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Stratasys社、NASCARの公式3Dプリンティングパートナーに

Stratasys社のプレスリリース。

Stratasys社は、NASCARとの長期的な技術提携を拡大し、公式3Dプリンティングパートナーとなったと発表した。これにより、NASCARは部品やツールの設計および製造において、従来の技術に代わりStratasys社の3Dプリンティング技術を独占的に利用することになる。(上部画像はStratasys社のプレスリリース。出典:Stratasys社)

NASCARとは

NASCAR(ナスカー)は「National Association for Stock Car Auto Racing」の略称で、1948年にビル・フランス・シニアによって創設されたアメリカを代表するモータースポーツ団体である。主にストックカーレースを主催し、アメリカ全土で高い人気を誇る。NASCARのレースは高速で行われるオーバルトラックが特徴で、競技の激しさや観客を巻き込むエンターテインメント性が魅力となっている。

主要なシリーズには「NASCARカップシリーズ」「Xfinityシリーズ」「キャンピング・ワールド・トラックシリーズ」があり、各カテゴリでトップドライバーたちが競い合う。レース車両は外観は市販車に似ているが、内装やエンジン、シャシーなどはレース用に特化されている。競技の安全性を高めるための研究開発や新技術の導入も積極的に行われており、Stratasys社とのパートナーシップもその一環といえる。NASCARは単なるスポーツ団体を超え、アメリカの自動車文化を象徴する存在として広く認知されている。

NASCAR研究開発センターに最先端の3Dプリンティングラボを新設

このパートナーシップの一環として、北カロライナ州コンコードにあるNASCAR研究開発センターに最先端の3Dプリンティングラボが新設される。この施設には、F370、450mc、F900(FDMプリンタ)やNEO800(SLプリンタ)など、複数のStratasys社の技術が導入され、NASCARの三大シリーズにおける研究開発、部品生産、ツール製造を支援する。NASCARのエンジニアは、迅速な設計サイクルとカスタム部品のオンデマンド生産を可能にする3Dプリンティングの柔軟性を活用し、パフォーマンスと安全性の最前線を維持することが可能となる。

エンジニアがレース中にドライバーを涼しく保つために使用する3Dプリントダクトを取り付けているようす。
エンジニアがレース中にドライバーを涼しく保つために使用する3Dプリントダクトを取り付けているようす。(出典:Stratasys社)

NASCARのジョン・プロブスト副社長兼チーフレーシングデベロップメントオフィサーはこう述べる。

「Stratasys社との提携により、パフォーマンスと精度の限界をこれまで以上に押し広げることが可能になった。彼らの3Dプリンティング技術により、迅速な改良と最適化が可能となり、私たちのスタッフは、この高リスクの環境で先行し続けるための最高の機械を手にすることができる。Stratasys社は価値あるパートナーであり、この協定はモータースポーツの革新を先導するという私たちのコミットメントを示している」

FDM能力の強化とSL技術の統合による製造プロセスの革新

さらに、この提携により、NASCAR R&Dセンターにおける既存のFDM(熱溶解積層法)能力が強化され、大規模な部品製造が可能になる。また、StratasysのNEO®ステレオリソグラフィ(SL)技術も統合され、空力試験用プロトタイプや高精度のツール製造に対応可能な柔軟な設計・製造プロセスを実現する。

カップシリーズカーでのStratasys社の技術、実用例

NASCARはすでに、カップシリーズカー向けの部品製造でStratasys社と協力している。例えば、H350 SAFプリンタと植物由来のNylon11素材を用いて、冷却用空気を車内に取り込むエアベントや、FDMプリンタを用いてエンジンパネル下部の熱排気ダクトなどを製造している。

Stratasys社のリッチ・ギャリティ最高事業部長は、以下のように述べる。

「NASCARとのパートナーシップを通じて、モータースポーツにおける3Dプリンティングの独自の利点を披露できる。カスタム部品のオンデマンド製造から設計サイクルの短縮まで、我々はNASCARに迅速な生産と部品性能の向上を提供している。このような高性能環境での作業は、商用車の生産にも革新をもたらし、3Dプリンティング技術の自動車産業全体への影響を示している」

Stratasys社とNASCAR提携が拓くモータースポーツと自動車産業の未来

今回のStratasys社とNASCARの提携は、3Dプリンティング技術がモータースポーツ産業に与える可能性を広げる重要な一歩である。新設された研究開発センターや最先端の機器導入により、NASCARは競技車両の設計や製造プロセスの効率化をさらに進めるとともに、性能と安全性の向上を図ることができ、競技における車両の性能向上だけでなく、短期間でのプロトタイプ製作やコスト削減といった付加価値も提供されるだろう。

また、この協力体制はNASCARにとどまらず、自動車産業全体への波及効果も期待される。モータースポーツのような高い要求が求められる分野での実績は、商用車や一般消費者向け製品における3Dプリンティングの採用を後押しする可能性がある。特に、環境負荷の低減やカスタマイズ性の高い製造技術への需要が高まる中、Stratasys社の技術革新は、産業全体の変革を促進する原動力となるだろう。

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