャンペーンをクラウドファンディングで行っており、12億円超の資金調達に成功している。利用者ニーズを集めながら手堅い装置開発を進めている印象だ。製品ロードマップ的には、小さい部品のスキャニングに特化した「MINI」、数十センチほどの中型部品に最適化された「POP2」などが登場している。

1mを超える大きな対象物もスキャニング可能

そのRevopoint社が新しくクラウドファンディングを始めるのが新製品「RANGE」だ。従来のローエンド価格帯ではカバーされていなかった1m以上の対象物をスキャンできる3Dスキャナーとしてアメリカをはじめとした世界ですでにクラウドファンディングが始まっているが、いよいよ日本でも2023年3月22日からファンディングが始まっている。

「RANGE」はハンディー型とよばれる、作業者が手に持って作業できる小型3Dスキャナーだが、対象物から30cmから80cmの距離をあければスキャニング可能で、従来対応が難しかった人間や家具、自動車のような大きな対象物でもスキャニング可能だ。赤外線スキャンとカメラによる画像認識を組み合わせ、対象物の形状を3D点群データとして計測していく仕組みになっており、フルカラースキャンにも対応している。

スキャン効率を示すフレームレートは18fpsということで、1秒間に18枚の画像を取得し、3D点群データに変換していく。

「RANGE」は、スキャナーを手で持ち、スキャン範囲で対象物をなぞるようにスキャンすることで、対象物の形状を3Dデータ化していく。360mm×600mmの範囲でスキャンを行うので、比較的大きな対象物でも効率よく計測できる。下記の写真は付属ソフトウェア「Revo Scan」を使って、ソファーをスキャンしている画面だ。ソファーの形状の周りの白い部分は点群として把握されていない部分、緑の部分がスキャン中の範囲を示す。このようにスキャン範囲をPCやスマホのモニターでも確認しながら、スキャンを行っていくことができるため、3Dスキャニング初心者でも仕上がりを確認しながら作業できる。

0.1mm精度でスキャンできるということで、立体的なシボ形状やソファーの表面も計測可能だ。色彩に関しても、RGBで認識でき、objファイルなどに収録可能となっている。3Dスキャンして、フルカラー造形に対応した3Dプリンターでフルカラー造形することも現実的になってきたといえるだろう。

iPhoneをモニター代わりにスキャニング状況を確認しながらスキャン

従来のハンディータイプのスキャナーは1㎏を超えるものも多く、片手で長時間スキャニングするには負担が大きかった。「RANGE」は210gとかなり軽量。iPhone14Proが206gということなので、写真のようにスマホをセットしてスキャニングしても500mlのペットボトルよりも軽い。女性でも片手で持ちながら作業できるだろう。モニターに有線でつながなくても作業できるので、作業場所を選ばない点は非常に使い勝手がよい。

取得した3D点群データを専用ソフトウェア「Revo Scan」で綺麗に

3Dスキャナーでのスキャニングでは、対象物以外の周りのものをデータとして拾ってしまったり、対象物の表面に付着したごみが映り込んでしまう場合もある。そのため、スキャンが完了したら、3Dデータ編集ソフトを利用してデータの変換や修正を行うことになる。

専用の3Dモデル編集ソフトを持っていない場合でも、Windows、Android、macOS、iOSのデバイスで利用できるソフトウェア「Revo Scan」が利用可能だ。スキャンが完了後、「不要なデータを削除」「カット」「アライメント」「スムーズ加工」などのモデルの編集作業を続けることができる。「Revo Scan」はスキャニングされたデータの編集に不慣れな利用者でも、直感的なUIと各アイコンの上にマウスを乗せると詳しい説明が表示されるため、馴染みやすいはずだ。またFusion360などの3Dモデル編集ソフトを利用している場合でも、「RANGE」は出力ファイル形式が、Stl、Ply、Objに対応しているためプロフェッショナルなデザインソフトウェアや、3Dプリンターと互換性がある。

「できる」と「現場でつかえる」の壁を超えるために実機を触わる

技術進化は日進月歩で、廉価帯の3Dスキャナーといえども侮れない。ハードウェアとしての性能は向上し、ソフトウェアも必要な機能がバンドルされているため、使いこなせば日々のカイゼン業務に充分使える機能を備えている。

このように3Dスキャナーの進化は著しいが「ボタン一つでなんでもカンタンに自働化」というわけではない事も知っておこう。たとえば真っ黒な部品や透明度が高い部品はメーカー・機種に関わらずスキャンが難しい。その為、設定で露出を高く調整したり、現像スプレーをかけて着色するなどの処理を施すなどの工夫が必要だ。またハンディースキャナーなので、スキャニングする作業者の熟練度によって、データのずれが大きくなる場合もある。ちょうどよい速度で丁寧にスキャンしていくために慣れも必要になってくる。スマートフォンの容量やコンピュータのメモリなど、外部機器のスペックにも影響されるだろう。自動車などの大きな対象物の場合、形状も複雑な上に、データ容量も大きくなる。いくつかの部品ごとに、複数回スキャンして結果をマージする必要も出てくるかもしれない。

こうした3Dスキャナーを使う上での工夫や必要な後工程が存在することを理解する必要はあるが、数百万円、数千万円の3Dスキャナーでも同じ工程が存在する。3Dプリンターと同じ要領で、実際に触ってみながら、実際の業務に活かせる点をイメージし導入判断を行っていくべきだろう。

そういった入門機種としてRevopointの「RANGE」は学習用の試験導入以上の価値があることだろう。今回紹介したRevopoint社の「RANGE」はクラウドファンディング「CAMPFIRE」で実際に購入可能だ。初期割引を利用すると定価よりも大幅値引きで購入可能なので、一見の価値があるはずだ。検討をおすすめしたい。

Revopoint社「Range」のクラウドファンディング情報はこちらのサイトから確認できる。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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