TCT Japan 2025ファストインプレッション!
115の組織が出店した3Dプリンター活用の総合展示会TCT Japan2025。2025年1月31日に会期を終えて併設展を含めると4万人以上の来場者があったと主催者からの発表もあった。シェアラボ編集部も3Dプリンターなんでも相談所として出展したが一部の来場者であふれ撮影困難なブースを除き90秒という限られた時間の中でブースの見どころを紹介してもらったショート動画の撮影も含めた各社の取材も行った。
参加したが出展ブース全部を見切れなかったという方も、惜しくも参加できなかったがどんな雰囲気だったか知りたい方もいらっしゃるだろう。そこで一部に限られるが展示の内容をご報告したい。
目次
セルカム
大阪と東京を拠点に3Dプリンターだけではなく、インクジェットプリンターやソフトウェアなど印刷業界を中心に事業を行う販売店。イスラエルに本拠を置く大型造形用の3DプリンターメーカーMassivitの3Dプリンターを取り扱う。
今回は最新機種であるMassivit 10000Gを展示。機能アップしてデュアルヘッドになり、樹脂で型を造形しそのまま自動でエポキシ樹脂を投入出来るようになっていた。型は水に漬けておくと24時間程度でふやけて溶けるようになっている。大型樹脂3Dプリンターと言えばディスプレイやサイン業界がターゲットと思われがちだが工業用製品の対応も可能になった。
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第一セラモ
第一工業製薬株式会社を親会社に持つ粉末射出成形(PIM)用コンパウンドの開発、製品販売を行う会社。独自開発のバインダーと混練技術を基に、セラミックス粉末射出成形(CIM)用コンパウンドや金属粉末射出成形(MIM)用コンパウンドの開発、製品化している。
今回は「フィラメントで金属3Dプリンティングをもっと身近に!」をテーマとして、安価なMEX(FDM)方式の3Dプリンターが利用可能な金属・セラミックスのフィラメントを展示・実演していた。機種は選ぶが約10万円程度の3Dプリンターでも造形が可能だという。
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日本3Dプリンター
東京ビッグサイトに程近い晴海に本社があり3DプリンターのRaise3Dの総代理店でFarsoon、Markforgedも取り扱う販売店。また近年需要が増えている3DスキャナーではEinScanの総代理店でもある。
展示会では各種3Dプリンターや造形サンプル、3Dスキャナーなどを勢揃いさせ展示していた。販売件数も多く様々な課題を経験しており頼れる相談先であろう。
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3D Systems
米国サウスカロライナ州に本社を置く3D Systemsは、3Dプリンター業界を牽引し続けてきた世界的なリーディングカンパニー。日本でも多くの企業に導入されている。
今回の目玉はエッグシェルモールドを使用したシリコン部品の生産。型を作成しシリコンを投入することで100%シリコンの製品を作れるという展示物。型自体は非常に薄く、造形後は卵の殻を割るような感覚でペリペリ剥くことができ取り外しも簡単。
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スギノマシン
富山県に本社・主要工場を置く産業機械メーカーでウォータージェット技術をはじめ、多様な商品を開発・製造・販売している。
3Dプリンター関連の事業としては後加工の分野になり、水で切る、水で強化(鋼を叩くみたいに細かい水の泡で金属し金型などを長持ちさせる)、水で研磨(水の中に研磨剤を入れることで複雑な形状の製品内部も研磨出来る)など他社にはない水を活用した後加工ソリューションが特徴である。
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C&Gシステムズ/ローランドディージー
C&Gシステムズ、ローランドディージーともに東京に拠点を持つ。
ローランドディージーは3D切削加工機「MODELA MDX-50」と専用CAM、UVプリンターおよび3Dプリンターで製作したセラミックオブジェクトを展示。C&GシステムズによるMDX-50専用の高機能CAMも体験できた。特にセラミックオブジェクトは見た目が陶器そのもので、従来陶器では難しかった複雑なデザインが可能になるだろう。
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テクノソリューションズ
東京に本社、名古屋、新潟、大阪、富山に拠点を持つ販売店。SOLIDWORKSやZWSOFTなどCAD製品による設計関係が特に強いが、近年は話題のグーテンベルク製品やマークフォージドなど3Dプリンター関係の販売も好調だ。
展示会では韓国のHarvestance社から代表のLEEM氏もブースにいらっしゃり、ロボットアームのグリッパ(先端部分)を3Dプリンターで製作した事例とサンプルを展示していた。ちなみに造形に使用した3Dプリンターがテクノソリューションで販売しているグーテンベルク社の3Dプリンターだ。同社は既に韓国で多数の実績を出している。
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グーテンベルク
大田区東蒲田の国産3Dプリンターメーカー。造形スピードと造形精度の両方を併せ持つ優秀な3DプリンターであるG-ZEROシリーズを製造・販売する。材料メーカーの大塚化学と協業し、射出成形に迫る強度と寸法の安定性を持つ「POTICON FILAMENT」(ポチコン)での造形が凄い。彼らのライバルは工作機械だ。
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APPLE TREE
大阪に本社がある3Dプリンターの販売店で企業や教育機関などに数多くの導入実績を持つFLASHFORGEの日本総代理店でもある。直近だと低価格帯の3Dプリンターで席巻しており企業への導入も増えているBambu Labと日本正規代理店契約も結んでいる。材料やスキャナー販売、教育など3Dプリンターの導入運用でお困りの方を全体的にサポートできる体制も整えている。
また、昨年は3Dプリンター製のシューズブランドであるSTARAYのリアル店舗を開店したことでも話題を呼んでいる。
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日本溶接協会AM部会
今回会場では日本溶接協会のAM部会のメンバーなどが中心となり、会場でのワークショップとして造形後のバリ取りの体験が出来た。実際の現場では量がある場合には機械で作業を行うのだが3Dプリンターのように少量多品種の場合には手作業でバリ取りを行うような泥臭い作業も実際はよくあるのだと言う。筆者も体験してみたのだが見るのとやるのでは大違い。手慣れた人が行ったものと慣れていない人が行ったものでは出来上がりに大きな差が出る。まだまだ職人が必要な世界は存在する。
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やはり会場でみないと伝わらないアレやコレ
展示会主催者や出展各社の考え方も大きく変わってきて、展示会の見どころを事前に発信することに各社前向きになってきたことを今回改めて感じた。また来場者側も自社のニーズを隠してパンフレットを集めるという形の情報収集ではなく、具体的な課題感をぶつけてヒントを得る積極姿勢の来場者が増えてきたように感じた。
初めて買うのだけれどこんな部品を3Dプリンターで作りたい。コスト重視だけれどいくらくらいからあるのか?3Dプリンター相談所にもそうした具体的な相談が複数寄せられた。ものを見せて話をするとすぐに必要な情報にたどり着けるのが展示会の魅力の一つだし、そうやって商談時間を圧縮してこそ、自社の課題感のその先の情報にたどり着く最短ルートに違いない。
TCT Japanを皮切りに、今年も数多くのイベントが全国各地で開催される。事前に情報を探して、ぜひイベント会場で課題解決のヒントに数多く触れてほしい。
システム開発会社のエンジニア、WEB制作会社のディレクターなどを経て独立。現在は企業コンサルティング、WEBサイト制作の傍ら3Dプリンターをはじめとしたディープテック分野での取材・情報発信に取り組む。装置や技術も興味深いけれど使いこなす人と話すときが一番面白いと感じる今日この頃。