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メタマテリアル技術の確立を目指し、クラボウと東京大学が共同研究を開始

クラボウが導入したAM造形機

建設用3Dプリンティング技術を有するクラボウと、数値解析シミュレーション技術を有する東京大学は、メタマテリアル技術の確立を目的として共同研究を開始した。(画像は、クラボウが導入したAM造形機。出典:クラボウ)

クラボウの3Dプリンティング事業

クラボウ(倉敷紡績株式会社)は、1888年に綿花紡績から事業を始め、これまで続いてきた歴史ある企業だ。多くの紡績企業と同様新規事業への取り組みが身を結び、現在では、化成品事業、エネルギー事業、食品・サービス事業など、様々な分野を取り扱う。そんなクラボウの化成品事業部では、建設用3Dプリンティング技術の研究開発も開始した。2021年には小型~中型立体造形物の受注生産を始め、竹中工務店との共同研究を通じて、3Dプリンティング技術の深化に努めている。

>>クラボウが竹中工務店と建設用3Dプリンターに関する共同研究契約を締結

メタマテリアル・・・部品形状を工夫して材料特性を越えた物性を実現

東京大学社会基盤学専攻コンクリート研究室では、セメント系材料のメタマテリアル技術に関する研究を2020年から行ってきた。メタマテリアルとは、構造の工夫によって、新たな機能を追加しようとする考え方だ。

例えば、自然界に存在する「蜂の巣」は六角形が敷き詰められたような特異な構造(ハニカム構造)を有する。この構造には巣の機械的強度を高める効果があり、同様の構造は家具や石壁のデザインにも採用された。

材料自体は同じでも、ハニカム構造を採用することで、構造物の強度を高めることができる。造形物の形状を工夫して、材料特性を超える物性や性能を実現する、これがまさにメタマテリアルという考え方だ。メタマテリアルによって付与できるのは、機械特性だけではない。光学特性、温度特性、吸水性、通気性など、様々な機能を付与、または強化・抑制できる。

そして、メタマテリアルは材料自体とも深い関係を持つ。同じ構造を用いたとしても、材料の持つ異方性(方向によって特性が変化すること)や熱膨張性などに応じて、構造物の特性は変化する。

以上のことから、セメント系材料のメタマテリアル研究においては、以下2つの技術が必要となる。

・微細な構造制御を可能とするセメント加工技術
・セメント系材料の知識や材料開発の技術

東京大学コンクリート研究室は、上記2点の技術の不足を補うべく、クラボウとの共同研究を決定した。

メタマテリアル技術研究の概要(出典:東京大学)

シミュレーションと造形を交互に行いながら知見を蓄積

東京大学コンクリート研究室が得意とするのは、数値解析によるシミュレーションだ。

計算機上で作り上げた構造がどのような特性を持つのかを計算し、特性を推定する。この推定の精度を高め、よりよい物理モデルを作り上げるためには、現実に作製した構造物との比較が不可欠だ。

しかし、デジタルデータを現実の構造物とする造形精度に課題があったため、クラボウの出番となった。

各々の役割として、東京大学側はメタマテリアルに関する数値解析によって、優れた特性を発現する構造や材料の組み合わせを提案する。

対するクラボウ側は、メタマテリアル構造を持つ3Dモデルを造形し、併せて最適なセメント材料の組成開発も進めていく。作製したメタマテリアル構造から強度などのデータを抽出し、各工程における課題や知見をフィードバックしていく予定だ。

2023年にはメタマテリアル技術の実証実験を行うことを予定している。来年の今頃には、メタマテリアルに関する新たな知見や、メタマテリアルを活かした新たな製品の提案が聞けるかもしれない。

3Dプリンティング技術×メタマテリアルは今後も注目分野

構造データを現実空間に作り上げるにあたって、3Dプリンターは大変強力なツールだ。3Dプリンターの登場によって、メタマテリアルに関する技術開発、製品開発は勢いを増している。3Dプリンターで造形するための専用設計を今後考える際に、トポロジー最適化などの軽量化と強度のバランスを狙う最適化技術の他に、材料特性を越えた性能の付与というメタマテリアルの持つ可能性は、より広い局面で考慮されていくようになるだろう。

以下には、メタマテリアルに関連する過去の記事を紹介している。併せてご参照頂きたい。

>>3Dプリントによってコンクリート使用量を削減する石壁「Hive」を発表

>>アスリートデータ×3Dプリンターから生まれたadidasのランニングシューズ「4DFWD」

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