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全国対応の運用保守サービスを3Dプリンターメーカー/販売店に提供するためにJBサービスがしていること

<注目のポイント>
コールセンター受付から全国拠点によるオンサイトサポート
・熟練の3Dエンジニアの対応によるお客様満足度の向上
・本業や販売のための営業活動の社員工数の創出

業務用3Dプリンターの名だたる大手メーカー複数社から全国規模で3Dプリンターの新規導入時の設置作業や、導入後の運用保守業務を受託し対応を行っている企業があることをご存じだろうか。私たちも今回の取材の前まではその存在を知らなかったが、人知れずマルチベンダーで新規導入作業や保守業務を行っている企業こそ、今回取り上げるJBサービスだ。

JBサービスはITソリューション分野で実績を持つJBCC株式会社(旧社名:日本ビジネスコンピュータ株式会社)のグループ企業としてITサービス・機器の運用保守業務を一手に引き受けてきた。その実績を活かし、3Dシステムズ社からサービスを開始し、最近ではストラタシス社などの大手3Dプリンターメーカー複数社の委託をうけて運用保守を全国規模で展開しているという。JBサービスによると、そのシェアは驚きの50%超にも上るという。

故障現場に駆けつけて対応するオンサイト保守を全国規模で展開する3Dプリンター運用保守のスペシャリストであるJBサービスが現場で何を行っているのか。その実態を伺った。

語り手:JBサービス株式会社 サービス事業部 AIoTサービス本部3Dカスタマサービス部部長 石亀純朗 
3Dカスタマサービス課課長 中村敦史 / 聞き手:シェアラボ編集部 伊藤正敏 / 提供:JBサービス株式会社

ユーザーは全国に点在。業務用3Dプリンターをどのように保守するべきか?

シェアラボ編集部:JBサービスさんは3Dシステムズさんやストラタシスさんの運用保守を受託しているんですよね?どんな体制なのでしょうか?またどんな作業を行っているのでしょうか?

JBサービス石亀氏:私たちJBサービスは3Dシステムズ社、ストラタシス社、XYZプリンティング社といった海外の業務用3Dプリンターメーカーや医療用3Dプリンターメーカー複数社と契約して、新しく装置を購入したお客様先への新規設置業務や保守業務を行っています。海外の3Dプリンターメーカーは優れた装置を世界中に届けていますが、日本では少数精鋭で事業展開している企業様も多い状況です。そこで私たちが全国対応で新規設置や定期点検、障害対応をお手伝いさせていただいています。


業務用3Dプリンターは生産設備なので、故障時に3Dプリンターが動かない時間(ダウンタイム)が発生すると、業務停止につながります。また高額な産業用3Dプリンターは一台しか導入していないケースも多いので、替えがききません。家庭用の3Dプリンターであれば、小型なのでユーザー様が自分で梱包して送り返すようなセンドバック対応(代替品を送付し、修理完了した機器を返送してもらう形式)で対応できるかもしれませんが、設置場所から気軽に移動できない産業用3Dプリンターに関しては、オンサイト保守(現地に駆け付けて行う保守対応)を全国規模で迅速に行うことが必要です。

サービス内容を説明してくれるJBサービス 石亀氏
豊洲のソリューションセンターで機材を前にサービス内容を説明してくれる石亀氏

私たちはメーカーの認定資格を有する技術員が常駐する全国のサービス拠点のほかに、メールや電話でお客様からの問い合わせに対応するコールセンターを運営しています。また豊洲にあるソリューションセンターでは、障害発生時に遠隔でも障害切り分けができるように検証機を設置しているほか、出荷前装置の事前点検や、必要な修理部品の保管を行っています。こうした体制で日本全国に設置されている3Dプリンター導入企業様の定期点検や導入設置、障害対応を行っていきます。

シェアラボ編集部:3Dプリンターならではの難しさを感じることはありますか?

取材に応えるJBサービスの中村氏
「納品前の出荷前確認は非常に大切な要素」と語る中村氏

JBサービス中村氏:3Dプリンターの保守業務には約10年前から取り組んでいるのですが、サポートを始めた当初は、サーバー製品やパソコンや複合機との違いに驚きました。大型の業務用3Dプリンターは、電源ボタンを押してもすぐに動作確認には入れずに、2,3時間の準備時間が必要になることがあります。複合機であれば駆けつけて数時間で終わる点検も、3Dプリンターでは数日間かかることがあります。

また3Dプリンターは現在も最新技術により発展している装置です。海外メーカーの多くは工場からの直送を標準対応としていますが、空輸や船便で送られてくるため、輸送時の破損はないかといった外観確認や、装置が想定通り動作するかに関して出荷前に確認する必要があります。

サーバー機器をはじめとしたIT機器の保守サポートを実現してきた体制を活用

シェアラボ編集部:当然お客様も故障が出ると不満を保守する側にぶつけたくなるものだとも思いますし、言葉の陰にあるご苦労が偲ばれます。どのように対応されてきましたか?

JBサービス石亀氏:3Dプリンターは長時間稼働する精密装置なので、障害が発生することを0にすることはできません。定期点検を行うことで、事前にリスクを低減できますが、予期せぬ不具合が起こる場合も存在します。3Dプリンターに障害があるとお客様の業務に影響が出ますので、その時に大事になるのは、いかに障害からリカバリーできるかです。JBサービスではコールセンターで受付後、技術員よりお客様へご連絡し電話のサポートで復旧できる場合、お客様への操作をご依頼し復旧を目指します。電話での復旧が困難な場合は、全国にいる技術員がお客様先へ訪問のうえ障害復旧作業を実施いたします。また、JBサービスではサービスビューロとして受託造形をお手伝いするサービスも行っていますが、トラブルが長期になってしまう場合には代理造形することでお客様業務の継続をサポートした実績もあります。

JBサービスのサービスイメージ。
お客様と機器メーカーや販売代理店の間に、JBサービスが入り、お客様のサポートをする構図
サービスイメージ

JBサービス中村氏:例えば海外製の産業用3Dプリンターは専門装置なので、オンライン通販で汎用部品を購入して流用するなどの方法が使えません。部品が故障や欠品で手元にない場合、海外工場から取り寄せる必要があります。日本のメーカーに在庫がなく船便で取り寄せとなった場合、到着まで1か月以上かかることもあります。私たちは過去のサービス実績から事前に豊洲のソリューションセンターの他、各サービス拠点に消耗品や故障が多い部品の在庫を持ち、お客様装置の安定稼働に対する体制を整備しています。
また、例えばエラーメッセージからセンサー故障が疑われる場合に、センサー部品だけを持って修理に伺うのでなく、センサーと結線しているケーブル、その先の基盤など障害対応の経験上、必要になる部品をセットにして準備し訪問します。これはメーカーが準備しているものではなく、私たちの修理経験から必要性が高いと思われるものをキット化したものです。このような活動をすることで故障した部品の再手配による複数回の対応を低減する取り組みを行っております。

シェアラボ編集部:品質を支える地道なカイゼン作業を積み重ねているんですね。先ほどカスタマーセンターがあるとおっしゃっていましたが、年間どれくらいの相談が寄せられるんでしょうか?

JBサービス石亀氏:コールセンターには3Dプリンターのちょっとした操作方法のご質問から本格的な障害のご連絡まで年間約1,000件近くのお問い合わせが寄せられます。私たちはその経験をもとに、よくあるご質問に関しては独自に簡易マニュアルをまとめ、弊社のWEBサイトで公開しています。またお問い合わせ内容は装置をご使用されているユーザー様にも役に立つ内容が含まれているので、情報をシェアできるように取り組んでいます。具体的には障害発生状況や改善への取り組みなど、私たちの活動概況をユーザー様共有する情報交換の場を設けてきました。この2年間はリアルで開催できていないのですが、新型コロナウイルス感染拡大前は、都内で開催される大規模な展示会にあわせて、ユーザーの皆様が集まるユーザー会を企画し、障害状況や対応内容を報告する場を持っています。

シェアラボ編集部:障害発生件数のようなネガティブでディープな情報はメーカーからは発信しにくい内容ですが、ユーザー会というコミュニティで共有されているのは驚きました。大変意義あるお取り組みですね。

JBサービス石亀:私たちだけではなく、メーカーの担当者の方もお招きして、メーカー、ユーザー、保守ベンダーである私たちが一堂に会し、改善への取り組みを共有しながら、関係づくりを行う場になっています。一方的な情報発信だけではなく、ユーザー企業様同士が情報交換されているのが、大変うれしい次第です。一言でいうと仲が良い仲間を見つけ広げることができる場になっています。

シェアラボ編集部:保守ベンダーはメーカーではないので品質改善そのものを行うことはできないという辛さがあるのでは?と思っていましたが、ユーザーとメーカーと一緒に、改善していく機運を作っている点は心強く感じられます。

JBサービス石亀氏:JBサービスは3Dプリンター以外の機器も保守しているのですが、ユーザーアンケートの結果によると、3Dプリンターの保守サービスはほかの機器の保守サービスに比べても、かなり高い満足度をいただいています。これも一緒に業界を育てているという連帯感が寄与している結果かもしれません。

ェアラボ編集部:実際に同じ体制を整備しようとすると大きな投資になりますね。

JBサービス石亀氏: コールセンターや物流拠点を自前で用意するためには、体制を設計する知見だけではなく、立ち上げの初期コストや、サービスの継続した教育や改善、オペレーションする人員の確保など多くの労力とコストがかかると思います。そうしたインフラをJBサービスがメーカーや販売代理店様の代わりに提供することで、立ち上げのコストや負担、時間を大幅に圧縮できるとご評価を頂いています。産業用機器に特化した運用保守を行っている私たちとの協業メリットとして今後もっと知っていただきたいポイントです。特に定期保守や故障時の対応はメーカーにとっては負担が大きい業務になるかと思います。いざ輸入できるとなってからあわてて運用保守を委託できるパートナーを探して弊社にたどり着いていただいた販売代理店様も過去にいらっしゃいました。

シェアラボ編集部:こうしたサービスを提供している競合企業はいるのでしょうか?

JBサービス石亀氏: 柔軟な提案ができる企業は日本ではまだ少ないのではないでしょうか。3Dプリンターの分野でマルチベンダーの運用保守を全国規模で提供できるのは、大手の販売代理店様に限られます。私たちは自社で販売しない製品でも対応できる体制があります。例えば歯科分野で3Dプリンターを提案したい医療機器販社様が新しく3Dプリンターを取り扱いたいとき、私たちが保守体制のお手伝いすることが可能です。

出荷前検査を行うスペース。

シェアラボ編集部:フォームネクストなどの海外展示会では600社を超える出展社がいます。一方日本の展示会ではAM分野の出展社は100社未満。まだ伸びしろはかなりある印象を持っています。もし自分の会社の製品の保守をJBサービスさんにお願いしたい場合、どのように相談すればよいですか?

JBサービス石亀氏: 必要なサポート体制や規模感などを伺った上で、弊社内部で体制を組めるかビジネス面での検討を行う必要がありますが、その際に、正規の機器メンテナンスに関するトレーニングやマニュアルがあることも必要です。実際に必要なトレーニング期間や技術的に求められる水準をすり合わせながら最適な体制を構築していきます。

シェアラボ編集部:まさに運用保守体制を一緒に作っていくんですね。

技術と装置の現状をよく知っていることが話していると伝わってくる。

JBサービス石亀氏: そうですね。自社で運用保守にたけた経験者を採用し、実際に稼働できる部隊を育成しようとしたメーカーや販売代理店様であればあるほど、私たちとの協業に価値を感じてもらえるはずです。今すでに運用保守体制を持っているメーカーであっても、より営業のために人材を割きたいというニーズもあるかもしれません。対応レベルが軽度な部分はアウトソースし、高度なノウハウが必要になる点はお互いに連携して対応する形にすれば、コア人材の業務負荷が減り、より本質的な業務にあたることが可能になると考えています。

業務用3Dプリンターの安定稼働のために全国オンサイトで対応してくれる安心感は貴重

業務用3Dプリンターを使用しているユーザー企業は、短納期を期待してすぐに使いたい試作品や治具、最終部品を製造していることだろう。3Dプリンターはレーザーなどを使うため専門知識や部材のストックがないとメンテナンスも難しい装置だ。実際、3Dプリンターに不調があると製造現場では手が出せないことも多いだろう。海外製の3Dプリンターも多い中メンテナンスに不安を抱くユーザー企業は少なくない。そんな懸念を払拭するべく、メーカーや販社の社員が少数精鋭で対応しているのが日本の業務用3Dプリンターの保守の現場事情だろう。


こうした課題を解決している企業として今回ご紹介したJBサービスは特筆すべき存在だ。すでに海外の3Dプリンターメーカーの保守を担当している実績があるJBサービスが製造現場に駆け付け、日本語で対応してくれる安心感はユーザー企業にとって心強く、ブランドに対して大きな信頼感を持つ材料になるだろう。試作や治具制作だけではなく、最終部品の製造にも活用を期待されている業務用3Dプリンターは、これからますます大きな役割を担うことを期待されている。生産現場の安定運用には万全のサポート体制が必要となる。今後ますますJBサービスが提供しているような保守サービスの重要性が高まることは間違いない。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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