山崎淳 氏、日本画像学会コニカミノルタ科学技術振興財団研究奨励賞を受賞

計算物質科学研究センター(埼玉県和光市)に所属する技術専門職員、山崎淳氏が、第20回日本画像学会コニカミノルタ科学技術振興財団研究奨励賞を受賞した。この賞は、新たな画像分野において顕著な研究成果を挙げた大学や公的機関の研究者に対し、日本画像学会の選考を経て、コニカミノルタ科学技術振興財団より授与されるものである。授賞式は3月14日に東京都内にて開催された。(上部画像は東京大学物性研究所のウェブサイトより。後列一番右側が山崎氏。出典:東京大学物性研究所)
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3Dプリンターによる物理量の立体可視化技術が評価される
今回の受賞対象となった研究は、「3Dプリンターを用いた物理量の空間配置に関する研究」である。山崎氏を中心とする研究グループは、空間的に分布する物理量を3Dプリンターで出力可能なデータに変換するプログラムを開発してきた。
この技術により、電子雲の空間分布の三次元表現や、気象シミュレーションにおける物理量と地形情報を統合した立体的な可視化が可能となった。これらは、MJT(材料噴射法)フルカラー3Dプリンターを利用した空間的なカラー再現の応用例として高く評価されている。

ボクセルとメッシュを融合した次世代3Dモデリング技術を開発
さらに同グループは、3Dプリンターの潜在能力を最大限に引き出すための手法として注目される「ボクセルデータ処理」にも早期から取り組んでいる。従来のメッシュ構造との同時取り扱いが可能な3Dデザインツールを開発するなど、革新的なモデリング環境の構築にも貢献してきた。
この3Dデザインツールは、異なるシミュレーション環境の共存を視野に入れたモデリング技術の進化を示唆するものであり、従来の設計思想を大きく転換する可能性を有している。こうした一連の取り組みは、3Dプリンター分野における技術的な進展に貢献するものであり、今後のさらなる活躍が期待される研究として、本賞の授与に至った。
ボクセルとメッシュについて
- ボクセル(Voxel)
ボクセルとは、三次元空間を小さな立方体の集合体として表現する技術であり、「Volume(体積)」と「Pixel(画素)」を組み合わせた造語である。各ボクセルは位置情報に加えて、色、密度、温度などの物理的属性を持たせることができるため、空間内部の構造や特性を詳細に記述するのに適している。医療画像処理や物理シミュレーション、さらには3Dプリンタによる高精度な造形にも応用されている。ボクセル表現は、従来の表面情報中心のメッシュ構造とは異なり、内部情報をも含む立体データの解析や表現に優れている点が特徴である。
- メッシュ(Mesh)
メッシュとは、三次元形状の表面を多数の三角形や四角形などのポリゴンで構成して表現する手法である。一般に「ポリゴンメッシュ」とも呼ばれ、CAD設計や3D CG、ゲーム開発など幅広い分野で利用されている。各ポリゴンは頂点、辺、面で構成され、形状の滑らかさや複雑さは分割数によって調整可能である。メッシュは主に外形の再現に特化しており、内部構造を持たない点が特徴である。そのため、視覚的な形状表現やデータの軽量化に優れており、レンダリング処理や構造設計などにおいて広く活用されている。
内部構造と形状表現を両立する革新の3Dモデリング技術
今回の研究において特に注目すべき点は、ボクセルとメッシュの双方を同時に取り扱うことが可能な3Dデザインツールを開発している点である。メッシュによる精密な形状表現と、ボクセルによる物理量を含む内部構造の再現という、それぞれの長所を融合するアプローチは極めて革新的である。この「いいとこ取り」の手法は、3Dモデリングの新たな可能性を切り拓くものとして高く評価されている。
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